著者
尾沼 玄也 加藤 林太郎
出版者
拓殖大学日本語教育研究所
雑誌
拓殖大学日本語教育研究 = Journal of research in teaching Japanese language (ISSN:24239224)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.165-180, 2022-03-25

本研究では,一人の日本語教師Aが職に就き,2度の職場替えを経て日本語教師を離職するまでのキャリア経路を複線経路等至性アプローチの方法で分析した。至等性モデリングによるキャリア経路分析では,日本語教師が職場ごとに教師としての成長課題を設定していることが描かれた。発生の三層モデルからは,積み上げたキャリアが所属機関から正当に評価されないことが,教師を離職へと導く可能性があることが示された。また,Aは日本語教師を辞めた後も,身に付けた知識や技能の価値は変わらないと捉えており,いずれまた日本語教師の職には戻ることもできるという思いを持っていることが分かった。
著者
尾沼 玄也 加藤 林太郎
出版者
拓殖大学日本語教育研究所
雑誌
拓殖大学日本語教育研究 = Journal of research in teaching Japanese language (ISSN:24239224)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.57-74, 2021-03-25

在日外国人の増加を背景に,日本語教師の増員が試みられている。増員のためには,新たに職業に就く人材を増やすことと,現役教師の離職を減らすことの両面が必要である。本研究では,現役日本語教師のライフストーリーの中に現れた仕事の「やりがい」と「失敗」を対象に,職業継続意思との関係の分析を試みた。その結果,「やりがい」と「失敗」は,相互に関連しあっており,失敗を乗り越えて「やりがい」を強化することの重要性が示唆された。また,そのためには所属機関や同僚との友好的な協働関係が重要であることが分かった。さらに,日本語教師は,学習者のために良い授業をしたいという思いや,所属機関から良い評価を得たいという思いから,生活に支障が出るほど業務時間が長くなる場合があることも分かった。結果的に離職につながるこの問題を解決するために,機関が所属教師に期待する成果や,評価の観点を明示することの重要性が示唆された。