著者
中村 かおり
出版者
拓殖大学日本語教育研究所
雑誌
拓殖大学日本語教育研究 = Journal of research in teaching Japanese language (ISSN:24239224)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.31-54, 2019-03-25

非漢字圏学習者にとって,漢字の習得は大きな壁となっている。特に,字形認識の複雑さ,数が多いための記憶の難しさ,それらの負担による学習意欲の低下などが課題として挙げられる。本研究では,それらの課題に対し,学習者の負担を軽減し,達成感を与え,学習習慣を形成するために,⑴字形認識を促すための基本要素の単純化,⑵語彙先習学習および学習段階に合わせた漢字ストラテジーの提示,⑶自律的学習の促進を目指した個別学習課題による実践を行った。その結果,語彙先習による漢字学習の効果が確認でき,かつ自律的学習による取り組みが学習意欲の向上につながることが示唆された。
著者
尾沼 玄也 加藤 林太郎
出版者
拓殖大学日本語教育研究所
雑誌
拓殖大学日本語教育研究 = Journal of research in teaching Japanese language (ISSN:24239224)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.165-180, 2022-03-25

本研究では,一人の日本語教師Aが職に就き,2度の職場替えを経て日本語教師を離職するまでのキャリア経路を複線経路等至性アプローチの方法で分析した。至等性モデリングによるキャリア経路分析では,日本語教師が職場ごとに教師としての成長課題を設定していることが描かれた。発生の三層モデルからは,積み上げたキャリアが所属機関から正当に評価されないことが,教師を離職へと導く可能性があることが示された。また,Aは日本語教師を辞めた後も,身に付けた知識や技能の価値は変わらないと捉えており,いずれまた日本語教師の職には戻ることもできるという思いを持っていることが分かった。
著者
伊藤 江美 中村 かおり
出版者
拓殖大学日本語教育研究所
雑誌
拓殖大学日本語教育研究 = Journal of research in teaching Japanese language (ISSN:24239224)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.211-233, 2021-03-25

拓殖大学別科日本語教育課程の入門漢字クラスでは,非漢字圏学習者の心理的,時間的な負担を軽減することを目指し,Kanji in 6 & 4,語彙先習,漢字クイズマラソンによる段階的な漢字語彙学習に取り組んでいる。Kanji in 6 & 4は拓殖大学大学院に在学中だったイマーン・タハ氏が考案した字形学習法で,字形の点画をコード化して示した上で,字形の構造を階層的に分解,分類し,字形を認識する。筆者らはKanji in 6 & 4の第一段階の点画のコード化をKコードと呼び,Kコードによる漢字字形学習の実践を行っている。本稿では,Kコードによる漢字字形学習の実践例から,Kコードが共通言語の機能を持ち,学習の効率化に役立っていることを述べた。そして,当クラスの学習項目全体を改訂版タキソノミーによって分析し学習目標分類表を作成することによって,学習行動の認知次元過程の各段階におけるKコードの有用性を示した。以上のような実践と分析を通して,漢字の字形学習におけるKコードの共通言語機能と実用性について考察した。
著者
尾沼 玄也 加藤 林太郎
出版者
拓殖大学日本語教育研究所
雑誌
拓殖大学日本語教育研究 = Journal of research in teaching Japanese language (ISSN:24239224)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.57-74, 2021-03-25

在日外国人の増加を背景に,日本語教師の増員が試みられている。増員のためには,新たに職業に就く人材を増やすことと,現役教師の離職を減らすことの両面が必要である。本研究では,現役日本語教師のライフストーリーの中に現れた仕事の「やりがい」と「失敗」を対象に,職業継続意思との関係の分析を試みた。その結果,「やりがい」と「失敗」は,相互に関連しあっており,失敗を乗り越えて「やりがい」を強化することの重要性が示唆された。また,そのためには所属機関や同僚との友好的な協働関係が重要であることが分かった。さらに,日本語教師は,学習者のために良い授業をしたいという思いや,所属機関から良い評価を得たいという思いから,生活に支障が出るほど業務時間が長くなる場合があることも分かった。結果的に離職につながるこの問題を解決するために,機関が所属教師に期待する成果や,評価の観点を明示することの重要性が示唆された。
著者
福田 惠子
出版者
拓殖大学日本語教育研究所
雑誌
拓殖大学日本語教育研究 = Journal of research in teaching Japanese language (ISSN:24239224)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.191-209, 2021-03-25

日本では2000年以降,韓国では2015年以降,本格的に「国際理解教育」が導入され,他者との共生を目的に異文化間能力の向上を目指している。導入前は,他者を理解しようという姿勢ではなく,自国本位の教育が行われてきたが,導入後はいかなる教育効果がもたらされるのか。現段階では教育効果を問うところまでには至っていないが,「対日本(人)へのイメージ調査」や「対日感情のアンケート」結果からは国際理解教育の必要性が示唆された。
著者
浅井 尚子
出版者
拓殖大学日本語教育研究所
雑誌
拓殖大学日本語教育研究 = Journal of research in teaching Japanese language (ISSN:24239224)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.101-127, 2019-03-25

大学院在籍の留学生は,年々増加傾向にある。拓殖大学別科日本語教育課程でも大学院進学希望の留学生は,増加している。大学院受験留学生に対する本別科の主な取り組みとしては,①必修選択科目コース別日本語における大学院進学クラスの設置 ②大学院進学ガイダンスの開催 ③本別科修了大学院生の大学院進学クラスにおける授業参加の3 つがある。本稿では,③の「先輩留学生のクラス参加」は,大学院受験留学生への支援策として有効であるのかを調査するため,先輩・後輩の両方の立場を経験した大学院生に半構造化インタビューを行った。その結果,大学院進学コースの課題が浮き彫りとなった。今後のメンター制度構築に向けた改善策としていくつかの提案を試みた。