著者
尾田 太良 嶽本 あゆみ
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.341-357, 1992-12-30 (Released:2009-08-21)
参考文献数
13
被引用文献数
22 26

第四紀古海洋復元のための基礎研究として, 日本列島太平洋側海底の表層堆積物中の浮遊性有孔虫遺骸群集を調べ, 表層水塊との関係を検討した. この結果に基づき, 四国沖, 遠州灘沖, 房総沖および鹿島灘沖の4海域より採取したコアの浮遊性有孔虫化石群集の垂直的分布から, 過去2万年間の黒潮の流路の変遷を推論した.20,000~16,000年前には, 西南日本沖の黒潮の流路は現在より南にあり, 四国沖や遠州灘沖では冷水塊が頻発していた. 15,000~14,000年前には, 黒潮は西南日本沖で南に大きく蛇行し, 黒潮前線は房総沖にあった. その時期には四国沖や遠州灘沖で冷水塊が発生していた. その後, 11,000年前までに西南日本沖では黒潮の影響が強くなった. 房総沖と鹿島灘沖では, 11,000年前頃短期的な寒冷化があった後, 急速に温暖化した. 10,000~9,000年前には黒潮の流軸は本州に近づき, 黒潮前線も北に移動しはじめた. 9,000~6,000年前には黒潮はさらに西南日本に接近し, 黒潮前線は6,000年前に最も北上した. 5,000年前以降, 黒潮は西南日本沖で現在の流路に近づいたが, 4,500~1,500年前には, 房総沖や鹿島灘沖で冷水塊が発達していた.
著者
鳥井 真之 尾田 太良
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.107, no.6, pp.379-391, 2001-06-15
被引用文献数
4 9

鹿児島県に分布する伊作火砕流堆積物と新第三系宮崎層群上部に挟在する久峰凝灰岩層(HST-4)の岩石学的特徴と古地磁気学的特徴にもとづいて両者は対比できることが明らかになった.また, HST-4凝灰岩層はバブルウォール型火山ガラスを主体としたco-ignimbrite ash-fall depositであることから, 両者をまとめて伊作-久峰テフラと呼称する.さらに, HST-4凝灰岩層の挟在する高鍋層下部は, 古地磁気および浮遊性有孔虫化石層序による複合層序学的検討からChron 2An.2 rに対比される逆帯磁帯MMR-Bの最下部に位置することが判明し, このテフラの噴出年代は古地磁気年代尺度に従えば約3.3 Maと推定される.