著者
奈良原 裕 尾頭 厚 村田 登
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.254-257, 2010-09-15 (Released:2010-12-03)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

症例は78歳,女性.3日前からの胸部圧迫感を主訴に近医受診,急性心筋梗塞(AMI)の診断にて当院紹介となった.当院循環器内科にて緊急冠動脈造影検査を施行し,seg. 7 100%閉塞,seg. 1 90%の狭窄病変を認め,経皮的冠動脈形成術(PCI)が施行され再灌流を得られた.ICU入室後,心タンポナーデからショック状態となった.心嚢穿刺ドレナージによっても直にショックとなるため大動脈内バルーンパンピング(IABP)を挿入した後,緊急開胸手術とした.手術台上で無脈性電気活動(PEA)となり,開胸したところ心嚢内には多量の血腫を認め,これを除去すると左室心尖部付近の前壁3カ所より多量の血液噴出を認めた.前壁のblow out型左室破裂(LVFWR)であった.手術は,非ヘパリン化,非体外循環下にTachoComb®,fibrin glueの重層法+馬心膜パッチ+GRF glueによるsutureless techniqueを用いた.Blow out型LVFWRに対して非体外循環下にsutureless techniqueを用いて救命し得た症例は報告例が少ない.
著者
谷島 義章 尾頭 厚 奈良原 裕 下石 光一郎 村田 升
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.10, pp.2733-2736, 2013

症例は87歳,女性.意識障害を主訴に救急要請し当院へ救急搬送.来院時,意識レベルE1 V1 M1 GCS3点,収縮期血圧80mmHg,脈拍50回/分,洞調律,体温35.2度,呼吸回数>30回.胸腹部造影CTで,30mm大の腹部大動脈瘤と60mm大の左総腸骨動脈瘤を認めたが,明らかな破裂を疑わせる所見は認められなかった.造影剤の総腸骨静脈への流入を認め,左総腸骨動脈瘤が左総腸骨静脈に穿破した腸骨動静脈瘻と診断.腸骨動静脈瘻による急性心不全と診断し,緊急手術を施行.瘤空置と右外腸骨動脈から左外腸骨動脈へバイパスグラフトを置く下肢動脈血行再建術により良好な術後経過を得た.腹部大動脈瘤や腸骨動脈瘤の破裂では腹腔や後腹膜腔への破裂がほとんどだが,隣接する静脈に穿破する症例もまれに認められ,こうした症例には瘤内からの瘻孔閉鎖例の報告が多いが,症例によっては瘤空置+下肢動脈血行再建術も有効と考えられる.