著者
劉 翔 高山 耕二 山下 研人 中西 良孝 萬田 正治 稲永 淳二 松元 里志 中釜 明紀
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.13-22, 1998-07-15 (Released:2017-10-03)
参考文献数
14

水生シダ類植物アゾラと合鴨の有機的な結合が水田における除草と駆虫に関する効果および合鴨の行動に及ぼす影響を検討した。標準施肥区(以下、慣行区)、対照区、合鴨区、アゾラ区およびアゾラ-合鴨区の5区を設け、1996と1997年に試験を行った。水稲移植後の翌日に、1996年には70g/m^2、1997年には25g/m^2のアゾラをそれぞれの水田に接種し、約6〜7週間増殖させた。その後、合鴨によってアゾラを土中または水面下に攪拌し踏込ませた。水稲移植1週間後、1週齢のマガモ系合鴨を6羽/3aずつ水田に放し、稲の出穂期までの約2ヵ月間放飼した。1996年8月および9月においては、アゾラ-合鴨区と合鴨区の雑草発生量は対照区よりも有意に少なかった。1997年8月においては、アゾラ-合鴨区の雑草発生量は慣行区を除いた他の区に比べ、有意に少なかった。マット状になったアゾラによりヒエ類や他の水田雑草が抑制され、合鴨によりカヤツリグサなど柔らかい草が採食され、アゾラ-合鴨区の雑草発生量が少ないのはこの両者の相乗効果によるものと推察された。セジロウンカの発生は、対照区とアゾラ区に比べ、合鴨区とアゾラー合鴨区で有意に少ないことが認められた。トビイロウンカの発生は、合鴨区に比べ、アゾラ区とアゾラ-合鴨区では有意に多いことが認められた。ツマグロヨコバイについては、合鴨による顕著な防除効果か見られなかった。また、アゾラを鋤き込む時期によって、稲作後期の害虫の発生量が異なるものと思われた。合鴨の採食行動は夜間でも頻繁に行われているのに対して、アゾラー合鴨区では、昼間に集中していることが認められた。また、アゾラー合鴨区の採食行動と移動行動は、合鴨区に比べ、顕著に少なく、休息行動は、逆に顕著に多かった。日本家畜管理学会誌、34(1) : 13-22,19981998年3月26日受付1998年5月13日受理
著者
劉 翔 高山 耕二 山下 研人 中西 良孝 萬田 正治 稲永 厚一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.266-271, 1998-10-31 (Released:2017-07-07)
参考文献数
11

南九州における水生シダ植物アゾラ(Azolla, 日本名アカウキクサ)の飼料化を確立するため, pH, 生育時期およびアイガモ放飼がアゾラの生育に及ぼす影響を検討するとともに, 化学成分, 家鴨による嗜好性およびその給与が家鴨の産肉性に及ぼす影響を検討した。 pH2.8〜9.2の各培養液による生育について, pH5.5〜8.5でのA. japonicaの生育には差がみられなかった。4月上旬および5月下旬にそれぞれ室外環境で接種した A. pinnata 103, A. filiculoides 1006, A. caroliniana 3004, A. microphylla 4018, A. japonicaの生育については, 接種後1〜2週月の生育はいずれの種においても5月(平均気温21.4℃)に比べ4月(平均気温14.6℃)で遅かった。接種後5週間の増殖量についてアゾラ種間で差がみられなかったものの(p>0.05), A. filicloides 1006と在来種のA. japonicaの生育がやや速い傾向を示した。田植え後の水田に接種したアゾラはアイガモ放飼区および無放飼区とも生育が遮光により低下し, 接種後40日間の新鮮物収量は約2.000kg/10aであったが, アイガモ放飼区では虫害, 赤変, 過繁茂あるいはカビなどが発生しなかった。 上述5種アソラ混合物の粗タンパク質舎量は乾物当たり25.1%であり, 家鴨による嗜好性については, ヨモギ(Arzemisia vulgaris L.), シロクローバー(Trifolium repens L.), カラスノエンドウ(Vicia angustifolia L.), エゾノギシギシ(Rumex obtusifolius L.), イタリアンライグラス(Lolium multiflorum Lam.)およびキャベツ(Brassica oleracea var.)に比べ, アゾラの新鮮物摂取量が有意に高かった(p<0.01)。アゾラと配合飼料を家鴨雛に給与した場合, 2〜8週齢の体重は対照区に比べ有意に大きかった(p<0.05)。飼料要求率は4適齢まで対照区よりも低かったが, その後, 増大する傾向が認められた。以上から, アソラ新鮮物は家鴨による嗜好性が高く, その給与が発育を促進するとともに, 産肉性にも良好な成績をもたらすことが示唆された。
著者
劉 翔 高山 耕二 山下 研人 中西 良孝 萬田 正治 稲永 厚一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.266-271, 1998-10-31
被引用文献数
1

南九州における水生シダ植物アゾラ(Azolla, 日本名アカウキクサ)の飼料化を確立するため, pH, 生育時期およびアイガモ放飼がアゾラの生育に及ぼす影響を検討するとともに, 化学成分, 家鴨による嗜好性およびその給与が家鴨の産肉性に及ぼす影響を検討した。 pH2.8〜9.2の各培養液による生育について, pH5.5〜8.5でのA. japonicaの生育には差がみられなかった。4月上旬および5月下旬にそれぞれ室外環境で接種した A. pinnata 103, A. filiculoides 1006, A. caroliniana 3004, A. microphylla 4018, A. japonicaの生育については, 接種後1〜2週月の生育はいずれの種においても5月(平均気温21.4℃)に比べ4月(平均気温14.6℃)で遅かった。接種後5週間の増殖量についてアゾラ種間で差がみられなかったものの(p>0.05), A. filicloides 1006と在来種のA. japonicaの生育がやや速い傾向を示した。田植え後の水田に接種したアゾラはアイガモ放飼区および無放飼区とも生育が遮光により低下し, 接種後40日間の新鮮物収量は約2.000kg/10aであったが, アイガモ放飼区では虫害, 赤変, 過繁茂あるいはカビなどが発生しなかった。 上述5種アソラ混合物の粗タンパク質舎量は乾物当たり25.1%であり, 家鴨による嗜好性については, ヨモギ(Arzemisia vulgaris L.), シロクローバー(Trifolium repens L.), カラスノエンドウ(Vicia angustifolia L.), エゾノギシギシ(Rumex obtusifolius L.), イタリアンライグラス(Lolium multiflorum Lam.)およびキャベツ(Brassica oleracea var.)に比べ, アゾラの新鮮物摂取量が有意に高かった(p<0.01)。アゾラと配合飼料を家鴨雛に給与した場合, 2〜8週齢の体重は対照区に比べ有意に大きかった(p<0.05)。飼料要求率は4適齢まで対照区よりも低かったが, その後, 増大する傾向が認められた。以上から, アソラ新鮮物は家鴨による嗜好性が高く, その給与が発育を促進するとともに, 産肉性にも良好な成績をもたらすことが示唆された。
著者
高山 耕二 劉 翔 角井 洋子 山下 研人 萬田 正治 中西 良孝 松元 里志 中釜 明紀 柳田 宏一
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.1-11, 1998-07-15
参考文献数
13
被引用文献数
4

合鴨農法における家鴨類の適性品種を選定する上での基礎的知見を得るために、インディアンランナー、中国系在来種およびマガモ系合鴨の3品種を用い、水田放飼(1996年および1997年の6〜9月)における除草・駆虫能力について、品種間で比較検討した。水田放飼期間中、定期的に雑草および害虫の発生状況を調査するとともに、胃内容物調査も行った。1.1997年7月には家鴨類放飼により雑草発生が有意に抑制され、8月にはタイヌビエ、イヌビエなどイネ科雑草の発生が多くみられたものの、中国系在来種がマガモ系合鴨に比べ高い除草能力を示した。2.セジロウンカの発生ピーク時(1996年7月)における胃内容物調査では、マガモ系合鴨の336頭、インディアンランナーの732頭および中国系在来種の506頭と多数のセジロウンカの摂食が確認され、家鴨3品種間に有意な差は認められず、いずれも高い駆虫能力を示した。また、トビイロウンカについても家鴨3品種は高い駆虫能力を示したか、品種間に差はみられなかった。なお、ツマグロヨコバイに対しては、3品種とも駆虫能力は認められなかった。3.スクミリンゴガイに対し、家鴨3品種は高い駆虫能力を示したが、品種間に差は認められなかった。一方、スクミリンゴガイの卵塊については、マガモ系合鴨と中国系在来種がインディアンランナーに比べ高い駆除能力を示した。以上から、家鴨3品種のうち、中国系在来種が水田における除草・駆虫能力の面で最も優れた品種であることが示唆された。日本家畜管理学会誌、34(1) : 1-11,19981998年1月16日受付1998年5月6日受理