著者
髙山 耕二 中村 南美子 園田 正 冨永 輝 石井 大介 柳田 大輝 飯盛 葵 松元 里志 片平 清美 大島 一郎 中西 良孝 稲留 陽尉 塩谷 克典 赤井 克己
出版者
Japanese Soceity for Animal Behaviour and Management
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.134-141, 2018-09-25 (Released:2018-11-28)
参考文献数
22
被引用文献数
1

本研究では,明暗条件下でニホンジカ(Cervus nippon nippon;以下,シカ) 2頭(雄雌各1頭)の有彩色(赤,緑および青色)と無彩色(灰色)の識別能力を明らかにした.試験にはT字型迷路を用い,各有彩色と無彩色を対比させ,シカが有彩色を選ぶと報酬(飼料)を与えた.実験室内の色パネル中央部の照度は,LED電球を点灯した試験1で200lux,点灯しなかった試験2で0.1luxであった.1セッションを20試行とし,80%以上の正答率(χ2検定,P < 0.01)が3セッション連続で得られた場合,提示した有彩色をシカが識別したと判定した.試験1:点灯下で,2頭のシカは有彩色(緑,赤および青色)と無彩色(灰色)をいずれも4セッション目までに識別した.試験2:非点灯下で,シカ2頭は緑および青色を3セッション目まで,赤色を6セッション目までに識別した.以上より,シカは明暗に関係なく,各有彩色と無彩色を識別出来ることが示された.
著者
中村 南美子 冨永 輝 石井 大介 松元 里志 稲留 陽尉 塩谷 克典 赤井 克己 大島 一郎 中西 良孝 髙山 耕二
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.343-349, 2021-08-25 (Released:2021-10-08)
参考文献数
32

3色覚であるヒトの色覚異常(2色覚)のうち,Protanopia(P),Deuteranopia(D)およびTritanopia(T)型の場合にはそれぞれ赤と青緑,赤紫と緑および青と緑の色が識別困難とされる.本研究では生理学的に2色覚とされるニホンジカ(Cervus nippon;以下,シカ)がこれらを識別可能か否かについてオペラント条件付けにより検証した.シカ2頭(推定3歳:オス・メス各1頭)を試験に用いた.1セッションを20試行とし,正刺激として提示した色パネルの選択率80%以上(χ2検定,P<0.01)が3セッション連続でみられた場合,シカは2つの色を識別可能と判定した.オスは18,5および3セッション目,メスは12,14および4セッション目でそれぞれの色の組み合わせを識別できた.以上より,供試したシカはP, DおよびT型のヒトで区別し難い色の組み合わせをすべて識別可能であり,行動学的手法によって導き出されたシカの色識別能力はヒトの2色覚と一致しないことが示された.
著者
劉 翔 高山 耕二 山下 研人 中西 良孝 萬田 正治 稲永 淳二 松元 里志 中釜 明紀
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.13-22, 1998-07-15 (Released:2017-10-03)
参考文献数
14

水生シダ類植物アゾラと合鴨の有機的な結合が水田における除草と駆虫に関する効果および合鴨の行動に及ぼす影響を検討した。標準施肥区(以下、慣行区)、対照区、合鴨区、アゾラ区およびアゾラ-合鴨区の5区を設け、1996と1997年に試験を行った。水稲移植後の翌日に、1996年には70g/m^2、1997年には25g/m^2のアゾラをそれぞれの水田に接種し、約6〜7週間増殖させた。その後、合鴨によってアゾラを土中または水面下に攪拌し踏込ませた。水稲移植1週間後、1週齢のマガモ系合鴨を6羽/3aずつ水田に放し、稲の出穂期までの約2ヵ月間放飼した。1996年8月および9月においては、アゾラ-合鴨区と合鴨区の雑草発生量は対照区よりも有意に少なかった。1997年8月においては、アゾラ-合鴨区の雑草発生量は慣行区を除いた他の区に比べ、有意に少なかった。マット状になったアゾラによりヒエ類や他の水田雑草が抑制され、合鴨によりカヤツリグサなど柔らかい草が採食され、アゾラ-合鴨区の雑草発生量が少ないのはこの両者の相乗効果によるものと推察された。セジロウンカの発生は、対照区とアゾラ区に比べ、合鴨区とアゾラー合鴨区で有意に少ないことが認められた。トビイロウンカの発生は、合鴨区に比べ、アゾラ区とアゾラ-合鴨区では有意に多いことが認められた。ツマグロヨコバイについては、合鴨による顕著な防除効果か見られなかった。また、アゾラを鋤き込む時期によって、稲作後期の害虫の発生量が異なるものと思われた。合鴨の採食行動は夜間でも頻繁に行われているのに対して、アゾラー合鴨区では、昼間に集中していることが認められた。また、アゾラー合鴨区の採食行動と移動行動は、合鴨区に比べ、顕著に少なく、休息行動は、逆に顕著に多かった。日本家畜管理学会誌、34(1) : 13-22,19981998年3月26日受付1998年5月13日受理
著者
髙山 耕二 原 裕 石井 大介 柳田 大輝 冨永 輝 飯盛 葵 松元 里志 片平 清美 大島 一郎 赤井 克己 中西 良孝
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学農学部農場研究報告 = Bulletin of the Experimental Farm Faculty of Agriculture, Kagoshima University (ISSN:03860132)
巻号頁・発行日
no.39, pp.7-10, 2018-03

肥育牛舎におけるイノシシ害防除法の確立に向けた基礎的知見を得ることを目的とし, 嗅覚刺激として市販のオオカミ尿(以下, 尿) を野生イノシシに提示し, その効果を調べた. 2012年12月に野生イノシシの誘引餌として市販の濃厚飼料を置いた誘引場所(6.0m2) の入口に, 1) 容器および尿のいずれも設置しない(設置前), 2) 容器のみを吊るす(空容器) および3) 容器に尿を入れて吊るす(容器+尿) の3つの処理を行った. オオカミの1日平均侵入頭数は, 設置前で70頭/日, 空容器で50頭/日および容器+尿で67頭/日となり, 処理間差はみられなかった. 空容器では, それに野生イノシシが強い警戒心を示し, 鼻先を使って探索する状況がみられた.しかしながら, 通過時間には3処理間で有意差が認められなかった. また, 容器+尿に対して, 野生イノシシが忌避する状況はみられなかった.以上より, 市販のオオカミ尿に対して, イノシシは忌避しないことが示された.
著者
吉田 美代 高山 耕二 石井 大介 廣瀬 潤 木山 孝茂 松元 里志 片平 清美 伊村 嘉美 中西 良孝 赤井 克己
出版者
Warm Regional Society of Animal Science, Japan
雑誌
日本暖地畜産学会報 (ISSN:2185081X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.27-31, 2012

採草地における省力かつ効果的なシカ侵入防止法を開発することを目的とし,試験1:高さの異なるポリエチレン製ネット柵(目合:6×6 cm)に対する飼育シカの行動反応から侵入防止に有効な柵の高さの検討および試験2:2008年10月から2009年1月に採草地に設置したネット柵と電気柵の野生シカ侵入防止効果を比較検討した. 1)飼育シカによる試験では,供試シカ3頭は高さ50および100 cmのネット柵を容易に飛び越えた.一方,高さ150および200 cmを提示した場合には,柵基部から高さ100 cmまでのネットに口唇や頭部で繰り返し探索する行動を示したが,ネット柵を飛び越えた個体は皆無であった. 2)1月における早朝(6:00~7:00)の採草地への野生シカ侵入調査では,電気柵(地上高30,60,100および140 cmの4段張り,瞬間電圧約4,000 Vのパルス電流)を設置した採草地(1 ha)に比べ,ネット柵を設置した採草地(1 ha)でシカ侵入頭数が少ない傾向がみられた.柵設置後3ヵ月目(試験終了時)における植物現存量は電気柵を設置した採草地に比べネット柵を設置した草地で有意に多かった(P<0.05). 以上より,高さ150 cmのネット柵を地面への固定を施して採草地周囲に設置することで高いシカ侵入防止効果が得られることが明らかとなった.
著者
高山 耕二 劉 翔 角井 洋子 山下 研人 萬田 正治 中西 良孝 松元 里志 中釜 明紀 柳田 宏一
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.1-11, 1998-07-15
参考文献数
13
被引用文献数
4

合鴨農法における家鴨類の適性品種を選定する上での基礎的知見を得るために、インディアンランナー、中国系在来種およびマガモ系合鴨の3品種を用い、水田放飼(1996年および1997年の6〜9月)における除草・駆虫能力について、品種間で比較検討した。水田放飼期間中、定期的に雑草および害虫の発生状況を調査するとともに、胃内容物調査も行った。1.1997年7月には家鴨類放飼により雑草発生が有意に抑制され、8月にはタイヌビエ、イヌビエなどイネ科雑草の発生が多くみられたものの、中国系在来種がマガモ系合鴨に比べ高い除草能力を示した。2.セジロウンカの発生ピーク時(1996年7月)における胃内容物調査では、マガモ系合鴨の336頭、インディアンランナーの732頭および中国系在来種の506頭と多数のセジロウンカの摂食が確認され、家鴨3品種間に有意な差は認められず、いずれも高い駆虫能力を示した。また、トビイロウンカについても家鴨3品種は高い駆虫能力を示したか、品種間に差はみられなかった。なお、ツマグロヨコバイに対しては、3品種とも駆虫能力は認められなかった。3.スクミリンゴガイに対し、家鴨3品種は高い駆虫能力を示したが、品種間に差は認められなかった。一方、スクミリンゴガイの卵塊については、マガモ系合鴨と中国系在来種がインディアンランナーに比べ高い駆除能力を示した。以上から、家鴨3品種のうち、中国系在来種が水田における除草・駆虫能力の面で最も優れた品種であることが示唆された。日本家畜管理学会誌、34(1) : 1-11,19981998年1月16日受付1998年5月6日受理