著者
主税 裕樹 内富 大輔 溝口 由子 福永 大悟 大島 一郎 高山 耕二 中西 良孝
出版者
農業生産技術管理学会
雑誌
農業生産技術管理学会誌 (ISSN:13410156)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.41-47, 2014-09-15 (Released:2019-04-11)

セイタカアワダチソウ(Solidago altissima L.)が優占する耕作放棄水田跡地に山羊3頭を62日間定置放牧し,山羊による草種の選好性および除草効果について検討した.各野草の相対積算優占度(SDR_2')および山羊の採食植物頻度(GF)を調べ,山羊の各野草に対するIvlevの選択性指数に基づく指数(SI)を算出した.セイタカアワダチソウに対するSIは放牧5日目で有意な負の値を示し(P<0.05),山羊は忌避を示したものの,放牧32日目には有意でなくなり,忌避の程度は小さくなった.また,退牧時(放牧62日目)にセイタカアワダチソウの草高および植物地上部現存量は対照区と比べて試験区で半分以下となった(P<0.01).以上より,セイタカアワダチソウに対する山羊の選好性は必ずしも高くはないものの,セイタカアワダチソウが優占する耕作放棄水田跡地に山羊を放牧することで十分な除草効果が得られることが示された.
著者
劉 翔 高山 耕二 山下 研人 中西 良孝 萬田 正治 稲永 淳二 松元 里志 中釜 明紀
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.13-22, 1998-07-15 (Released:2017-10-03)
参考文献数
14

水生シダ類植物アゾラと合鴨の有機的な結合が水田における除草と駆虫に関する効果および合鴨の行動に及ぼす影響を検討した。標準施肥区(以下、慣行区)、対照区、合鴨区、アゾラ区およびアゾラ-合鴨区の5区を設け、1996と1997年に試験を行った。水稲移植後の翌日に、1996年には70g/m^2、1997年には25g/m^2のアゾラをそれぞれの水田に接種し、約6〜7週間増殖させた。その後、合鴨によってアゾラを土中または水面下に攪拌し踏込ませた。水稲移植1週間後、1週齢のマガモ系合鴨を6羽/3aずつ水田に放し、稲の出穂期までの約2ヵ月間放飼した。1996年8月および9月においては、アゾラ-合鴨区と合鴨区の雑草発生量は対照区よりも有意に少なかった。1997年8月においては、アゾラ-合鴨区の雑草発生量は慣行区を除いた他の区に比べ、有意に少なかった。マット状になったアゾラによりヒエ類や他の水田雑草が抑制され、合鴨によりカヤツリグサなど柔らかい草が採食され、アゾラ-合鴨区の雑草発生量が少ないのはこの両者の相乗効果によるものと推察された。セジロウンカの発生は、対照区とアゾラ区に比べ、合鴨区とアゾラー合鴨区で有意に少ないことが認められた。トビイロウンカの発生は、合鴨区に比べ、アゾラ区とアゾラ-合鴨区では有意に多いことが認められた。ツマグロヨコバイについては、合鴨による顕著な防除効果か見られなかった。また、アゾラを鋤き込む時期によって、稲作後期の害虫の発生量が異なるものと思われた。合鴨の採食行動は夜間でも頻繁に行われているのに対して、アゾラー合鴨区では、昼間に集中していることが認められた。また、アゾラー合鴨区の採食行動と移動行動は、合鴨区に比べ、顕著に少なく、休息行動は、逆に顕著に多かった。日本家畜管理学会誌、34(1) : 13-22,19981998年3月26日受付1998年5月13日受理
著者
中西 良孝 服部 育男 田川 光梨 高山 聡子 高山 耕二 神谷 充 佐藤 健次
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.209-211, 2012
参考文献数
3

従来,VBN濃度は微量拡散法や水蒸気蒸留法などの滴定法によって測定されてきたが,最近,飼料中の硝酸態窒素濃度や土壌中のアンモニア態窒素濃度を測定する場合に電気化学的検出法であるイオン電極法(以下,本法)が適用可能であり,土壌のアンモニア態窒素濃度測定においては分析時間が比色法よりも短縮することが報告されている。したがって,飼料中のVBNについても本法による分析が可能と考えられるが,滴定法の代替法としての可能性を追究した報告はない。そこで本研究では,発酵TMRおよびサイレージ中のアンモニア態窒素濃度を簡易に測定するための方法を開発することを目的とし,微量拡散法および本法による測定値間の相関関係を明らかにし,本法が滴定法の代替法となり得るかどうかを検討した。
著者
劉 翔 高山 耕二 山下 研人 中西 良孝 萬田 正治 稲永 厚一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.266-271, 1998-10-31 (Released:2017-07-07)
参考文献数
11

南九州における水生シダ植物アゾラ(Azolla, 日本名アカウキクサ)の飼料化を確立するため, pH, 生育時期およびアイガモ放飼がアゾラの生育に及ぼす影響を検討するとともに, 化学成分, 家鴨による嗜好性およびその給与が家鴨の産肉性に及ぼす影響を検討した。 pH2.8〜9.2の各培養液による生育について, pH5.5〜8.5でのA. japonicaの生育には差がみられなかった。4月上旬および5月下旬にそれぞれ室外環境で接種した A. pinnata 103, A. filiculoides 1006, A. caroliniana 3004, A. microphylla 4018, A. japonicaの生育については, 接種後1〜2週月の生育はいずれの種においても5月(平均気温21.4℃)に比べ4月(平均気温14.6℃)で遅かった。接種後5週間の増殖量についてアゾラ種間で差がみられなかったものの(p>0.05), A. filicloides 1006と在来種のA. japonicaの生育がやや速い傾向を示した。田植え後の水田に接種したアゾラはアイガモ放飼区および無放飼区とも生育が遮光により低下し, 接種後40日間の新鮮物収量は約2.000kg/10aであったが, アイガモ放飼区では虫害, 赤変, 過繁茂あるいはカビなどが発生しなかった。 上述5種アソラ混合物の粗タンパク質舎量は乾物当たり25.1%であり, 家鴨による嗜好性については, ヨモギ(Arzemisia vulgaris L.), シロクローバー(Trifolium repens L.), カラスノエンドウ(Vicia angustifolia L.), エゾノギシギシ(Rumex obtusifolius L.), イタリアンライグラス(Lolium multiflorum Lam.)およびキャベツ(Brassica oleracea var.)に比べ, アゾラの新鮮物摂取量が有意に高かった(p<0.01)。アゾラと配合飼料を家鴨雛に給与した場合, 2〜8週齢の体重は対照区に比べ有意に大きかった(p<0.05)。飼料要求率は4適齢まで対照区よりも低かったが, その後, 増大する傾向が認められた。以上から, アソラ新鮮物は家鴨による嗜好性が高く, その給与が発育を促進するとともに, 産肉性にも良好な成績をもたらすことが示唆された。
著者
高山 耕二 中西 良孝 朝 魯孟
出版者
鹿児島大學農學部
巻号頁・発行日
no.55, pp.31-36, 2005 (Released:2011-03-05)

ヌビアン種とトカラヤギにおける超音波検査法による早期妊娠診断と、胎齢ごとの胎子器官の発育と胎子胸腰部長(体幹)、頭長、心臓直径を測定した。超音波検査法は胎齢別に経直腸検査法と経腹部検査法を用いて交配から分娩まで行った。交配後23±2日で胎胞がみられ、胎子は胎胞観察後7±2日でみられた。眼窩は交配後6週間にみられた。心臓はそれぞれのヤギで交配後30、40並びに50日でみられ、心室は交配後4ヵ月ごろにみられた。胎子の胸腰部長、頭長、心臓の直径は胎齢の推移に従って増加した。交配後3ヵ月までの胎子頭長の増加、4ヵ月半の胎子胸腰部長の増加が明瞭であった。これらの結果から、ヤギに対する超音波検査法は早期妊娠診断を可能にし、さらに胎子発育のモニターにも有用と思われた。
著者
高山 耕二 魏 紅江 萬田 正治 中西 良孝
出版者
鹿児島大學農學部
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
no.57, pp.1-4, 2007-03

本研究は合鴨農法における家鴨雛の適正放飼日齢を明らかにする上での基礎的知見を得ることを目的とし、インディアンランナー種、中国系在来種およびマガモ系合鴨の初生雛を供試し、最大60分間の強制水浴下(20あるいは5℃)における水浴能力を水浴時間、体温、羽毛の浸潤程度を指標として、3種間で比較検討した。得られた結果は次のとおりである。1)家鴨3種の水浴時間は0日齢で最も長く、日齢の経過とともにいずれも短くなった。3、6、9日齢の水浴時間はマガモ系合鴨が他の2種に比べ有意に長かった(P<0.05)。家鴨3種の水浴時間に水温による影響は認められなかった。2)0日齢における水浴終了時の体温低下は、インディアンランナー種に比ベマガモ系合鴨と中国系在来種で有意に小さかった(P<0.05)。0-12日齢における水浴終了時の羽毛の浸潤程度には、3種間で有意差が認められなかった。以上の結果から、供試した家鴨3種の中ではマガモ系合鴨が最も高い水浴能力を有することが示された。
著者
吉田 美代 高山 耕二 石井 大介 廣瀬 潤 木山 孝茂 松元 里志 片平 清美 伊村 嘉美 中西 良孝 赤井 克己
出版者
Warm Regional Society of Animal Science, Japan
雑誌
日本暖地畜産学会報 (ISSN:2185081X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.27-31, 2012

採草地における省力かつ効果的なシカ侵入防止法を開発することを目的とし,試験1:高さの異なるポリエチレン製ネット柵(目合:6×6 cm)に対する飼育シカの行動反応から侵入防止に有効な柵の高さの検討および試験2:2008年10月から2009年1月に採草地に設置したネット柵と電気柵の野生シカ侵入防止効果を比較検討した. 1)飼育シカによる試験では,供試シカ3頭は高さ50および100 cmのネット柵を容易に飛び越えた.一方,高さ150および200 cmを提示した場合には,柵基部から高さ100 cmまでのネットに口唇や頭部で繰り返し探索する行動を示したが,ネット柵を飛び越えた個体は皆無であった. 2)1月における早朝(6:00~7:00)の採草地への野生シカ侵入調査では,電気柵(地上高30,60,100および140 cmの4段張り,瞬間電圧約4,000 Vのパルス電流)を設置した採草地(1 ha)に比べ,ネット柵を設置した採草地(1 ha)でシカ侵入頭数が少ない傾向がみられた.柵設置後3ヵ月目(試験終了時)における植物現存量は電気柵を設置した採草地に比べネット柵を設置した草地で有意に多かった(P<0.05). 以上より,高さ150 cmのネット柵を地面への固定を施して採草地周囲に設置することで高いシカ侵入防止効果が得られることが明らかとなった.
著者
劉 翔 高山 耕二 山下 研人 中西 良孝 萬田 正治 稲永 厚一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.266-271, 1998-10-31
被引用文献数
1

南九州における水生シダ植物アゾラ(Azolla, 日本名アカウキクサ)の飼料化を確立するため, pH, 生育時期およびアイガモ放飼がアゾラの生育に及ぼす影響を検討するとともに, 化学成分, 家鴨による嗜好性およびその給与が家鴨の産肉性に及ぼす影響を検討した。 pH2.8〜9.2の各培養液による生育について, pH5.5〜8.5でのA. japonicaの生育には差がみられなかった。4月上旬および5月下旬にそれぞれ室外環境で接種した A. pinnata 103, A. filiculoides 1006, A. caroliniana 3004, A. microphylla 4018, A. japonicaの生育については, 接種後1〜2週月の生育はいずれの種においても5月(平均気温21.4℃)に比べ4月(平均気温14.6℃)で遅かった。接種後5週間の増殖量についてアゾラ種間で差がみられなかったものの(p>0.05), A. filicloides 1006と在来種のA. japonicaの生育がやや速い傾向を示した。田植え後の水田に接種したアゾラはアイガモ放飼区および無放飼区とも生育が遮光により低下し, 接種後40日間の新鮮物収量は約2.000kg/10aであったが, アイガモ放飼区では虫害, 赤変, 過繁茂あるいはカビなどが発生しなかった。 上述5種アソラ混合物の粗タンパク質舎量は乾物当たり25.1%であり, 家鴨による嗜好性については, ヨモギ(Arzemisia vulgaris L.), シロクローバー(Trifolium repens L.), カラスノエンドウ(Vicia angustifolia L.), エゾノギシギシ(Rumex obtusifolius L.), イタリアンライグラス(Lolium multiflorum Lam.)およびキャベツ(Brassica oleracea var.)に比べ, アゾラの新鮮物摂取量が有意に高かった(p<0.01)。アゾラと配合飼料を家鴨雛に給与した場合, 2〜8週齢の体重は対照区に比べ有意に大きかった(p<0.05)。飼料要求率は4適齢まで対照区よりも低かったが, その後, 増大する傾向が認められた。以上から, アソラ新鮮物は家鴨による嗜好性が高く, その給与が発育を促進するとともに, 産肉性にも良好な成績をもたらすことが示唆された。
著者
高山 耕二 劉 翔 角井 洋子 山下 研人 萬田 正治 中西 良孝 松元 里志 中釜 明紀 柳田 宏一
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.1-11, 1998-07-15
参考文献数
13
被引用文献数
4

合鴨農法における家鴨類の適性品種を選定する上での基礎的知見を得るために、インディアンランナー、中国系在来種およびマガモ系合鴨の3品種を用い、水田放飼(1996年および1997年の6〜9月)における除草・駆虫能力について、品種間で比較検討した。水田放飼期間中、定期的に雑草および害虫の発生状況を調査するとともに、胃内容物調査も行った。1.1997年7月には家鴨類放飼により雑草発生が有意に抑制され、8月にはタイヌビエ、イヌビエなどイネ科雑草の発生が多くみられたものの、中国系在来種がマガモ系合鴨に比べ高い除草能力を示した。2.セジロウンカの発生ピーク時(1996年7月)における胃内容物調査では、マガモ系合鴨の336頭、インディアンランナーの732頭および中国系在来種の506頭と多数のセジロウンカの摂食が確認され、家鴨3品種間に有意な差は認められず、いずれも高い駆虫能力を示した。また、トビイロウンカについても家鴨3品種は高い駆虫能力を示したか、品種間に差はみられなかった。なお、ツマグロヨコバイに対しては、3品種とも駆虫能力は認められなかった。3.スクミリンゴガイに対し、家鴨3品種は高い駆虫能力を示したが、品種間に差は認められなかった。一方、スクミリンゴガイの卵塊については、マガモ系合鴨と中国系在来種がインディアンランナーに比べ高い駆除能力を示した。以上から、家鴨3品種のうち、中国系在来種が水田における除草・駆虫能力の面で最も優れた品種であることが示唆された。日本家畜管理学会誌、34(1) : 1-11,19981998年1月16日受付1998年5月6日受理