著者
山中 望 藤森 亜希 南部 正人 阪 聡 櫻井 健治 守屋 利佳 東原 正明 鎌田 貢壽
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.97-107, 2002-02-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
29

【目的】CRIT-LINETMモニター (CLM) を用いたplasma refilling rate (PRR) の測定法は研究者毎に異なり, 確立された方法がない. そこで本研究では, 11通りのPRR測定法の有用性と限界について検討し, 臨床的に利用価値の高いPRR測定法を明らかにすることを目的とした. 【対象および方法】慢性腎不全患者で, 透析中の血圧が安定している患者を対象とした. 透析条件は, 除水速度以外は透析中一定とした. 除水は, 異なる3種類の除水方法 (UF-A, -B, -C) で行った. 透析開始時の有効循環血液量 (BV(0)) は, 生体計測法 (8%法) と回帰I法 (Hct I法, ΔBV% I法), UF-A, -B, -C法の組み合わせから推定した. PRRの測定は, 生体計測法と回帰I法, 回帰II法 (Hct II法, ΔBV% II法), UF-A, -B, -C法を組み合わせた11通りの方法を行い比較検討した.【結果】8%-A法で測定されたPRR値は, 8.7±1.6mL/minであった. 種々のBV(0)測定法とUF-C法との組み合わせで得られたPRRは, 8%-A法のPRRと有意差を認めなかった. UF-B法で測定したPRRは, UF-A, -C法で測定したPRRに比べ有意に低値 (p<0.01, n=13) であった. 【考察】UF-A法より得たPRRは, 除水施行中のPRR値であるといえる. UF-B法より得たPRRが低値を示した理由は, 除水が行われない条件下の測定であったためであるといえる. UF-C法は, PRR測定直前に大きな除水をかけるため, 適用できる患者が限られるという欠点があるが, 膠質とPRRの関係について検討することが可能である.【結論】透析中の除水を考慮したPRRを測定する場合には8%-A法が, 非除水時のPRRを測定する場合には8%-B法が臨床的に有用である. 8%-C法では, 膠質のPRRへの効果を検討することができる.
著者
田中 一志 武中 篤 楠田 雄司 原口 貴弘 山中 望
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.741-744, 2002-12
被引用文献数
5 7

80歳女.肉眼的血尿,嘔吐が出現し,膀胱鏡で全周性に粘膜の発赤,出血と気泡の形成を認めた.高度の炎症所見,高血糖,脱水を認め,補液,セフォゾプラン投与,レギュラーインシュリンを行った.その後全身倦怠感が増悪し,血液ガス所見で代謝性アシドーシスを認め,意識レベルが低下した.CTで膀胱壁内に著明なガス像を認め,緊急膀胱摘出及び尿管皮膚瘻造設術を行った.膀胱粘膜は全周にわたり暗赤色,浮腫状に変性しており,尿培養及び組織表面の細菌培養でEscherichia coliを認めた.病理所見で,粘膜の上皮細胞はほぼ壊死となって脱落しており,粘膜から粘膜下組織にかけて出血,壊死性の像を認めた.又,粘膜下組織には発生したガスによる著明な大小の腔隙を認めた.術後経過良好で,退院し糖尿病外来治療となったA 80-year-old female with insulin-dependent diabetes mellitus (IDDM) visited our hospital on November 24, 1999, because of nausea, vomiting and macrohematuria. Cystoscopy demonstrated a diffuse hyperemic mucosa and gas-filled vesicles in the submucosa. Despite treatment with antibiotics, infection was not controlled and metabolic acidosis was increased. Simple cystectomy and ureterocutaneostomy were performed. Histological examination showed whole mucosal necrosis and vacuolation with aerogenesis in the submucosa and muscle layer of the bladder. Urine and mucosal surface cultures revealed Escherichia coli infection. After operation, the general condition was improved. Thirty six cases of emphysematous cystitis have been reported in Japan including this case. Successful treatment with cystectomy under the life threatening condition was reported for the first time.