著者
山中 美由紀
出版者
龍谷大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

韓国家族の世代間における位置関係の変化を把握するために、嫁と姑の関係に焦点をあて、韓国水原市において調査を実施した。1992年4月以後、京都韓国学校、韓国文化院資料室(東京)他において資料および情報の収集を行った。9月に訪韓し、韓国老人問題研究所に調査協力を依頼するとともに、水原市において下調べを実施した。調査は、10月ほぼ1カ月間にわたって実施したが、対象者は、嫁として、姑と同居した経験をもつ女性を対象とした。永福女子中学校、永信女子高等学校、老人大学4か所で調査票の配付と回収を行ったが、配付部数は1170部、回収率は80%であった。11月初旬に日本に返送された調査票を整理し780ケースを有効とした。コーデイングしたのち2月にコンピュータによる処理を行った。調査結果のうち主目的であった権威類型については、結婚年次別に分類した4段階の各世代間の変化として、旧世代から新世代に移るにしたがって姑優位型が減少し、嫁優位型が増加する傾向を捉えることができた。また、一致型の減少に対して自律型の増加がみられ、嫁の姑へ追従関係から、嫁、姑の生活領域の個別化の傾向を伺うことができた。こうした嫁・姑の位置関係の逆転現象は、本調査が依拠したところの、増田光吉が神戸市近郊で実施した20年前の調査結果と類似するものであった。
著者
山中 美由紀
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.31-40, 2008

韓国の出産率低下は、1960年代以降の近代化政策と経済発展とともに進行したが、まず既婚女性の出産抑制にはじまり、女性の社会進出の増加につれて晩婚化が影響するようになった。1997年の経済危機以後は、出産抑制と晩婚化が同時的に進んで、2005年には合計特殊出生率は1.08まで低下した。出生率低下の背景には、日本と同様に、結婚観など価値観の変化、女性の就業と子育て環境、教育コスト、不安定な雇用環境があるとされている。政府は、経済危機によってIMFの管理下におかれて以後、ネオリベラルな経済改革を進めると同時に、「生産的福祉」や「参与民主主義」をスローガンとして、社会的セイフティーネットおよび少子高齢化社会への福祉的取りくみを急いでいる。いわば、経済グローバル化のもとでの福祉国家の再編であり、国民の互恵的協力と経済的自立を前提にしてなり立つ韓国的福祉モデルである。しかし、職場や家庭においては女性にたいする差別的で不平等な構造がある。福祉サービスを家族機能や女性役割に依存する家族主義的な社会構造の根本的な改善がなされないかぎり、出生率の大幅な上昇を期待することは難しい。ここではまず、少子化現象の深化の背景を明らかにしたうえで、近年のネオリベラルな構造改革のもとでの福祉国家再編の方向性と少子化現象のゆくえについて検討する。