著者
山内 亨 飯田 貢 大武 由之
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.125-133, 1986-02-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
21

豚骨脂を唯一の炭素源とする培地で,振盪培養によってCandida tropicalis WH 4-2, Candida lipolytica No. 6-20, Candida lipolytica IAM 4947, Candida rugosa JF 101, Candida rugosa JF 114, Cryptococcus albidus IAM 4317, Trichosporon sericeum EP 4-3およびTrichosporon sericeum EP 4-8の8株の酵母を培養した.Cr. albidusとC. lipolytica IMA 4947の菌体生産は良くなかったが,他の6株の酵母は豚骨脂培地で良好に成育した.酵母菌体の脂質含量ならびに脂質の脂肪酸組成は,それそれの菌株で異っていたが,それら脂質は基質に用いた豚骨脂の脂肪酸組成を,かなりよく反映しているところがあると思われた.豚骨脂培地の初発pHを違えて,ジャーファメンターを用いてC. tropicalis WH 4-2とTrichosporon sp. EP 4-8を攪拌,通気培養した.C. tropicalisとTrichosporon sp.をそれぞれの初発pHが6.2あるいは6.3では,初発pHが7.2あるいは7.1のときよりも生育が速やかであった.C. tropicalisの場合は培地の初発pHが6.2のときよりも,初発pH 7.2のときのほうが菌体生産量が多かったが,Trichosporon sp.は培地の初発pHの違いによる菌体生産量に差異がなかった.培地の初発pHと関連して,上記の2株の菌体脂質の脂質画分を調べたが,いずれの酵母にあっても,それぞれの脂質画分の脂肪酸組成は,初発pHの違いで多少の差異は見られるが,特に顕著なものとは考えられなかった.骨脂培地で初発pHを異にして生産したC. tropicalisおよびTrichosporon sp. EP 4-8の酵母菌体は,いずれも基本的には類似したアミノ酸組成を有していて,栄養的価値から見て比較的バランスの良いものと考えられた.