著者
鵜飼 美穂 井藤 一江 石田 真奈美 藤田 有子 松浦 誠子 川野 広巳 山内 和夫
出版者
Japanese Cleft Palate Association
雑誌
日本口蓋裂学会雑誌 (ISSN:03865185)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.155-163, 1992
被引用文献数
1

広島大学歯・学部附属病院矯正科における治療段階と咬合状態を把握するために,1968年4.月から1989年3月までの21年間に診断用資料を採得した口唇口蓋裂患者532名(男子288名,女子244名)を対象に統計的調査を行い,以下の結果を得た.<BR>1.治療段階は,1991年3月の時点で,治療前・治療中が34.0%,保定中・保定後が37・8%,転出・中止が26.8%であった.<BR>2.保定中・保定後の患者186名の動的治療終了時の咬合状態は,前歯部・臼酋部ともに良好なもの(GOOD)が55.9%,前歯部または臼歯部に2歯以上連続してcross biteまたはopen biteがあるもの(POOR)が12.4%,それらの中間のもの(MEDIOCRE)が31.7%,であった・MEDIOCREのうち,顎裂部の骨欠損のために多少の不正はあるものの,現時点での治療の限界であると考えられる症例をGOODに含めると,71.0%は良好な結果が得られていた.<BR>(1)口唇裂,唇顎裂ではPOORはなかったが,片側性唇顎口蓋i裂の18.1%,両側性唇顎口蓋裂の12・5%,口蓋裂の7.7%はPOORであった.<BR>(2)1981年度以降に限ると,GOODと判定された症例の割合は59.9%に増加した.<BR>3.保定法を確認できた200名の上顎の保定装置は,レジン床122名,bonded lingual retainer38名,レジン床または舌側弧線装置とbonded lingual retainerの併用23名,その他の保定装置12名,保定装置なし5名であった.<BR>4.保定中にPOORに変化したのは,動的治療終了時がGOODの19.3%,MEDIOCREの29・2%であった.<BR>5.上顎の補綴法が確認できた61名の補綴装置は,ブリッジ24名,メタルプレート16名,ブリッジとメタルプレートの併用7名,その他14名であった.また,補綴処置を行わず終了した患者が19名あった.<BR>6.補綴後咬合が悪化したのは,補綴物(接着ブリッジ)が脱落した1名と,下顎の成長により前歯部と臼歯部の関係が悪化した2名であった.
著者
坪倉 志乃 井藤 一江 岩谷 有子 小澤 奏 横山 智世子 木村 浩司 切通 正智 山内 和夫
出版者
一般社団法人 日本口蓋裂学会
雑誌
日本口蓋裂学会雑誌 (ISSN:03865185)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.132-143, 1990
被引用文献数
12

広島大学歯学部附属病院矯正科における口唇口蓋裂者の受診状況や上顎歯槽弓形態・crossbiteの状態を把握するために,昭和43年4月の開設から平成元年3月までの21年間に当科で治療を開始した口唇口蓋裂患者532名(男子288名,女子244名)を対象に統計的調査を行い,以下の結果を得た.<BR>1,当科で治療を開始した口唇口蓋裂患者は年間約30名であった.<BR>2.初診時年齢は6歳から8歳が半数を占めていた.<BR>3,口唇口蓋裂患者は,総患者数の10.7%であった.<BR>4.男女比は男子が僅かに女子より多かった.<BR>5.居住地の地域分布では広島県が77.3%を占め,その半数が広島市であった.<BR>6.紹介元の医療施設は広島大学医・歯学部附属病院が50%を占め,診療科別では大学病院または総合病院の口腔外科と歯科および開業歯科が50%を占めていた.<BR>7,一次形成手術を受けた病院は広島大学医・歯学部附属病院が50%を占め,科別では耳鼻科が45%を占めていた.<BR>8.裂型別頻度は,口唇裂1.1%,唇顎裂15.7%,唇顎口蓋裂70.8%,口蓋裂単独12.1% ,正中裂o.4%であった.<BR>9.裂の発生部位別頻度は,左側が最も多く唇顎裂中の65.1%,唇顎口蓋裂中の49,9%であった.次いで,右側(唇顎裂中の30.1%,唇顎口蓋裂中の26.7%),両側(唇顎裂中の4.8%,唇顎口蓋裂中の23.5%)の順であった.<BR>10.裂型別上顎歯槽弓形態は次のようであった.<BR>1)片側性唇顎裂患者は,butt-joint型が90.7%であった.<BR>2)片側性唇顎口蓋裂患者は,butt-joint型68.1%,collapse型22.1%であった.<BR>3)両側性唇顎口蓋裂患者は,butt-joint型32.1%,切爾骨突出型48.1%であった.<BR>11.Crossbiteは,片側性唇顎口蓋裂の97.3%,両側性唇顎口蓋裂の93.8%,口蓋裂単独の91.4%にみられた.