著者
山田 大樹 伊勢木 智行 井上 俊逸 吉野 信次 坪井 一将 村山 大樹 デニス· サンチャゴ 小疇 浩 山内 宏昭
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.547-554, 2015-11-15 (Released:2015-12-31)
参考文献数
22
被引用文献数
4 6

湯種製法で製パンしたパンにおける湯種製造中に糊化した小麦澱粉の製パン性に及ぼす影響について,凍結乾燥グルテンと小麦澱粉で調製した疑似湯種を用いて検討を行った.その結果,疑似湯種中の糊化した小麦澱粉は,GP,GRD,SLVをコントロールに比べて有意に低下させ,擬似湯種中の小麦澱粉の糊化度とGRD,SLVとの間には非常に高い負の相関があることが判った.これより,湯種中の糊化小麦澱粉は生地の製パン性を低下させる主要因であり,湯種パンの外観,色相の特徴であるクラストのL*の低下とケービングに対しても,大きく影響していることが明らかになった.さらに,糊化した小麦澱粉を製パンに用いることによって,得られたパンの水分含量と保水性が増加し,それによりパン中の澱粉の老化が抑制され,保存中のパンクラムの老化を抑制できることが明らかになった.
著者
西尾 善太 伊藤 美環子 田引 正 中司 啓二 長澤 幸一 山内 宏昭 広田 知良
出版者
北海道農業研究センター
雑誌
北海道農業研究センター研究資料 (ISSN:13478125)
巻号頁・発行日
no.69, pp.15-21, 2011-09

北海道では,2010年の夏季に統計開始以来の高温を観測し,秋まき小麦の収量が平年の65%に低下する大きな被害を受けた。このため,秋まき小麦品種「ホクシン」(軟質小麦)および「キタノカオリ」(硬質小麦)の収量構成要素と,生育温度の関係について,1997~201O年の14年間の結果を解析した。登熟期間の平均気温と,登熟日数(出穂から成熟までの日数)および千粒重の間には,強い負の相関が見られ,気温1℃の上昇によって,登熟日数は,両品種とも約2.6日短縮し,千粒重は,「ホクシン」が約2.2g,「キタノカオリ」が約1.9g減少した。5月下旬の平均気温と穂長の間には,両品種とも有意な負の相関が見られ,気温1℃の上昇によって,穂長は,「ホクシン」が約2.6mm,「キタノカオリ」が約4.3mm減少した。1997~201O年の月別平均気温の解析の結果,3月と6月および4月と8月の平均気温の間に有意な負の相関が見られ,4月の平均気温と,秋まき小麦の登熟期間の平均気温との間にも有意な負の相関が認められた。近年の北海道の春季と夏季の気温の間には,有意な負の相関が認められることから,今後も同様の気象パターンが継続すると仮定すると,春季が低温の年は,夏季の高温に対する警戒が必要となる。