著者
西尾 善太 伊藤 美環子 田引 正 中司 啓二 長澤 幸一 山内 宏昭 広田 知良
出版者
北海道農業研究センター
雑誌
北海道農業研究センター研究資料 (ISSN:13478125)
巻号頁・発行日
no.69, pp.15-21, 2011-09

北海道では,2010年の夏季に統計開始以来の高温を観測し,秋まき小麦の収量が平年の65%に低下する大きな被害を受けた。このため,秋まき小麦品種「ホクシン」(軟質小麦)および「キタノカオリ」(硬質小麦)の収量構成要素と,生育温度の関係について,1997~201O年の14年間の結果を解析した。登熟期間の平均気温と,登熟日数(出穂から成熟までの日数)および千粒重の間には,強い負の相関が見られ,気温1℃の上昇によって,登熟日数は,両品種とも約2.6日短縮し,千粒重は,「ホクシン」が約2.2g,「キタノカオリ」が約1.9g減少した。5月下旬の平均気温と穂長の間には,両品種とも有意な負の相関が見られ,気温1℃の上昇によって,穂長は,「ホクシン」が約2.6mm,「キタノカオリ」が約4.3mm減少した。1997~201O年の月別平均気温の解析の結果,3月と6月および4月と8月の平均気温の間に有意な負の相関が見られ,4月の平均気温と,秋まき小麦の登熟期間の平均気温との間にも有意な負の相関が認められた。近年の北海道の春季と夏季の気温の間には,有意な負の相関が認められることから,今後も同様の気象パターンが継続すると仮定すると,春季が低温の年は,夏季の高温に対する警戒が必要となる。
著者
義平 大樹 唐澤 敏彦 中司 啓二
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.165-174, 2000-06-05
被引用文献数
2

道央多雪地帯においてコムギ, ライムギより多収を示す秋播ライコムギ品種と低収にとどまる品種の生育特性の違いを把握し, ライコムギの多収品種育成のための育種目標および多収を実現するための栽培上の注意点を明らかにするために, ライコムギ品種, 北海道の秋播コムギ品種, および秋播ライムギ品種の子実収量とその関連形質を4ヶ年にわたり比較調査した.ポーランド育成のライコムギ品種に, コムギ品種およびライムギ品種に比べて子実収量の高いものが多かった.しかし, ロシア, ウクライナ, フランス, カナダ, 韓国, イングランド育成のライコムギ品種の子実収量はコムギ品種に比べて低かった.前者の多収要因は, コムギに比べて一穂重および地上部重が大きいこと, ライムギに比べ収穫指数が高いことにあると考えられた.後者の低収要因には, 第一に雪腐病発病度が高いこと, 第二に穂数が少ないこと, 第三に収穫指数が低いことがあげられ, 長稈のライコムギ品種において倒伏も低収に関与すると考えられた.道央多雪地帯においてライコムギの多収を実現するためには, 育種目標として冬枯れに対する耐性に優れたもの, 穂数が多く収穫指数の高いものを選抜すること, 栽培技術としては冬枯れによる穂数の減少を防ぐことが重要であり, これらがある程度満たされた時, 穂重型で地上部重の大きいライコムギの特性が多収性に結びつくことが示唆された.