著者
渡辺 光司 山口 和之
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.H1057, 2004

【はじめに】<BR>当通所リハビリテーションセンター(以下通所リハ)ではマシントレーニングを特徴とするパワーリハビリテーション(以下パワーリハ)を導入した。導入前から利用者の活動性維持・向上を目標として行っていたが、十分な成果を出しているかが疑問であった。今回、導入前1年間とパワーリハ介入後のADL・身体能力の変化に着目しパワーリハの効果を検討したので報告する。<BR>【方法】<BR><U>調査1</U> 平成14年1月と同12月に第1回目と2回目のADL、身体能力調査を行った。対象は、歩行可能で研究協力に同意を得られた通所リハ利用者で継続して評価が可能であった81名(男性41名、女性40、平均年齢76±9.2歳)だった。調査項目はADL評価としてBarthel Index(以下BI)、身体能力評価として、Functional Reach(以下FTR)、片脚立位、Timed Up & Go(以下TUG)を行った。<BR> <U>調査2</U> 調査1の対象者からパワーリハを行った61名に、パワーリハ介入3ヶ月後のADL、身体能力調査を行った。<BR>【結果】<BR><U>調査1</U> 第1回目と2回目の調査の結果、ADL評価でBIは、88.4±11.8点から88.0±11.7点となり統計学的な差異はなかった。低下した人数の割合(以下、低下者率)は11.1%となった。一方FTR、片脚立位、TUGにおいては統計学的に優位な低下を認めた(p<.01)。低下者率はそれぞれ、69.1%、66.8%、74.0%だった。<BR> <U>調査2</U> BIは88.3±10.7点から88.6±10.7点で統計学的な差異はなかった。一方片脚立位、TUGにおいてそれぞれ優位な改善を認めた(p<.05)(p<.01)。またFTRは統計学的な差異はなかったが改善傾向があった。<BR>【事例】<BR>88歳、女性、要介護度1。5年前に大腿骨頚部骨折受傷し人工骨頭置換術を施行した。日常生活は歩行自立も転倒への恐怖感から屋外に出られない生活を送っていた。最近、易疲労やふらつきが多くなり室内に閉じこもる事が多くなった。パワーリハ導入前1年間のBIは90点で変化なかったが、TUGは26.1秒から37.2秒と低下が見られた。パワーリハ介入3ヶ月後、TUGは24.5秒に改善した。近くの店へ買い物に出かけるようになり、次はパーマ屋に行ってみたいと行動範囲や目標が広がっている。<BR>【考察】<BR>導入前はADLが維持されていても、身体能力は大きく低下していた。事例のように身体能力低下から行動範囲、生活意欲が低下している要介護者もおり、将来的にADL低下を引き起こす事が予測された。そのため通所リハではADLの維持のみならず、身体能力の低下を未然に防止する取り組みが極めて重要で、パワーリハは身体能力の改善効果が期待できると思われた。以上から身体能力への積極的なアプローチを行うことができるパワーリハは、今後、通所リハで極めて有用な手法と思われる。