- 著者
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山口 堯二
- 出版者
- 佛教大学
- 雑誌
- 文学部論集 (ISSN:09189416)
- 巻号頁・発行日
- vol.88, pp.61-73, 2004-03-01
古代語では完了の助動誌による「ありつる」 などの形で発話時にごく近い過去の事柄に言及することができた。過去と完了の助動詞が「た」に統合された近代語では、助動師側のそのような役割は失われた。そのため、中世にはより分析的にそのような時点を表せる言い方が要請され、室町期にはいくつかの至近過去を表す、時の副詞が形成された。和語では「さき」「さきほど」がそれであり、近世には「さつき」 も現れた。「きさ」や「さっき」ほ至近過去専用の語になって現代んい至る。漢語「さいぜん(最前)」「せんこく(先刻)」も室町期以降、至近過去を表すのに用いられるようになった。現在を表す「いま」「ただいま」に発話時直前を表す用法が増えるのも、室町期以降である。近世後期以降にはその「いま」を核に成立した「いましがた」や、「いま>いんま」で至近過去の至近性を強調する「いまさつき」などさらに多様化している。