著者
今井 美奈 三枝 勉 松本 園子 山口 敬介 光畑 裕正
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.106-109, 2016 (Released:2016-06-30)
参考文献数
10

舌痛症は器質的変化がないにもかかわらず,舌に慢性的な痛みやしびれが生じる疾患である.とくに更年期の女性に多く発症し,歯科治療後に発症することが多いが,原因は不明なことが多く難治性である.心因性の問題が大きく関与していると考えられている.疼痛は舌尖部から舌縁部に好発し,摂食時,睡眠時には軽減する傾向がある.今回,舌痛症の診断で西洋医学的治療を行ったが無効であった4症例に対して,証に合わせてそれぞれ四逆散合香蘇散(柴胡疎肝湯の方意),桂枝人参湯,加味逍遙散,四逆散を使用し,numerical rating scale(NRS)で0~3に痛みが改善した.このように難治性舌痛症に対しては証(漢方学的所見)に従う漢方を使用することにより,効果があることが示された.
著者
黒田 唯 野中 美希 山口 敬介 井関 雅子 上園 保仁
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.28, no.8, pp.167-174, 2021-08-25 (Released:2021-08-25)
参考文献数
40

痛みは,さまざまな要因で発生し,時に患者の精神をむしばみ苦痛を伴う.適切なペインコントロール,マネジメントは実施されているものの,現在使用されている鎮痛薬,鎮痛補助薬では克服できないものも多く存在している.血管内皮由来の血管収縮作用を有するペプチドとして発見されたエンドセリン(ET)は生体において心血管系に対する作用が強力であるため,これまで循環器疾患にかかわる因子として知られてきた.しかしながら近年,ETはETA受容体(ETAR)を介して痛みを惹起し,がん性疼痛をはじめとする炎症性疼痛や神経障害痛などのさまざまな痛みに関与することが報告されており,疼痛領域においても注目されている.またこれまでの報告から,ETAR拮抗薬はオピオイドの鎮痛作用の増強ならびにオピオイド耐性の解除に関与することが報告されているため,新規鎮痛補助薬としてETARをターゲットとした薬剤開発が期待される.本総説ではET-1と疼痛発現機序に関する知見およびETAR拮抗薬とオピオイド鎮痛シグナルとの関連性について概説し,ETARをターゲットとした新規鎮痛補助薬の可能性について,筆者らの研究とともに報告する.
著者
井福 正貴 井関 雅子 吉川 晶子 森田 善仁 小松 修治 山口 敬介 稲田 英一
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.9-14, 2011 (Released:2011-02-04)
参考文献数
14
被引用文献数
1

複合性局所疼痛症候群(CRPS)に有効な治療法は確立されておらず,難治性の慢性痛となることが少なくない.上肢のCRPSでは痛みに加えて日常生活に支障をきたすことも多い.そこで,当科で過去10年間に,上肢のCRPSで治療を受けた44名に,痛みの状態と,これまでの治療に対する満足度を知るために,アンケート調査を実施した.44名のうち22名(50%)から回答を得た.痛みが寛解していたのは2名だけであり,多くは発症から長期間経過した調査時点でも痛みが持続していた.患者を治療満足群(満足群)と治療不満足群(不満足群)に分けて検討した.満足群と不満足群で,痛みや痛みによる身体的な生活の質(QOL)に違いはなかったが,満足群に比べ,不満足群は,年齢が有意に高く,SF-36の結果で精神的健康度が低値であった.難治性の痛みでは,われわれが実施可能な治療に対する満足度を高めることは重要であるが,高齢者の上肢のCRPSでは,治療の満足度が低く,高齢者に適した治療法に加え,支持的・精神的アプローチの必要性が示唆された.
著者
石川 理恵 井関 雅子 古賀 理恵 山口 敬介 稲田 英一
出版者
日本疼痛学会
雑誌
PAIN RESEARCH (ISSN:09158588)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.156-165, 2016-09-30 (Released:2016-10-16)
参考文献数
16
被引用文献数
2

Introduction: In a retrospective study on patients with zoster–associated pain, we reported the patients were associated with various neuropathic pain components and high VAS values regardless of their disease stages. In the present study, we prospectively followed another group of patients to evaluate those components in each of the stages.    Subjects: The subject group was comprised of 76 patients who first visited our clinic between June 2013 and January 2015 with their onsets of zoster–associat­ed pain within 30 days of the first visits.    Methods: Two neuropathic pain screening questionnaires including the Neuropathic Pain Screening Questionnaire (Japan–Q) and the Pain DETECT Questionnaire (PDQ) were used to track the patients for six months. The questionnaires and Visual Analogue Scale (VAS) evaluations were conducted at each of the acute stage (up to 30 days from the onset), the subacute stage (one to three months) and the chronic stage (the fourth month and after).    Results: Sixty–four patients remained in the subject group throughout the course of the study. The median values of the scores at the acute: subacute: chronic stages were 12 : 4 : 3 for Japan–Q, 15 : 9 : 7 for PDQ and 71.5 : 27.5 : 9.5 for VAS (mm). The numbers of patients with neuropathic pain components more strongly manifested at those stages were 53 (68%) : 14 (18%) : 10 (13%) for Japan–Q scores of 9 or higher and 61 (78%) : 35 (45%) : 21 (27%) for PDQ of 11 or higher. The correlation coefficients between the Japan–Q scores and VAS at the stages were 0.38 : 0.38 : 0.46 while the same between the PDQ scores and VAS were 0.42 : 0.29 : 0.44 indicating moderate correlations at the chronic stage of the pain with both of the questionnaires.    Discussion: While dermatitis and neuritis are common complications of herpes zoster, the fact that the patients experiencing intense pain in the acute phase exhibit neuropathic pain components may suggest the severity of neuritis is more manifested than the other complication. Although the patients diagnosed in our clinic in their acute stages exhibited high scores for the neuropathic pain components and VAS, both declined over time suggesting early intervention by pain specialists may be useful in achieving good therapeutic outcomes, even though spontaneous remission may not be completely ruled out.