著者
鈴木 雄介 山口 珠美
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

ジオパークは、平常時のみならず発災時においても、住民や訪問者に対して情報を届けるコミュニケーターとしての機能も期待される。本発表では、2015年に小噴火の発生した箱根火山において行った情報発信とそれに対するアンケート調査結果を報告し、発災時におけるジオパークの役割について述べる。箱根火山では、2015年4月末から大涌谷周辺で火山性地震が増加し、噴気の増加や蒸気井の暴噴などを経て5月6日に噴火警戒レベルが2に引き上げられ、大涌谷への立ち入りが禁止された。6月29日にはごく小規模な噴火が発生し翌30日に噴火警戒レベルが3に引き上げられた。その後、活動が低調になり噴火警戒レベルは9月11日にレベル2に、11月20日にレベル1に引き下げられたものの、大涌谷への立ち入り規制は現在(2016年2月)も継続中である。筆者らは、立ち入りが規制された大涌谷内の状況を解説することを目的とし、マルチコプターによる空撮等を用いて、解説映像を制作した。解説映像に用いた映像は7月15日と7月28日にしたもので、解説には神奈川県温泉地学研究所が7月21日にwebサイト上で発表した「箱根山2015年噴火の火口・噴気孔群(暫定版)」を用いた。制作した解説映像は、8月6日に動画共有サイトのYoutubeで閲覧可能とし、箱根ジオパークおよび伊豆半島ジオパークのwebサイトからリンクした。Youtubeでのこれまでの再生回数は約2700回である。また、環境省箱根ビジターセンター内で活動中であった箱根ジオミュージアムでは、館内の大型スクリーンを用い、訪問者に対し各種解説とあわせ映像を公開した。この映像の公開と同時に、伊豆半島ジオパークのwebサイト上および箱根ビジターセンター内で、閲覧者に対して、解説映像をどのように捉えたのか明らかにするためにアンケート調査を行った。アンケートの有効回答数は97件で、そのうちwebアンケートは65件、箱根ビジターセンターでの回答は33件であった。「このような動画を公開すべきか」という問いに対しては1件の回答を除き「積極的に公開すべき」「必要に応じて公開すべき」という回答であり、情報の需要は高いことがうかがわれた。全回答者に対し「公開すべきでない」理由を複数回答可で回答させたところ「説明不足であり誤解を生むため(9件)」「観光に悪影響があるため(6件)」「不要な恐怖心を与えるため(5件)」などの理由があげられた。「説明不足」や「不要な恐怖心」に関しては継続的な情報発信や、平常時におけるジオパークの活動によって軽減される可能性がある。一方「公開すべき」理由としては「観測観察された情報は公開されるべき(69件)」「火山のことを知るための良い材料になる(68件)」「現状を自分の目で確かめたい(65件)」が高い回答数であり、現状を自ら知り、判断したいという需要が高いことがわかった。その他、大涌谷で発生した噴火に関する興味関心の程度や、大涌谷への訪問回数と、現状の危険性に関する認識などについて解析を行った。アンケート結果からは「そこで何が起こっているのか」に関する情報の需要が高いことがうかがえた。発災時には地元自治体だけでなく、関連する研究機関などからも多くの情報が提供される。これらの個別的、専門的な情報をつないで、わかりやすく提供することがジオパークには求められている。また、発災時の情報発信の信頼性を確保するためには、どのような背景でどのような組織が何をやっているのかが伝わっている必要があり、平常時からの活動も重要である。
著者
山口 珠 藤女子大学大学院人間生活学研究科人間生活学専攻 修士課程(2014年3月修了)
出版者
藤女子大学人間生活学部人間生活学科
雑誌
人間生活学研究 (ISSN:13467069)
巻号頁・発行日
no.22, pp.45-70, 2015-03

本研究は、北海道の高等学校を対象にし、アンケート調査や視察をとおして図書局活動の実態を明らかにするとともに、望ましい図書局活動とはなにか考察することを目的としている。学校図書館における生徒の役割は労働力の不足を補うものと思われがちである。それは、実質的な人員不足に起因することも多いが、図書館に関わる活動が本の貸出のような蔵書に関するもののみ、という認識が一般化していることも一因のように思われる。そのような認識を払拭し、図書館に関わる活動が創造性に富むものになりうるという認識を広める必要性がある。そのためには、図書局の存在を学内のみならず学外に発信する機会が必要である。
著者
有馬 貴之 青山 朋史 山口 珠美
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.125, no.6, pp.871-891, 2016-12-25 (Released:2017-01-25)
参考文献数
25
被引用文献数
2 3

Geoparks in Japan conduct several educational programs mostly for elementary and junior high school students, teaching geology and geography. Staff in geoparks teach local geology and geography; however, there are no programs for tourism education. Besides, most are for elementary and junior high students. Hakone geopark has assisted several schools in their educational programs through museums and delivery classes. Two tourism education programs in Teikyo University are presented and their effects on university students collaborating with the geopark are examined to set a benchmark for tourism education programs in geoparks in Japan. Students have participated in the programs with the goals of providing suggestions or operations for geotours at Hakone geopark. Educational effects on students, such as interest in the locality, are observed. Students also learn how to work in groups and about their commitments, how to improve the quality of presentations, how to make suggestions for tour planning, how to adjust and negotiate with local suppliers on creating tours, and how to operate tours on site. In particular, students discover the potential of local icons and resources as tourism resources that reflect the characteristics of the area. These educational effects are supported by human and organizational networks in the geopark. Local suppliers and other stakeholders also understand the concept and support activities besides tourism. These networks and an understanding of the geopark and tourism in the locality are the main factors supporting the programs.