著者
山口 珠 藤女子大学大学院人間生活学研究科人間生活学専攻 修士課程(2014年3月修了)
出版者
藤女子大学人間生活学部人間生活学科
雑誌
人間生活学研究 (ISSN:13467069)
巻号頁・発行日
no.22, pp.45-70, 2015-03

本研究は、北海道の高等学校を対象にし、アンケート調査や視察をとおして図書局活動の実態を明らかにするとともに、望ましい図書局活動とはなにか考察することを目的としている。学校図書館における生徒の役割は労働力の不足を補うものと思われがちである。それは、実質的な人員不足に起因することも多いが、図書館に関わる活動が本の貸出のような蔵書に関するもののみ、という認識が一般化していることも一因のように思われる。そのような認識を払拭し、図書館に関わる活動が創造性に富むものになりうるという認識を広める必要性がある。そのためには、図書局の存在を学内のみならず学外に発信する機会が必要である。
著者
大桃 伸一
出版者
新潟人間生活学会
雑誌
人間生活学研究 (ISSN:18848591)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.75-85, 2012-03
著者
立山 千草 本間 伸夫
出版者
新潟人間生活学会
雑誌
人間生活学研究 (ISSN:18848591)
巻号頁・発行日
no.3, pp.37-48, 2012

平成19年総務省統計局「全国家計調査年報」の「食料」部門における各項目の金額(支出金額252項目)、数量(購入量141項目)、価格(141項目)と47都道府県庁所在地の経緯度との相互関係について相関係数を算出・解析し、下記のごとき結果を得た。(1)経緯度と金額、数量、価格との相関係数の値は+0.803~-0.734と広範囲にわたっていた。これらの結果から、食料各項目と経度、緯度との関係は、無関係から関連性の高いものまで多様である。(2)経緯度と消費との相関は正の相関が負よりも多数であることから、食料消費は日本の南・西方面よりも北・東方面が盛んである。(3)経緯度と消費との相関係数(絶対値)は北緯より東経との値に大きな値を示す項目が多いことから、食料生産に直接関わると思われる緯度よりも、主に人文的な影響を与えると思われる経度の方が、食料消費への影響が大きいという可能性を認めた。また、日本国土の経度を愛知(名古屋市)・岐阜(岐阜市)・福井(福井市)以東と三重(津市)・滋賀(大津市)以西で東西二分し、相関関係を比較・解析した結果、食文化の東西についての新知見を得た。
著者
永野 忠聖 岩下 香織 鴨下 亜衣 辻 友美
出版者
新潟人間生活学会
雑誌
人間生活学研究 (ISSN:18848591)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.101-106, 2015-03

食品添加物の安全性についての評価は一般的に単独でおこなわれることが多いため、Lau らは複数の食品添加物の組み合わせによる神経芽細胞腫への効果について検討をおこない、神経突起の成長阻害が2 種類の品添加物( ブリリアントブルーFCF と L- グルタミン酸、キノリンイエローとアスパルテーム) の同時投与により相乗されることを示した。本研究では、Lauらがおこなっていない2 種類の組み合わせである、アスパルテームとブリリアントブルーFCFそれぞれの単独投与と共投与を初代培養神経細胞に対しておこない、神経細胞への生存作用について検討をおこなった。また、食品添加物と注意欠陥・多動性障害(ADHD)との関連性がこれまでに指摘されており、ADHD においてGABA 抑制伝達が減弱するとの報告もあることから、本研究では、GABA 抑制性神経細胞に対して免疫組織化学的手法を用いて検討をおこなった。ブリリアントブルーFCF を単独で10nM、72 時間添加したとき、大脳皮質初代培養神経細胞の細胞数は有意に減少していた。また、ブリリアントブルーFCF 10nM、アスパルテーム5μM の濃度で共投与した時にGABA 抑制神経細胞の割合が有意に減少していた。これらの結果は、高濃度のブリリアントブルーFCF が神経細胞に対して生育阻害に働き、また、高濃度のアスパルテームと組み合わせた時に、特にGABA 抑制細胞に対して阻害的に働くことを示唆する。
著者
高橋 靖幸
出版者
新潟人間生活学会
雑誌
人間生活学研究 (ISSN:18848591)
巻号頁・発行日
no.8, pp.89-101, 2017

幼稚園や保育所での実習において、学生がその対応に戸惑いと困難をおぼえる場面のひとつは子どもたち同士のけんかやいざこざといった対人葛藤場面である。学生向けに書かれた実習のためのテキストをみると、子どものけんかの仲裁には「子どもの気持ちを大切にすること」が求められることが多い。しかしながら、「子どもたちのけんかやいざこざを解消するためには、かれらの心を共感的に理解することが必要だ」という語りは、現場での経験の浅い学生に困難をもたらす可能性がある。なぜなら問題の中心が、いかにトラブルを解決するかという具体的な仲裁の方法の議論から、いかに子どもの気持ちを共感的にとらえることができるかという新たな議論へ移行することになる可能性を持つからだ。本稿はこうした語りを「共感的理解」言説と呼ぶ。本稿の目的は「共感的理解」言説に内在している問題性を整理し、別の角度から問題を捉えるための枠組みをエスノメソドロジー研究の知見から学び、そしてエスノメソドロジー的な視点から保育の実践を実際に観察し分析してみることにある。それらを踏まえて、エスノメソドロジー的な理解の枠組みが、実習に臨む学生への指導にどのように利用可能かについての考察を行う。本稿の分析と考察の結果として、子どもたちの対人葛藤の仲裁においてはひとつの手続きがあることが明らかとなった。すなわち、「開始の準備」「事実の確認」「動機の確認」そして「規則の確認」という手順である「子どもの心を共感的に理解する」とは、本校の事例に即して言えば、保育士と子どもたちのあいだで、仲裁のための準備が整い、ふたりに何があったのかが双方の聞き取りにより確認され、なぜそうしたことになったのかが同定され、そしてそのような場合にはどうするべきなのかが了解されるひとつひとつの段階の到達のなかで形成されることであった。このような点に着目することで、けんかやいざこざの仲裁について、実習前の学生へ指導や助言を伝える機会に「共感的理解」言説とは違った語りを示すことができるものと考えられる。
著者
石井 玲子 Ishii Reiko
出版者
新潟人間生活学会
雑誌
人間生活学研究 (ISSN:18848591)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.11-24, 2018-03

本研究の目的は、アメリカの作曲家・ピアニストであるフレデリック・ジェフスキーの≪「不屈の民」変奏曲≫の楽曲構成を理解し、テーマと36の変奏曲の分析をしながら、シンプルな歌の旋律を複雑な現代曲に変奏していく過程を明らかにすることである。また、各変奏曲の多面的な探究を通して、曲に込められたメッセージが楽曲にどのように表現されているかを考察する。原曲の「不屈の民」はチリの民主化運動の時にセルヒオ・オルテガによって作曲された革命歌である。ジェフスキーはこの曲のメロディをテーマとして、36のピアノ変奏曲としてまとめた。楽曲構成としては、異なる音楽的特徴を持つ変奏曲が第1~第5ステージまで発展し、第6ステージではそれまでのすべての要素を要約していることが確かめられた。また、各変奏曲の分析結果から、サイクル5以外の変奏曲は三つの共通した音楽的特徴、①短2度と完全5度のモチーフ、②半音階や全音階のバス進行、③五度圏の調の動き、を持つことが分かった。本研究の結果から、三つの音楽的特徴が様々な要素を結びつける役割を果たし、巧みな変奏技法で長大な曲を一つに統合する過程を検証することができた。ジェフスキーはこれらのテクニックを使って、様々な人々が集まり、対立や衝突を経て団結し、新たな権力に抵抗していく姿を音楽で見事に表現したと言える。日本の演奏家や聴衆にとって、本研究がジェフスキーや彼の作品を理解するための一助となることを期待する。 This study examines The People United Will Never Be Defeated! composed by Frederic Rzewski, a prominent American composer-pianist, through an investigation of overall structure of the work and an analysis of the theme and 36 variations. This examination reveals the complexity and diversity of the work and how this complexity is related to the power of uniting the diverse groups of people. The theme is based on a Chilean revolutionary song,“¡El pueblo unido, jamás será vencido!” (The People United Will Never Be Defeated!), composed by Sergio Ortega, and Rzewski composed 36 variations from this theme. It is clear that Rzewski achieves an incredibly elaborate formal plan for the entire work and the momentum from the first stage to the sixth stage represents how the Chilean people united to oppose the new power. An analysis of the theme and variations reveals that the whole music except for cycle 5 has three common musical features: the minor 2nd /perfect 5th motive (6-20 hexachord according to Allen Forte’s classifications), descending diatonic/chromatic bass line, and the circle-of-fifths sequence of the harmonic progression. These musical elements are used both in tonal and atonal variations so that the composer manages to maintain a certain unity through the lengthy work. This work is a wonderful gift from the twentieth century and a landmark in the history of variations. The present study has aimed to introduce Rzewski’s piano works to pianists and audiences in Japan, and give them the opportunity to perform/understand his pieces.
著者
高原 尚志 高辻 春菜 井上 春菜
出版者
新潟人間生活学会
雑誌
人間生活学研究 (ISSN:18848591)
巻号頁・発行日
no.9, pp.81-87, 2018

近年、海外からの旅行者の需要、いわゆるインバウンドを取り込むための試みが盛んに行われるようになってきた。最近では、東京から大阪に掛けてのいわゆるゴールデンルートだけではなく、地方へと海外からの旅行者の目も向き始めている。各地の観光協会や旅行者はこのインバンドを取り組むため、様々な取り組みを行っている。この際、日本人に定番の観光資源だけではなく、日本人には分からないが海外からの旅行者には大変魅力的な観光資源を見出すことが重要である。渋谷のスクランブル交差点などはこれに関しての有名な例のひとつであるが、地方を訪れる海外からの旅行者が魅力を感じるものとして、日本の伝統的な街並みなども上げることができる。著者らは、金沢を例として、日本人と海外からの旅行者の興味(評価)の違いに注目して、海外からの旅行者の視点から金沢の観光資源を見出す取り組みを行ってきた。そこで本稿では、今までの取り組みを整理した後、考察として概観し、今後の方向性について検討する。この取り組みは、金沢だけではなく、新潟県が佐渡金銀山の世界遺産登録を目指す上でも参考になるものと考える。