著者
山岡 順太郎 藤岡 秀英 勇上 和史 鈴木 純 足立 泰美
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
pp.2017.004, (Released:2017-11-20)
参考文献数
17
被引用文献数
3

近年,日本の労働者における心の健康(メンタルヘルス)の問題が深刻化している。メンタルヘルス問題に関するこれまでの研究では,精神疾患の発症に至る蓋然性の高さを示す指標が用いられてきたものの,精神疾患の発症や受療の有無をアウトカムとした分析は乏しかった。そこで本研究では,中小企業労働者における精神疾患の受療行動と,個人や企業の特性との関係を明らかにする。具体的には,全国健康保険協会・兵庫支部の90万人の被保険者のレセプト(診療報酬明細書)データを使用し,記述統計ならびにロジット・モデルの推計により,「精神及び行動の障害」による受療率の差異を検証した。その結果,中小企業労働者の精神疾患の受療率は男性や働き盛り層で高く,代理指標を用いた従来の研究の知見とは部分的に異なる結果が得られた。また,都市部の受療率がそれ以外の地域より統計的に有意に高く,医療供給サイドの要因や生活要因の存在が示唆された。さらに,労働者の個人属性の影響を考慮してもなお,産業間の受療率の格差が大きく,特にホワイトカラー職種が中心の産業の受療率が高いことが確認された。このことは,メンタルヘルス問題の発生や対策を考える上で,産業構造や職務内容の変化,さらに人的資源管理などの要因を検証することの重要性を示唆している。
著者
藤岡 秀英 野口 理子 山岡 順太郎 鈴木 純 堀江 進也 佐藤 純恵 内種 岳詞 木下 祐輔 山岡 淳 足立 泰美 勇上 和史 張 帆
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、勤労者の心身の健康の維持・増進に資する効果的な施策のあり方を検討するため、健康保険事業者と連携し、事業者、従業者への2回目のアンケート調査を実施して「統合パネルデータ」を構築する。これにより、A.特定健診や特定保健指導等の疾病予防施策の有効性、B.職場環境や企業の健康管理施策が勤労者の心身の健康に及ぼす効果、ならびに、C.勤労者の心身の健康の維持・増進が企業業績に及ぼす影響を実証的に検証する。新しく考案した「加点式健診事業」の実施と評価を行い、地域全体の健康づくりへのモチベーションを高めることで、住民の健康診断受診率の向上、就労、所得、地域生活への効果を調査検証する。