著者
松本 慎平 加島 智子 山岸 秀一
出版者
日本情報教育学会
雑誌
情報教育 (ISSN:24343463)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.31-40, 2020 (Released:2020-05-01)
参考文献数
34

プログラミング教育に関するいくつかの論文では,プログラミング学習後の理解度はプログラミング学習以前の何らかの適性によって決定付けられると述べている.そこで本論文では,プログラミングの適性をその学習以前に行われるプログラミングゲームの理解度で定義し,それとプログラミング学習後の理解度との関係を調査することを目的とする.すなわち,プログラミング学習前に動機付けの目的で利用されたプログラミングゲームの理解度の状況を個々のみならず全体の傾向も含め事前状態として把握するばかりでなく,事前状態と事後状態であるプログラミング学習後の成績とを対応付けて分析することを課題とする.本論文では,事前状態を把握するためのプログラミングゲームとしてアルゴリズム思考の体験を目的とした「アルゴロジック」を利用した.アルゴロジックは,プレイヤが予め設定した命令ブロックでロボットを自動的に動作させ間接的に問題解決を行わせるプログラミング未経験者向けのパズルゲームである.本論文では,学習者がプログラミングの学習を始める前にアルゴロジックを用いた演習を行い,演習後その理解度を確かめるためのアルゴロジックテストを実施した.学習者は,アルゴロジックテストの後,プログラミングの基本を約10か月間かけて学習し,プログラミング学習の理解度を都度テストで確認した.本論文では,これらテストの結果をアルゴロジックテストの得点と関連付けて分析した.分析の結果,アルゴロジックテストの結果とプログラミングの理解度との間には正の関係が示唆された.