著者
山崎 洋治 森田 十誉子 藤春 知佳 川戸 貴行 前野 正夫
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.21-27, 2018 (Released:2018-02-28)
参考文献数
27
被引用文献数
1

歯周病の予防に影響する口腔清掃習慣を,産業歯科健診情報を用いて縦断的に検討した.対象は,某企業の事業所従業員で2002年と2006年に歯科健康診断を受診した者1,985名(男性1,617名,女性368名,平均年齢40.0±9.2歳)とした.歯周病の評価はCPIで,健康行動(歯磨き,歯間ブラシおよびデンタルフロスの使用頻度,喫煙習慣)は自記式質問紙で調べた.ベースライン時の健康行動およびCPIの所見と4年後の歯周ポケット形成との関連性を多重ロジスティック回帰分析した. 2002年に歯周ポケットなしであった臼歯部セクスタントの7.3~9.5%,前歯部セクスタントの1.9~2.3% が,それぞれ4年後に歯周ポケットありに変化した.また,歯周ポケットなしのセクスタントが4年後に一箇所でも歯周ポケットありに変化した者と関連性が認められた要因は,1日3回以上の歯磨き(1回以下に対するオッズ比:0.68,p<0.05),デンタルフロスの毎日の使用(使用しないに対するオッズ比:0.41,p<0.05)およびベースライン時の歯周ポケットの有無(なしに対するオッズ比:1.52,p<0.01)であった. 以上の結果から,1日3回以上の歯磨きと毎日のデンタルフロスの使用は歯周ポケット形成の予防に有効であることが,また,歯周ポケットの保有は,歯周ポケットがない部位での新たな歯周ポケット形成のリスクとなることが示唆された.
著者
森田 十誉子 山崎 洋治 湯之上 志保 細久保 和美 武儀山 みさき 藤井 由希 石井 孝典 高田 康二 冨士谷 盛興 千田 彰
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.255-264, 2012-08-31 (Released:2018-03-15)
参考文献数
34

目的:集団健診における歯周病のスクリーニングには,CPIが通常用いられているが,検査に時間を要し,受診者の負担も大きいことから,簡易な検査法が求められている.本研究では,検査紙を用いた唾液検査と自覚症状を尋ねる質問紙調査との組合せによる歯周病スクリーニング法の有効性を検討した.材料および方法:対象は,某事業所の歯科健診を受診した成人のうち,本試験への参加に同意が得られた468名(平均年齢36.6歳,男性362名,女性106名)とした.唾液検査に用いた試料は,蒸留水で軽く洗口した後の吐出液とし,検査指標はヘモグロビン,タンパク質,白血球および濁度とした.ヘモグロビン,タンパク質および白血球は,検査紙を用いて専用反射率計により測定し,濁度は660nmの吸光度により求めた.質問紙調査項目としては,自覚症状(12項目),喫煙習慣および年齢とした.歯周病の臨床検査はCPI測定により行い,歯周ポケットの有無により分類し評価した.各唾液検査指標については,t検定により歯周ポケット有無との関連性を検討し,さらに,ROC曲線から感度,特異度を算出して検出感度(感度+特異度)の高い唾液検査指標を検討した.自覚症状の項目については,χ2検定により歯周ポケット有無と関連がある項目を検討した.さらに,唾液検査と質問紙調査を組合せたときの感度および特異度を算出することにより,最適な組合せを検索した.結果:1.唾液検査指標のヘモグロビン,タンパク質,白血球および濁度のいずれにも歯周ポケット有無と有意な関連性が認められ,ヘモグロビンが最も高い検出感度を示した.2.自覚症状12項目のうち,「歯をみがくと歯ぐきから血がでることがある」「歯ぐきが赤っぽい,または黒っぽい」「歯と歯の間に食べものがはさまりやすい」「ぐらぐらする歯がある」「固いものが噛みにくい」の5項目を組合せることにより高い検出感度を認めた.さらに,喫煙習慣,年齢を加えることにより検出感度は高まった.3.唾液検査と質問紙調査の組合せでは,ヘモグロビンが陽性,または,自覚症状5項目,喫煙習慣,年齢の計7項目のうち,4項目以上該当の場合に最も高い検出感度を示した.結論:検査紙を用いた唾液検査と自覚症状を尋ねる質問紙調査の組合せは,産業歯科保健活動の現場で活用できる簡易な歯周病スクリーニング法として有効であることが示唆された.