著者
山本 英里子 村田 美樹 山敷 宣代 山科 雅央 諏訪 兼彦 露無 景子 吉矢 和久 中森 靖 島谷 昌明 関 寿人 長沼 誠
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.445-451, 2023-09-01 (Released:2023-09-11)
参考文献数
17

症例は神経脱髄性疾患に対し加療中の10代後半女性.2週間前より薬疹を認め,被疑薬中止により改善した.1週間前より発熱,嘔気嘔吐が出現,AST 1708 U/L,ALT 1238 U/L,T-Bil 3.5 mg/dlと肝酵素著増を認め,急性肝炎の診断で入院となった.血清学的検査ではウイルス性は否定的であり,薬物性肝障害を念頭に,服用中のステロイドとアザチオプリンを継続した.入院第8病日,PT-INR 2.32,肝性脳症II度を認め,急性肝不全昏睡型(ALF)と診断,ステロイドパルス,血漿交換,高流量持続血液濾過透析と肝移植適応評価を開始したが脳症の改善なく,第10病日に脳浮腫を来した.後に血清中EBV-DNA陽性(3.3 LogIU/mL)が判明した.EBVは成人ALFの成因の約1%と稀だが予後は厳しく,成因不明ALFではEBV再活性化の関与も念頭に置く必要性が示唆された.
著者
上田 佳秀 山敷 宣代 安冨 栄一郎 矢野 嘉彦 蔵満 薫 木戸 正浩 福本 巧 上本 伸二 児玉 裕三
出版者
一般社団法人 日本移植学会
雑誌
移植 (ISSN:05787947)
巻号頁・発行日
vol.55, no.Supplement, pp.279_1, 2020 (Released:2021-09-18)

【目的】アルコール性肝障害に対する肝移植適応決定の現状と課題を明らかにするとともに、アルコール代謝酵素遺伝子多型(SNP)による移植後再飲酒予測の可能性を検討することを目的とした。【方法】(1) 肝移植目的にて2010年から2019年に紹介されたアルコール性肝障害症例の経過の検討。(2) 24例のレシピエント・ドナーのアルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)遺伝子のSNPと移植後再飲酒の関係を解析。【成績】(1)アルコール性肝障害に対する肝移植目的紹介43例中、肝移植が行われたのは4例(9%)のみであった。他の39例の移植に至らなかった理由は、飲酒継続11例、精査・待機中死亡8例、本人拒否6例、時期尚早6例、レシピエントの医学的不適格4例、ドナー不適格4例であった。追跡可能な35例中25例が死亡した。(2)レシピエントのALDH2のSNPは22例が活性型*1/*1、2例が*1/*2であった。肝移植後の再飲酒はドナーのALDH2のSNPと関連があり、*1/*1の10例中4例、*1/*2の12例中1例、不活性型*2/*2の2例中0例に習慣的な再飲酒を認めた。【結論】アルコール性肝障害の適応決定には多くの課題があり、肝移植に至るのは一部の症例のみであった。移植後の再飲酒予測にはグラフト肝のALDH2遺伝子多型が有用である可能性が示唆された。