著者
金澤 寛之 小倉 靖弘 小川 晃平 上本 伸二
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.277-283, 2011-06-15 (Released:2011-08-19)
参考文献数
17

熱射病に起因した急性肝不全に対して生体肝移植を施行した症例と人工肝補助療法を施行した症例をそれぞれ経験した。症例1は16歳の男性で運動中に卒倒した。前医入院後,一時的に意識状態が改善したが再び昏睡状態となり第4病日に急性肝不全の診断で人工肝補助療法を開始し同日,生体肝移植を施行した。術後2日目に意識状態の改善を得た。症例2は15歳の男性で運動中に卒倒し,その後熱射病による急性肝不全の診断で人工肝補助療法を開始した。昏睡状態が遷延したが第14病日に意識状態の改善を得た。両者とも神経学的後遺症なく軽快退院することができた。熱射病による急性肝不全は,播種性血管内凝固症候群や熱射病による脳症の合併により肝移植適応を含めた肝不全の評価が困難となる。本病態に対しては人工肝補助療法を行うことで肝性脳症による不可逆的脳障害の回避や肝性昏睡からの覚醒効果に期待し,その間に致死的合併症を制御しながら肝再生あるいは肝移植につなげていく治療戦略が妥当であると考えられる。
著者
江川 裕人 尾形 哲 山本 雅一 高原 武志 若林 剛 藤山 泰二 高田 泰次 保田 裕子 八木 孝仁 岡島 英明 海道 利実 上本 伸二 伊藤 孝司 吉村 了勇 吉住 朋晴 調 憲 前原 喜彦 阪本 靖介 猪股 裕紀洋 篠田 昌宏 板野 理 北川 雄光 川岸 直樹 石山 宏平 井手 健太郎 大段 秀樹 水野 修吾 伊佐地 秀司 浅岡 忠史 永野 浩昭 梅下 浩司 日髙 匡章 江口 晋 小倉 靖弘
出版者
一般社団法人 日本移植学会
雑誌
移植 (ISSN:05787947)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.062-077, 2015-03-10 (Released:2015-03-31)
参考文献数
12

【Objective】To estimate a standard dosage of rituximab prophylaxis for ABO incompatible living donor liver transplantation (ABO-I LDLT), we retrospectively investigated rituximab dosage, efficacy and safety in 37 patients including 4 children undergoing ABO-I LDLT with rituximab prophylaxis in 15 centers in 2013.【Methods】We analyzed the data collected by questionnaire that were sent to registered surgeons or hepatologists of the Japanese Liver Transplantation Society.【Results】Doses of rituximab in adult patients were 500 mg/body in 16 cases (48%), 375 mg/m2 in 12 cases (36%) and 300 mg/body or 100 mg/body in 5 cases. The number of administration was one in 29 cases (89%). The scheduled timing of initial administration was 2 weeks of operation or earlier in 14 centers (93%), and the median of actual timing was 14 days prior to transplantation. One-year patient survival rate was 82%, and the incidence of antibody-mediated rejection (AMR) was 9%. Patients with a standard regimen consisting of 500 mg/body or 375 mg /m2 rituximab 2 weeks before operation or earlier had significantly better one-year survival rate compared to a non-standard regimen consisting of 100mg/body or 300mg/body rituximab later than 2 weeks (100% vs. 70%, p = 0.009) and a lower incidence of AMR (0% vs. 15%, p=0.074). ABO-I LDLT with rituximab prophylaxis was well tolerated.【Conclusion】The recommended regimen for rituximab prophylaxis is a single dose of 375 mg/m2 body surface area 2 weeks before transplantation or earlier. The dose should be reduced carefully according to patient condition.
著者
海道 利実 濱口 雄平 奧村 晋也 小林 淳志 白井 久也 上本 伸二
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.822-828, 2017 (Released:2017-04-20)
参考文献数
32
被引用文献数
1

サルコペニアとは、筋肉量の低下に筋力の低下または身体機能の低下を伴う病態である。その成因によって、加齢に伴う筋肉量の減少である一次性サルコペニアと、活動性の低下 (廃用性萎縮) や低栄養、臓器不全や侵襲、腫瘍などの疾患に伴う筋肉量の減少である二次性サルコペニアに分類される。サルコペニアは生命予後に影響し、特に消化器外科領域においては、手術患者の高齢化による一次性サルコペニアと低栄養や担がん状態、手術侵襲などによる二次性サルコペニアを伴う患者が増加しており、今後、ますます重要な問題となるであろう。事実、最近、消化器領域を中心に、サルコペニアの意義に関する論文が急増している。そのほとんどが、術前サルコペニアは予後不良因子であるという論文である。したがって、今後、サルコペニアをターゲットとした栄養・リハビリテーション介入が、消化器がん治療成績向上の新たなブレークスルーになると期待されよう。
著者
藤原 広臨 上床 輝久 内藤 知佐子 小西 靖彦 上本 伸二 村井 俊哉 伊藤 和史
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.46-51, 2017-03-20 (Released:2017-03-25)
参考文献数
15

近年,特に若年者においてうつ病が多様化し,医学教育の現場でも対応困難な場面を体験することは多い.本稿では,「ゆとり世代」の特徴も踏まえたうえで若者のうつ病について概説し,医学生・研修医のメンタル面での初期対応に資する情報を提供する.
著者
上田 佳秀 山敷 宣代 安冨 栄一郎 矢野 嘉彦 蔵満 薫 木戸 正浩 福本 巧 上本 伸二 児玉 裕三
出版者
一般社団法人 日本移植学会
雑誌
移植 (ISSN:05787947)
巻号頁・発行日
vol.55, no.Supplement, pp.279_1, 2020 (Released:2021-09-18)

【目的】アルコール性肝障害に対する肝移植適応決定の現状と課題を明らかにするとともに、アルコール代謝酵素遺伝子多型(SNP)による移植後再飲酒予測の可能性を検討することを目的とした。【方法】(1) 肝移植目的にて2010年から2019年に紹介されたアルコール性肝障害症例の経過の検討。(2) 24例のレシピエント・ドナーのアルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)遺伝子のSNPと移植後再飲酒の関係を解析。【成績】(1)アルコール性肝障害に対する肝移植目的紹介43例中、肝移植が行われたのは4例(9%)のみであった。他の39例の移植に至らなかった理由は、飲酒継続11例、精査・待機中死亡8例、本人拒否6例、時期尚早6例、レシピエントの医学的不適格4例、ドナー不適格4例であった。追跡可能な35例中25例が死亡した。(2)レシピエントのALDH2のSNPは22例が活性型*1/*1、2例が*1/*2であった。肝移植後の再飲酒はドナーのALDH2のSNPと関連があり、*1/*1の10例中4例、*1/*2の12例中1例、不活性型*2/*2の2例中0例に習慣的な再飲酒を認めた。【結論】アルコール性肝障害の適応決定には多くの課題があり、肝移植に至るのは一部の症例のみであった。移植後の再飲酒予測にはグラフト肝のALDH2遺伝子多型が有用である可能性が示唆された。
著者
江藤 敏治 弘野 修一 永田 賢治 加藤 順也 堀 剛 井戸 章雄 林 克裕 坪内 博仁 小野寺 誠 阿部 弘一 宮坂 昭生 川上 格 佐藤 彰宏 坂下 佳子 岩井 正勝 遠藤 龍人 滝川 康裕 鈴木 一幸 佐藤 俊一 鈴木 千衣子 内田 耕一 弘中 孝治 萱野 幸三 増原 昌明 坂井 田功 沖田 極 関山 和彦 井上 和明 与芝 真 半田 宏一 樋口 大介 井上 和明 関山 和彦 与芝 真 松原 寛 道堯浩 二郎 山内 雄介 井内 英人 長谷 部昌 山本 和寿 井上 愛 堀池 典生 恩地 森一 中西 崇 東俊 宏 狩山 和也 山野 智子 辻 孝夫 川口 光彦 糸島 達也 品川 克至 乾 あやの 小松 陽樹 松本 浩 茂木 陽 宮川 芳宏 藤沢 知雄 上本 伸二 猪股 裕紀洋 田中 紘一 平松 活志 橋本 悦子 谷合 麻紀子 野口 三四朗 長谷 川潔 林 直諒 次田 正 高崎 健 中島 一朗 渕之上 昌平 古川 博之 岸田 明博 大村 孝志 松下 通明 藤堂 省 藤田 美悧 清水 道夫 橋倉 泰彦 三田 篤義 窪田 達也 三輪 史郎 池上 俊彦 寺田 克 宮川 眞一 川崎 誠治 君川 正昭 渕之上 昌平 春口 洋昭 唐仁原 全 中島 一朗 阿岸 鉄三 白髪 宏司 伊藤 克己 高崎 健 橋本 悦子 林 直諒 田中 紘一 上本 伸二 猪股 裕紀洋 阿曽沼 克弘 江川 裕人 藤田 士朗 木内 哲也 林道 廣 田中 紘一 石井 邦英 古賀 郁利子 神代 龍吉 草場 信秀 佐田 通夫 坂本 照夫 加来 信雄 森岡 千恵 菊池 英亮 松尾 英城 中谷 吉宏 豊川 泰勲 富永 謙太郎 山尾 純一 福井 博 福田 邦明 安部井 誠人 遠藤 憲一 本橋 歩 正田 純一 松崎 靖司 田中 直見 古坂 明弘 高橋 正明 平本 淳 白浜 圭吾 永山 和男 田中 照二 Yusufu Youlutuz 松井 淳 持田 智 藤原 研司 小畑 達郎 中島 千種 岡山 昌弘 大野 研而 宮下 智之 田村 明彦 絵野 沢伸 鈴木 盛一 雨宮 浩 青木 達哉 小柳 泰久 山際 健太郎 川原田 嘉文 八木 真太郎 飯田 拓 横井 一 垣内 雅彦 足立 幸彦 飯田 拓 田端 正己 町支 秀樹 横井 一 川原 田嘉文 東口 高志 今井 俊積
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.189-198, 1999
著者
堀 智英 上本 伸二 加藤 琢磨
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

従来よりUV照射による抗原特異的な制御性T細胞が誘導できることが報告されていますが、これらの報告ではUV照射後に抗原に感作を行っており(前照射・後感作)、そのメカニズムについてはC4+T細胞を介してTh1からTh2へ偏向することにより説明されています。我々は申請時のプロトコールどおりに各レシピエントマウスから精製したCD4+T細胞と、ドナーの脾細胞とのmixed lymphocyte cultureを行い、培養上清におけるサイトカイン産生について解析し、従来のUVに関する報告と異なりIL-4の有意な産生は全く認めませんでした。そこで、前感作・後照射による感作抗原特異的な免疫抑制のメカニズムが従来のTh2へ偏向ではないことを証明するために、IL-4,IL-10,IL-5,IL-13,IFN-γ,IL-2について解析を行い、これまでの報告と異なり、Th2へ偏向ではなくIL-10のみを感作抗原特異的に高濃度に産生することを証明しました。さらに、抗原特異的な免疫寛容作用を有するCD4+T細胞について、その誘導および機能に関してのIL-10依存性を解析するために、UV照射の前後1日に抗IL-10抗体で処置したマウスおよびCD4+T細胞をナイーブレシピエントに移入する際に抗IL-10抗体を同時に投与し、その場合には免疫抑制効果は失われました。我々の抗原感作後にUV照射を行う系(前感作・後照射)では、感作抗原に一致してドナー抗原特異的なグラフトの生着の延長及びproliferation assayでの抗原特異的な免疫抑制が得られました。今回、感作した抗原に特異的なTr1様の免疫抑制性T細胞をUV照射により誘導でき、従来の報告と大きく異なりTh2偏向のメカニズムではなくIL-10のみに依存性にCD4+T細胞を介して免疫抑制効果を得ている点を証明でき、以下の論文に発表しました。
著者
上本 伸二
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

ラット同種間強拒絶肝移植モデルを用いて、肝移植術前にレシピエントの骨髄細胞をドナーに移植することにより、拒絶が軽減するかどうか検討した。肝移植術前に骨髄細胞移植を行うことで肝移植術後の拒絶反応が軽減された。肝グラフト内に移植骨髄由来の細胞の生着を認め、それらはKupffer細胞に分化していた。ドナーに対するレシピエント由来の骨髄移植によるKupffer細胞置換は肝移植後の拒絶抑制に有用な治療となる可能性がある。今後、異種移植モデルで検討を行っていく。臨床でのブタ/ヒト異種移植を想定し、ハムスター/ラット間の異種肝移植モデルの手技を確立した。
著者
飯田 拓 山際 健太郎 八木 眞太郎 藤井 幸治 濱田 賢司 水野 修吾 田端 正己 横井 一 伊佐地 秀司 上本 伸二
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.106-111, 2003-02-01
参考文献数
19
被引用文献数
4

症例は30歳の女性.1991年頃より心窩部痛が出現,腹部超音波・CTにて肝外側区域に約3.5cm大の嚢胞性病変を指摘された.1996年には肝病変は11cm大に増大し,塩酸ミノサイクリン局注療法を施行された.1998年のCTにて再度6.5cm大に増大,嚢胞壁の肥厚および嚢胞内隔壁が出現したため,肝嚢胞腺腫または嚢胞腺癌と診断,肝外側区域切除術を施行した.摘出標本は7.5×6×4cm大の多房性病変で,組織学的には上皮細胞に悪性所見なく,嚢胞壁は紡錘状の卵巣様間質細胞で構成されており,hepatobiliary cystadenoma with mesenchymal stroma(CMS)と診断された.検索しえたCMS本邦報告例は13例で全例女性であった.自験例では卵巣様間質細胞は免疫化学染色でER・PgR陽性であった.CMSは予後良好とされるが,malignant potentialを有する前癌病変であり,癌化例も認めることから積極的な外科的切除が必要と考えられた.