著者
伊藤 典彦 山木 邦比古
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1.実験的イヌ原田病モデルの解析初年度イヌを用いてヒト原田病原因抗原の一つであるTyrosinase related proteins 1を免疫、発症に成功した症例の更なる解析を組織化学的に行った。脈絡膜には多数の炎症細胞の浸潤が見られ、激しい炎症に続いたと考えられる瘢痕形成が見られた。炎症所見は特に脈絡膜のメラノサイト周辺に多く見られた。皮下では皮膚の基底膜および血管周囲にも炎症細胞の浸潤が見られ、特にメラノサイト周囲に多数の炎症細胞の浸潤が見られた。以上の結果から実験的に発症したのはメラノサイトが攻撃を受ける自己免疫疾患であると判定された。2.実験的サル原田病モデルの作成 その2前年度のカニクイザル2頭を用いた実験につづけて取り扱いが容易なマーモセット6頭に同様な免疫を行った。免疫6週後に、6頭のうち4頭の両眼に以下の所見が観察された、前房内細胞、硝子体混濁、視神経乳頭浮腫・充血。カニクイザルで見られた角膜後面沈着物、虹彩後癒着、網膜血管蛇行は見られなかった。さらに、蛍光眼底造影では視神経乳頭部の過蛍光および硝子体腔内への色素の漏出が見られた。眼症状は免疫後7週目を極期とし、その後改善、11週目には硝子体に症状を残すだけであった。マーモセット原田病モデルはカニクイザルに比べて早期に発症、軽症であった。
著者
山木 邦比古 近藤 功 中村 秀夫
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

私達は当該の科学研究費の交付を受け、melanocyteの不溶性抗原の解析をおこなってきた。この中で、melanocyteに特異的に発現しているtyrosinase family proteinの免疫によって白色ラットに実験的Vogt-Koyanagi-Harada(VKH)病を惹起させることができることは既に報告したが、今回は有色ラットに実験的VKH(EVKH)を惹起させることができた。有色ラットのEVKHは臨床的にはVKH diseaseに特徴的とされる夕焼け状眼底を呈するものも認められた。組織学的にはやはりVKH diseaseに特徴的とされる著名な脈絡膜の肥厚、Dalen-Fucks noduleなど肉芽腫性の炎症も広範にみられ、EVKHが惹起されたものと考えられた。またVKH患者リンパ球を分離し、melanocyteの不溶性抗原を抗原としてlymphocyte proliferation assayを行った。この結果tyrosinase family proteinを含む複数の不溶性成分に対して、VKH患者リンパ球が反応性を有していることが判明した。またVKH患者リンパ球をclone化し、VKH病に関与している免疫反応について更に検索すべく実験を行っている。これらの結果は現在投稿準備中である。