- 著者
-
山本 佳奈
田淵 紀子
- 出版者
- 一般社団法人 日本助産学会
- 雑誌
- 日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
- 巻号頁・発行日
- vol.36, no.1, pp.93-104, 2022 (Released:2022-06-30)
- 参考文献数
- 15
目 的近年,日本において硬膜外麻酔分娩(以下,無痛分娩)は増加傾向を示しており,ニーズの増加が予想される一方,助産師の中には,無痛分娩に対して否定的で,受容しがたいと感じるものがいるとされている。本研究の目的は,無痛分娩に携わる助産師が,どのような思いを抱きケアを行っているかを明らかにすることである。対象と方法研究デザインは質的記述的研究である。無痛分娩に携わった経験のある助産師16名を対象に,半構造化面接を行った。得られたデータから逐語録を作成し,無痛分娩に携わる助産師の思いが語られている部分を抽出し,コード化し,カテゴリに分類した。結 果無痛分娩に携わる助産師の思いは,6のカテゴリに集約された。【無痛分娩にも良さがあるという実感】【無痛分娩を受け入れようとする思い】では,無痛分娩に携わる助産師だからこそ持つ肯定的な意見と,それゆえに無痛分娩の増加に対応していこうとする語りがみられた。一方,助産師は【分娩が安全かつ順調に進行するように支援する難しさ】【無痛分娩に関する知識不足による不安や難しさ】を抱いており,無痛分娩の支援の難しさを感じていた。【無痛分娩に携わることによる自然分娩の良さの再認識】では,無痛分娩と関わる中で生じる自然分娩の良さへの実感が語られていた。以上のカテゴリを背景に,【産婦の希望に沿い無痛分娩の支援をする中で生じる自身の助産師としての思いとの葛藤】がみられた。結 論無痛分娩に携わる助産師は,無痛分娩の良さや支援の難しさを感じ,葛藤していた。その中でも,妊産婦の希望に沿い,安全な無痛分娩となるよう関わっているということが明らかとなった。安全で満足度の高い無痛分娩を提供するためには,助産師が無痛分娩に関する正しい知識を身に付け,また妊産婦の希望や想いに寄り添い,その選択を支える姿勢で関わる事が必要である。