著者
山本 勝利
出版者
農業環境技術研究所
雑誌
農業環境技術研究所報告 (ISSN:09119450)
巻号頁・発行日
no.20, pp.1-105, 2001-08
被引用文献数
11

里山,農地,居住域が一体となった里地ランドスケープ構造の変容が二次的自然と結びついた植物相に及ぼす影響を,時間,空間スケールを変えて解析した。国土スケールでは,過去約100年間の変容を日本全国を対象として解析し,地形ならびに歴史的な奥山の存在による地域的差異を明らかにした。地域スケールでは,国土スケールの地域的差異に基づいて岩手県西和賀地域,埼玉県比企地域,茨城県南部地域の3地域を対象地に選定し,集落を単位として,里山の変容が植物相に及ぼす影響を,林床植物の生育状況,林分構造,林分へのアクセス性,過去の林野利用形態により評価した。その結果,今日の里山林管理がアクセス性に規定されているために生じた過去と現在の林野利用の不一致が植物相に影響を及ぼしていることを明らにした。さらに,この不一致の解消には,林野利用の履歴に基づいた管理対象地の選定と,里山とアクセス路の一体的管理が必要なことを提示した。