著者
稲垣 栄洋 稲垣 舜也 加藤 百合子 河合 眞 砂川 利広
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.183-186, 2017 (Released:2018-03-15)
参考文献数
20
被引用文献数
1

農道法面や畦畔法面の草刈り管理に代わり,踏圧により畦畔雑草を抑制するロボットを開発する基礎として,踏圧処理が畦畔の植生に及ぼす影響について調査した。その結果,踏圧処理により,匍匐性のシロツメクサが優占する植生となり,斑点米カメムシの発生源として問題となるイネ科雑草のネズミムギが抑制された。また,その効果は週に 1度,自重 4 kgの園芸用台車を走行させるという低頻度の刺激で可能であった。
著者
稲垣 栄洋 栗山 由佳子 前島 固女 石上 恭平
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.235-238, 2007-08-31
被引用文献数
3 4

撹乱依存型絶滅危惧植物のミズアオイとオオアブノメの大規模な群落の保全を図るために,省力的な撹乱方法として湿地ブルドーザの活用を試みた。湿地ブルドーザの撹乱により,3月撹乱,6月撹乱ともに,ミズアオイとオオアブノメの発生が誘発される傾向が認められた。また,ミズアオイとオオアブノメの出現率は,湿地ブルドーザによる大規模な撹乱作業と,市民による手作業の撹乱作業とで差異が認められなかったことから,湿地ブルドーザの利用は,群落保全の手法として有効であると考えられた。ただし,夏季以降に3月撹乱区ではヒメガマ,6月撹乱区ではイヌビエが優占し,ミズアオイやオオアブノメの出現率は低下したことが問題点として残された。
著者
稲垣 栄洋 長谷川 佳菜 窪田 早希子 西川 浩二 成瀬 和子
出版者
日本有機農業学会
雑誌
有機農業研究 (ISSN:18845665)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.32-37, 2019-07-31 (Released:2019-12-27)
参考文献数
11

伝統的な刈敷き栽培は,ススキやヨシなどのイネ科植物を用いるのが一般的である.しかしながら,徳島県剣山系の伝統農法では一般的な刈敷き栽培にはススキを用いるのに対して,ナス科作物の栽培にはタデ科多年生雑草であるイタドリが経験的に用いられている.この要因は明確ではない.そこで本研究では,イタドリの表層施用がナスの生育や収量,品質に及ぼす影響を検討した.試験は2016年度と2017年度に行い,径30cmのポットにナスを1本植え栽培して,イタドリ施用,ススキ施用,無施用の3水準で行った.その結果,潅水を制限した場合,イタドリを施用した区とススキを施用した区では,無施用に比べて土壌水分が高くなった.また,イタドリ施用区とススキ施用区では昼夜の温度差が小さくなる効果が認められた.ナスの生育や収量には,イタドリやススキの施用の効果は認められなかった.一方,イタドリを施用した区では,ナスの皮がやわらかくなり,果実糖度が高まる効果が認められた.
著者
稲垣 栄洋 栗山 由佳子 前島 固女 石上 恭平
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.235-238, 2007 (Released:2008-02-21)
参考文献数
9
被引用文献数
4 4

撹乱依存型絶滅危惧植物のミズアオイとオオアブノメの大規模な群落の保全を図るために,省力的な撹乱方法として湿地ブルドーザの活用を試みた。湿地ブルドーザの撹乱により,3月撹乱,6月撹乱ともに,ミズアオイとオオアブノメの発生が誘発される傾向が認められた。また,ミズアオイとオオアブノメの出現率は,湿地ブルドーザによる大規模な撹乱作業と,市民による手作業の撹乱作業とで差異が認められなかったことから,湿地ブルドーザの利用は,群落保全の手法として有効であると考えられた。ただし,夏季以降に3月撹乱区ではヒメガマ,6月撹乱区ではイヌビエが優占し,ミズアオイやオオアブノメの出現率は低下したことが問題点として残された。
著者
大石 智広 稲垣 栄洋 高橋 智紀 松野 和夫 山本 徳司 栗田 英治
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
日本造園学会 全国大会 研究発表論文集 抄録
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.95, 2009

グリーンツーリズムの対象を示すため,景観の選好性や景観を見たときの印象,景観から想起される仮想行動を調査した。茶園は成人女性と女の子に好まれ,リラックスした体験が適すると考えられた。ミカン園は成人女性と子供が好んだ。森林は成人男性と子供に好まれ,音や景色を静かに楽しむ体験が適した。牧場は多くの人に好まれ,行動を伴う様々な体験が適した。成人女性は広々とした景観を好み,成人男性は自然的な景観を好んだ。多くの人は仮想行動が多く想起される景観を好んだ。特に子供は,飲食行動が想起される景観を好んだ。以上のことから農業景観に適したグリーンツーリズムの対象が示された。農業景観をグリーンツーリズムに効果的に活用するには,景観の好みや景観を見たときの印象や起こしたくなる行動を把握することが重要である。
著者
稲垣 栄洋 楠本 良延
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.365-368, 2016

市場の国際化が進む中で,世界の農業は効率化や省力化が強く求められている。そして,農業の近代化に伴って昔ながらの伝統農業は失われつつある。しかしながら,手間を省くことなく,むしろ手間を掛けて良品質な農作物を生産してきた伝統的な日本農業の中にも,重要な強みが含まれていることだろう。静岡県で古くから行われてきた「茶草場農法」もまた,良質な茶を生産するために行われてきた伝統農法である。かつて日本の農山村では,畑の肥料や家畜の飼料,茅葺屋根の材料などに用いるために「かや場」と呼ばれるススキ等を優占種とした半自然草地を有していた。しかしエネルギー革命後,人々の生活が近代化する中で,ススキは用いられなくなり,里山の半自然草地は今や国土の1%にまで減少している。ところが,静岡県の茶園周辺には,今でも管理された「茶草場」と呼ばれる半自然草地が見られる。そして,秋から冬にかけて茶草場の草を刈り取り,天日で乾燥させてから,茶園の畝間に敷いていく「茶草場農法」という伝統的な農法が今も守られているのである。草を刈り,束ねて干し,茶園に敷くという作業は今でも手作業で行われており,大変な重労働である。しかし,茶園に草を入れることで茶の香りや味が良くなるとされており,茶農家は良いお茶を作るために手間ひまを掛けてきた。この農家の作業によって,半自然草地が維持され,草地の生物多様性を保全されていたのである。草刈りによって維持される日当たりの良い草地では,さまざまな里山の植物を見ることができる。また,茶草場で見られる植物には,茶の湯の席に活けられる茶花も多い。「茶草」を活用した茶生産が,失われつつある草原の植物を保全し,「茶花」を守り伝えてきたのである。農業や農山村は,生物多様性を保全することが指摘されている。しかし,農業の生産性を高めようとすれば,生物を犠牲にすることが多い。一方,生物を保全しようとすれば,農業の生産性を犠牲にしなければならないこともある。茶草場農法は,高品質な茶を生産するという農業生産性を高める努力が,生物多様性を保全してきた貴重な例の1つである。かつて良質な茶は,高い価格で取引されてきた。しかし近年では,ペットボトル用の安価な茶の需要が高まる一方,高級茶の価格が低迷しており,高級茶と下級茶の価格差は縮小傾向にある。そのため,昔ながらの茶草場農法を行う農家も,減少しつつある。
著者
稲垣 栄洋 済木 千恵子 松野 和夫 市原 実
出版者
静岡県農林技術研究所
雑誌
静岡県農林技術研究所研究報告 = Bulletin of the Shizuoka Research Institute of Agriculture and Forestry (ISSN:18828264)
巻号頁・発行日
no.6, pp.65-69, 2013-03 (Released:2014-01-16)

欧米では,寄生蜂等の土着天敵の生息地となるバンカープラントとして,ブドウ畑や野菜畑等の周辺にソバを栽培する例が見られる.そこで静岡県の耕作放棄地で栽培されるソバを対象として,寄生蜂を含む訪花性ハチ目相を調査した.その結果,ヒメバチ科,コマユバチ科,コンボウヤセバチ科,トビコバチ科,ヒメコバチ科,コガネバチ科,アリヤドリコバチ科,オナガコバチ科,タマゴクロバチ科,アリガタバチ科,ツチバチ科,コツチバチ科,アナバチ科を含む多くの寄生蜂を観察した.この結果から,日本においてもソバが寄生蜂の蜜源となっていることが明らかとなり,寄生蜂の供給源としてソバを栽培することも有効であると推察された.
著者
楠本 良延 稲垣 栄洋 平舘 俊太郎 岩崎 亘典
出版者
独立行政法人農業環境技術研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

静岡県の茶産地では茶畑にススキを主とした刈敷を行う農法が広く実施されている。この刈敷の供給源となっている半自然草原を茶草場という。空中写真とGISの解析から掛川市東山地区では茶畑の65%に相当する半自然草地が維持されていた。わが国の半自然草地が減少しているなかで茶草場は重要で貴重な草原性植物の生息地として評価できる。茶草場は伝統的な里山景観と農業活動によって維持される生物多様性保全の良い事例だと考えられるため、その成立・維持機構を明らかにする。
著者
露崎 浩 稲垣 栄洋
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, 2008-12-24
参考文献数
2