著者
石田 憲治 嶺田 拓也 粟生田 忠雄 田村 孝浩 日鷹 一雅 谷本 岳 小出水 規行 若杉 晃介 栗田 英治 芦田 敏文
出版者
独立行政法人農業技術研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

水田における魚類や水生昆虫などの生物の行動特性と水田及び周辺の植生や土壌、水利条件などの環境特性、さらには水田の水環境にかかわる社会条件から生物多様性向上要因を分析した。その結果、(1)生物多様性向上に有効な湿地環境復元に水田冬期湛水が有効であること、(2)初期湛水深、湛水田の配置、湛水期間の工夫で現行の利水条件下でも湛水可能面積の拡大が可能であること、(3)一部の水生昆虫では冬期湛水より通年湛水場所を確保する水管理が重要であること、などを明らかにした。
著者
日鷹 一雅 嶺田 拓也 大澤 啓志
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.20-25, 2008-06-30 (Released:2009-06-30)
参考文献数
38
被引用文献数
5 5

A consideration was progressed for historical establishment of agrobiodiversity in a rice field of rural area, integrating factors in biogeography, rural history and engineering, farming systems and agricultural management practices. Actually situation of conservation or restoration planning of agrobiodiversity have conducted from an only view point of agricultural management practice, especially ignoring biogeographical ones as the first historical step. For systematic planning of nature restoration in a rice field of a particular rural area, it is necessary to understand deeply integrated analysis of agrobiodiversity basing on biographical, historical and agronomical academic disciplines.
著者
嶺田 拓也 吉迫 宏 赤石 大輔
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会誌 (ISSN:18822770)
巻号頁・発行日
vol.81, no.8, pp.635-638,a2, 2013 (Released:2020-01-10)
参考文献数
6

能登半島の先端に位置する石川県珠洲市は過疎高齢化が進行した地域であり,小規模なため池を中心に放棄や管理の粗放化が問題となっている。現在,多様な主体の参画・連携のもと策定作業が進められている「地域連携保全活動計画」のなかで,ため池の希少水生生物を守りながら地域資源としての利活用を図るために,放棄されたため池を利用したジュンサイ栽培が提案されている。能登地域ではジュンサイ利用の食文化もあり,地域需要も見込まれるほか,ジュンサイは希少ゲンゴロウ類などの水生昆虫の産卵植物や隠れ場として貢献しうる。当該地区の取組みは,放棄された小規模ため池を新たな地域資源として再生・位置づけるものとして注目される。
著者
嶺田 拓也 沖 陽子
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.81-87, 1997
被引用文献数
8

埋土種子集団は防除体系や耕起法など圃場に対する過去の人為的働きかけを反映する。そこで農生態系における雑草種の管理戦略を組み立てるために, 雑草防除法, 耕起法, 作付け様式などの管理の異なる岡山県南部の水田8圃場の土壌を, 入水前の6月に地表から0-5, 5-10, 10-15, 15-20cmの4層に分けて採取し, 炭酸カリウム50%溶液を用いた比重分離法で埋土種子を回収した。埋土種子総数は, 手取り除草中心の圃場よりも除草剤連用の水田で少なかった。そして休耕田や粗放管理の圃場では, ノビエ類を中心に埋土種子数が除草剤連用水田の3倍以上であった。また不耕起田では, 種子の分布は表層部に偏り, 反転耕を行っている圃場では地下20cm近くまで種子の分布が多くみられた。草種別ではコナギ・アメリカコナギの種子数が, 手取り除草を続けている圃場で多くなる傾向を示した。そしてイネ単作圃場より, 麦やレンゲを栽培し秋から春にかけての耕起回数が少ない圃場で, スズメノテッポウを中心とする冬生雑草が多くなった。また主な草種において比重分離法で回収された種子と発芽法にて発生してきた本数との間には有意な回帰式を導くことができた。
著者
嶺田 拓也 石田 憲治 廣瀬 裕一 松森 堅治
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.25, no.Special_Issue, pp.347-352, 2006-12-30 (Released:2007-12-30)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

In recent years, irrigation ponds which avoided maintenance for less irrigation demand increased. Hydrophytes, which grow in irrigation ponds, are affected by habitual maintenance, such as water release with water utilization. In this study, we grasped habitual maintenance of small irrigation ponds for hydrophytes conservation in Nakatado region of Kagawa Prefecture by a questionnaire. It was indicated that presence of hydrophytes in irrigation ponds was influenced by maintenance of pond, and many pond managers had a good impression for these plants.
著者
嶺田 拓也 石田 憲治
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.577-580, 2006 (Released:2007-11-13)
参考文献数
30
被引用文献数
4 7

A irrigation pond contributes to conservation of biodiversity in rural landscape to offer important standing water area greatly. Various aquatic plants utilize a irrigation pond as habitat, although recently decrease of a floating plant and a submerged plant is reported in each place. In Nakatado region of Kagawa Prefecture, we examined a role of irrigation pond for conservation of endangered submerged plants, which are sensitive for environmental change. The appearance frequency of a endangered submerged plant was high in a small irrigation pond less than 2.000m3 storage capacity from result of flora of 536 pond. Therefore we monitored population of Blxa aubertii and Ottelia japonica, which are belong Hydrocharitaceae of endangered submerged plants, and observation change of fluctuation pattern in water level and management situation of some irrigation ponds. As a result, it was considered that fluctuation in water level, supplied water use for irrigation, contributed to population preservation of submerged plants. It becomes clear that a role of the small irrigation pond is important for preserve of endangered submerged plant through maintained water use.
著者
嶺田 拓也 日鷹 一雅 榎本 敬 沖 陽子
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.88-96, 1997-08-30
被引用文献数
12

レンゲ冬作による草生マルチと不耕起を基軸としたLISA水稲直播栽培試験を実施している水田2筆において, レンゲ群落, 発生雑草, および水稲収量の推移を3年間にわたり調査した。またレンゲ草生マルチの夏生雑草に対する抑草効果を評価するためにマルチ除去実験を行った。本栽培試験の初年度はレンゲはよく繁茂し冬生雑草の発生も少なかった。湛水後は, 前年の慣行栽培時に多数発生したコナギが消滅したほか, 他の草種の発生も少なく, また水稲収量も470kg/10a以上を得た。しかし2年目以降, レンゲ群落の衰退に伴い雑草の発生数は著しく増加し, 水稲収量も減少した。しかしレンゲ草生マルチをレンゲ開花期の5月上旬に除去すると, 湛水後に一年生のカヤツリグサ科を主とした水田一年生の雑草密度が顕著に増加したことから, レンゲマルチによる抑草効果が推察された。
著者
日鷹 一雅 嶺田 拓也 渡邊 修 本林 隆 東 淳樹 大澤 啓志
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

まずはカメ類、両生類、畔畔の高等植物、昆虫等について現状の生息状況を在地の多様な研究者と検討した。その結果から、トノサマガエル、イシガメ、チガヤ、ススキ、ヒメゲンゴロウなどの水生昆虫などの水田普通種が地域的に減少傾向であった。これらの普通種減少について、激減仮説(新農薬・侵入生物・栽培環境・圃場整備など)のそれぞれが減少要因に関与していた。減少傾向の種のうち、とくに減少傾向の顕著な種群に悪影響を及ぼす要因について影響評価実験を行った。メソコズムとマイクロコズムを考案し、半致死濃度を求め、ある殺虫剤の悪影響をつきとめた。昆虫種の中には地域個体群の激減に一部の普及農薬の化学成分が影響していた。減少種とその要因の関係性は多様であり、在地の研究者の役割は大きい。
著者
嶺田 拓也 石田 憲治
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究. 別号, 講演会講演要旨 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
no.43, pp.48-49, 2004-04-16

近年、収穫後の乾田化した水田に湛水する「冬期湛水」の試みが、環境NPOなどを中心に各地から報告されている。これは当初、我が国に越冬のため飛来してくるガン・カモ類やハクチョウ類などの水鳥に採餌場や塒(ねぐら)を提供することを狙ったものであったが、湛水によるイトミミズ増進等がもたらす抑草効果の可能性も指摘され、環境保全型の営農技術としても注目されている。そこで、文献やHPなどの情報をもとに、冬期湛水を実施している全国の事例を収集し、アンケート調査等を通じて冬期湛水の実態を把握するとともに、3カ所の実施圃場にて収穫後の残草量やイトミミズ有無などの簡易調査を行い、冬期湛水に見られる雑草抑制効果についての研究の端緒を開くことを目的とした。