著者
山本 綾子 永尾 悦子 浅賀 恵美子 五十嵐 武 佐々 龍二 後藤 延一
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.413-420, 2001-12-31 (Released:2012-08-27)
参考文献数
33

口腔トリコモナス (Trichomonas tenax : T. tenax) は, 歯周疾患患者から非常に高率に分離されることから歯周疾患との関連性が疑われている.また, 口腔領域以外の種々の病巣から分離されそれぞれの疾患との関連性が推定されているが, 従来は純培養が困難であったことから, 研究が進まずT. tenaxが保有する病原因子は解明されていない.我々は, 病原性に関連する種々の生化学的性状を明らかにしてきている.今回は, 病原体に対する重要な防御因子である免疫グロブリン, すなわちIgG, IgM, IgAおよびSIgAの分解能について検討した.T. tenax細胞の滲出液は, IgGを著明に分解し, IgMは僅かに分解した.その両者の分解活性はDTTによって促進され, E-64によって著しく阻害されたが, EDTA, pepstatin AおよびAEBSFによっては影響を受けなかった.血清型IgAは, 完全に分解されためにDTTによる活性化は不明であるが, E-64によって活性が明らかに阻害された.以上の阻害剤および活性化剤の影響から判断して, IgG, IgMおよび血清型IgA分解は, T. tenaxが保有するシステインプロテアーゼによるものと考えられた.SIgAのSC成分は著しく分解され, その活性はEDTAおよびAEBSFによって阻害されたが, DTTおよびE-64によっては影響を受けなかった.このことから, SlgAのSC分解に関与する酵素は, IgG, IgMおよび血清型IgA分解に関与するものとは異なるプロテアーゼであることが推定できる.以上の結果から, T. tenaxは, 歯周ポケットや唾液中に存在する各クラスの免疫グロブリンを分解できることがわかった.
著者
吉村 和久 山本 綾子 中橋 孝博 西藤 清秀
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2004年度日本地球化学会第51回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.24, 2004 (Released:2007-02-23)

シリアのシルクロード最西端のオアシス都市パルミラにおいて地下墳墓から見出された多数の人骨と歯には、高フッ素症の兆候が認められた。冬季に地中海からの水蒸気がレバノン山脈に雨をもたらし、それが地下水となってパルミラで湧出しオアシスをつくる。乾燥地域であるパルミラでは、水の蒸発に伴い溶存成分が濃縮される。パルミラ地域のカナートと、湧泉、浅井戸、深井戸あわせて13の天然水試料について分析を行ったところ、この地域に石灰岩が分布するために、カルシウムイオン濃度が高かった。また、フッ化物イオン濃度は0.3から3.0 ppmであり、ホタル石の溶解平衡によりフッ化物イオン濃度が制御受けていることがわかった。今から約二千年前においても、古代パルミラの人たちは3.0 ppmを超えることはないが、高フッ素症が発症するようなフッ素高濃度の水を飲用としていたものと推定される。古代パルミラ人の歯のフッ素濃度についても議論する。