- 著者
-
貞升 健志
吉村 和久
- 出版者
- 国立保健医療科学院
- 雑誌
- 保健医療科学 (ISSN:13476459)
- 巻号頁・発行日
- vol.71, no.4, pp.314-323, 2022-10-31 (Released:2022-11-18)
- 参考文献数
- 25
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査は,全国の地方衛生研究所(地衛研)を中心に2020年 1 月末にほぼ整備された.当初は国立感染症研究所の病原体検出マニュアルに準じたコンベンショナルPCR法と塩基配列解析を組み合わせた核酸増幅検査法であったが,直ぐにリアルタイムPCR法による方法(感染研法)に変更となり,検査試薬も感染研から配布された. 3 月以降,民間検査機関での新型コロナウイルス検査が開始され,地衛研としても,民間検査機関における検査の立ち上げに協力した.その後,感染研法に変わる種々の検査試薬が厚生労働省で体外診断用医薬品として承認されるようになった.2020年12月には,感染力が強いSARS-CoV-2の変異株が出現した.WHOの懸念される変異株(Variants of Concern; VOC)に指定されたアルファ株等の変異株の同定や解析のために,地衛研においても,変異株スクリーニング検査やゲノム解析に関与することとなった.その後の流行は,変異株の変遷とともにあり,地衛研の業務としても,次世代シーケンサーによるゲノム解析や変異株サーベイランスが加わった.本稿では,地方衛生研究所での検査体制の構築から変異株に対する対応を含めて,この 3 年間の出来事を記述する.