著者
劔 陽子 山本 美江子 大河内 二郎 松田 晋哉
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.1117-1127, 2002 (Released:2015-12-07)
参考文献数
22

目的 アメリカにおける人工妊娠中絶に関する法律とその実際,10代の望まない妊娠対策などを調査することにより,わが国における10代の望まない妊娠対策の方向性を探る。方法 アメリカにおける中絶,家族計画などについて書かれた出版物,政府機関や主要 NGO 等が発行している文献・統計資料,ホームページから情報収集を行った。さらに,関係諸機関を訪問して現地調査を行った。成績 アメリカでは人工妊娠中絶の是非について,今だ中絶権擁護派と中絶反対派の間で議論が交わされており,社会的,政治的にも大きな問題となっている。こういった背景を受けて,中絶前後のカウンセリングや家族計画に関するカウンセリング,性教育などに重きがおかれていた。 10代の望まない妊娠対策の一環として,特に若者だけを集めるクリニックや,ヤングメンズクリニックなどの施設が設けられ,若者が性に関する情報や,安価もしくは無料の避妊具・避妊薬を入手しやすい状況にあった。結論 アメリカにおいては,中絶権擁護派と中絶反対派では人工妊娠中絶に対する考え方が異なっており,10代の望まない妊娠対策に対しても統一された方法はなく,さまざまな方法論がとられている。しかしアメリカにおける10代の妊娠率,人工妊娠中絶率は低下傾向にある。10代の性行動の活発化や人工妊娠中絶率の増加が危惧されるわが国において,今後10代の望まない対策を打ち立てていくとき,こういったアメリカで既に取り組まれている対策に学ぶべき点は多いと思われる。
著者
劔 陽子 山本 美江子 松田 晋哉
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.664-672, 2002-01-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

Objectives: The purpose of this study was to clarify the actual sexual behavior and attitudes of high school students in Kitakyushu city, Fukuoka and then to develop effective sex education methods for high school students in this region.Methods: This study investigated the sexual behavior and attitudes of 1, 297 high school students in Kitakyushu by self-administered questionnaire. The differences in their answers by sex, prevalence of sexual intercourse and change in sexual behavior and attitude before and after the sex education lecture were examined.Result: 39.3% of the students had had sexual intercourse and 74.1% answered that they might have sex, if it were with a partner whom they loved. However, they did not have enough knowledge about contraception and sexually transmitted diseases. This result shows that they did not recognize the risks accompanying sexual intercourse.There are significant differences between male and female students in their sexual attitudes. Male students tend to permit premarital sexual intercourse, unfaithfulness, prostitution, hiring a prostitute and abortion. Male students tend to give more approval to the following opinions: both men and women should agree to sexual contact if the partner wants it; men should take the initiative in sexual contact; women should not talk about sex. Many female students answered that women should make their own decisions to have or not to have sex, however a considerable number of female students answered that for their first intercourse, they just agreed with their partner even though they really did not want to do so.After the sex education lecture, the students have more knowledge about contraception and STDs. However, there is no significant difference in their sexual attitudes before and after the lecture.Conclusion: In order to facilitate more desirable and safer sexual behavior among the younger generation, it is not enough to simply give them knowledge about contraception or STDs, etc. To organize more comprehensive sex education, it is also important to pay enough attention to gender problems and other social factors such as family background or regional background, etc.
著者
劔 陽子 山本 美江子 大河内 二郎 松田 晋哉
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.1117-1127, 2002-10-15
参考文献数
22
被引用文献数
3

<b>目的</b> アメリカにおける人工妊娠中絶に関する法律とその実際,10代の望まない妊娠対策などを調査することにより,わが国における10代の望まない妊娠対策の方向性を探る。<br/><b>方法</b> アメリカにおける中絶,家族計画などについて書かれた出版物,政府機関や主要 NGO 等が発行している文献・統計資料,ホームページから情報収集を行った。さらに,関係諸機関を訪問して現地調査を行った。<br/><b>成績</b> アメリカでは人工妊娠中絶の是非について,今だ中絶権擁護派と中絶反対派の間で議論が交わされており,社会的,政治的にも大きな問題となっている。こういった背景を受けて,中絶前後のカウンセリングや家族計画に関するカウンセリング,性教育などに重きがおかれていた。<br/> 10代の望まない妊娠対策の一環として,特に若者だけを集めるクリニックや,ヤングメンズクリニックなどの施設が設けられ,若者が性に関する情報や,安価もしくは無料の避妊具・避妊薬を入手しやすい状況にあった。<br/><b>結論</b> アメリカにおいては,中絶権擁護派と中絶反対派では人工妊娠中絶に対する考え方が異なっており,10代の望まない妊娠対策に対しても統一された方法はなく,さまざまな方法論がとられている。しかしアメリカにおける10代の妊娠率,人工妊娠中絶率は低下傾向にある。10代の性行動の活発化や人工妊娠中絶率の増加が危惧されるわが国において,今後10代の望まない対策を打ち立てていくとき,こういったアメリカで既に取り組まれている対策に学ぶべき点は多いと思われる。
著者
劔 陽子 山本 美江子 松田 晋哉
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.257-269, 2002-09-01
被引用文献数
1

中学・高校生に対し効果的な性教育を行うこと,継続的にピア・エデュケーションを実施することとともに,医学生がヘルスプロモーションに関する実践能力を修得することを目的として,毎年産業医科大学医学部で行われる公衆衛生学の学外実習の機会を利用した,ピア・エデュケーションによる性教育を実施した.事前アンケート結果に基づいて,中学・高校においてピア・エデュケーションを計画・実施した.事後アンケートでは高校生,中学生の90%以上が大学生のカウンセラーと話すことに「興味が持てた」「まあまあ興味が持てた」と肯定的に答えていた.大学生からは,ヘルスプロモーションの技法の修得や自己効力感の増大を示唆するような感想が寄せられた.今後は毎年行われる学外実習の機会を利用することで,継続的にピア・エデュケーションによる性教育を行っていき,行動変容につながるかどうかなど,長期的な効果を見ていく必要がある.