- 著者
-
奥村 健児
山本 裕俊
- 出版者
- 特定非営利活動法人 日本小児外科学会
- 雑誌
- 日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.1, pp.33-39, 2018-02-20 (Released:2018-02-20)
- 参考文献数
- 23
【目的】無脾症候群および多脾症候群(以下本疾患群)は,多様な心血管系の奇形を合併することが多く重症度が高い疾患である.腹腔内臓器の奇形など小児外科疾患を合併することも多い.今回我々は当院で経験した本疾患群における小児外科疾患の治療戦略について検討した.【方法】2000年から2015年に当院で経験した44例(無脾症候群32例,多脾症候群12例)について,在胎週数,出生体重,合併心疾患,小児外科疾患と予後について後方視的に検討した.【結果】無脾症候群は全例心奇形を合併しており,単心室が28例(87.5%)で最多であった.小児外科疾患は14例(43.8%)に合併しており,腸回転異常症2例,胃軸捻転3例(1例に腸回転異常症合併),壊死性腸炎1例,先天性十二指腸閉鎖症1例,腸回転異常症を伴う食道裂孔ヘルニア1例の計8例に手術を施行した.多脾症候群も全例に心奇形を合併しており,下大静脈欠損が6例(50%)で最多であった.小児外科疾患は1例(8.3%)に腸回転異常症と先天性十二指腸閉鎖症を合併しており,手術を施行した.最終的な予後は無脾症候群が生存率46.9%,多脾症候群が75%であった.小児外科疾患が予後に関連したと考えられる症例は中腸軸捻転症合併の1例のみであった.【結論】本疾患群は重症心奇形を合併することが多く予後の悪い疾患グループである.合併する小児外科疾患に関しては消化管検査が望ましい.予定手術の際の手術時期は,個々の心疾患の重症度および進行度に応じて慎重に検討する必要がある.