著者
山村 清隆 大熊 秀明 井上 靖秋
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CAS, 回路とシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.333, pp.43-48, 2003-09-22
被引用文献数
1

パス追跡回路は,「式を回路で記述する」という逆転的発想に基づく方法論である.すなわち,一般に非線形システムの数値解析ではシステム(例えば回路)を方程式で記述し,それに数値解法を適用するが,パス追跡回路の方法では数値解法の式を回路で記述し,それに回路シミュレーショタSPICEを適用する.それにより手軽でプログラミングのいらない数値解析を実現することができる.また,SPICEに搭載された様々な手法が数値解析の効率を大幅に向上させることが期待される.本稿では,ホモトピ一法(MathematicaやMATLABにはない機能)の公式を記述するパス追跡回路を,回路解析以外の問題,具体的には不動点問題,非線形境界値問題,線形計画問題(主双対内点法),非線形計画問題,通信路容量の計算問題などに応用する.これらは古くからのホモトピ一法の応用分野であると同時に,ホモトピ一法の大域的収束性が証明されている分野で,これにより応用数学やオペレーションズ・リサーチの分野に新しい方法論を導入できることが期待される.
著者
山村 清隆
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1997, pp.533-534, 1997-03-06
被引用文献数
1

今回, パネル討論「ポストSPICEシミュレータ」のパネリストとしてご指名頂いたが, 光栄に思う反面, 何を話したらよいのか大変困惑してしまった. というのも, 私自身は企業の設計現場に身を置いたことがなく, 大学という環境下で新しい数値解法の開発を楽しんでいる, どちらかというと理論派の研究者のひとりだからである. シミュレータの中の数値解法には関心をもっているが、仕事としてシミュレータを使ったことは一度もない. そのため無知ゆえの思い込みや偏見が入ることを最初にお詫び申し上げたい. 回路は基本的に非線形であり, 非線形は理論と実用の間に大きなギャップの存在する世界である. 理論的に優れたものが実用に結びつくとは限らないし, 理論なしの対処療法だけでは新しいものを産み出すことは不可能である. この両輪のバランスなり架け橋なりが重要な役割を果たす世界と考えてよいだろう. 特にポストSPICEというからには, 新しい理論の導入とそれを実用に結びつける強力な推進力ならびに架け橋が必要となる. 私は大学院時代はあまり実用を意識しない基礎的な研究を行っていたが, 恩師からのたび重なるアドバイスにより, 次第に実用化されるところまでやりたいという意識が強くなっていった. 幸いなことにこの10年間, 企業で実際にLSIの設計に携わっている方々との交流から貴重な刺激を受け, 様々な協力者のお蔭で実用化に成功した研究に接することができた. 本稿では, 理論が実用に結び付いたいくつかの事例と体験談を私が直接 接してきた範囲で紹介し, あわせて大学の立場からポストSPICEに対する雑感を述べさせて頂く.
著者
山村 清隆
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.88, no.12, pp.981-988, 2005-12-01
被引用文献数
7

SPICE指向型数値解析法は「式を回路で記述する」という逆転的発想に基づく方法論である.すなわち, 一般に非線形システムの数値解析ではシステム(例えば回路)を方程式で記述し, それに数値解法を適用するが, この方法では数値解法の式を回路で記述し, それに回路シミュレータSPICEを適用する.本稿では, 非線形方程式の数値解法であるホモトピー法をSPICE上で実現する方法とその応用例を中心に, SPICE指向型数値解析法に関する最近の研究動向とその可能性について解説する.SPICEは様々な機能や効率化手法が集積されている非常に優れたソフトウェアであるため, この方法により「かなり高度なホモトピー法を」, 「ホモトピー法のことをよく知らなくても」, 「複雑なプログラミングを行うことなく」, 「手軽に」, 「無料で」, 「広範囲の問題に」適用することができる.