著者
山森 靖人 Yasuhito Yamamori
出版者
関西外国語大学・関西外国大学短期大学部
雑誌
関西外国語大学研究論集 (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
no.105, pp.127-141, 2017-03

本稿は『関西外国語大学研究論集』第101号に掲載された「ウィチョール族民芸品販売の現状と問題」の続編である。先の拙稿では、1 )ウィチョールの民芸品販売がメキシコ各地に拡散していること、2 )その拡散は非ウィチョールが主導していること、3 )ウィチョールによる民芸品販売は主に彼らの居住地に隣接する都市部や首都に展開する屋台や民芸品市場に限定されること、4 )民芸品販売がウィチョールの生業になり得ないことを考察した。ウィチョールの「伝統的」な生業はとうもろこしの農耕である。しかし、ナヤリ山地に定住する以前、彼らは農耕民ではなく、狩猟採集民であったと推測されている。この生業の変化を踏まえて、ウィチョールの民芸品販売に潜む狩猟採集民的な特質を解明し、貨幣経済に順応するための民芸品販売が、彼らの生業となり得ない理由を議論する。
著者
山森 靖人
出版者
関西外国語大学
雑誌
研究論集 (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.121-138, 2015-03

1960年代、ウィチョール族(huichol)のシャーマンが描くサイケデリックな「抽象画」の芸術性が認知され、それと同調し、ウィチョール族民芸品の製作販売が始まる。現在、民芸品の製作販売は、彼らの重要な現金収入源となった印象を受ける。 しかし、Torres Contreras は、ウィチョール族の生産活動についての研究は少ないと指摘する(33)。彼らの民芸品についても、その概説やそこに表出された彼らの世界観を紹介・解説する著作は散見されるが、製作販売の現状に関する調査研究はほとんど行われていない。NahmadSittón による1970年代の状況に関する論考が見られるだけである(150-157)。 本稿では、現地調査により収集した情報に基づき、ウィチョール族の民芸品販売の現状を報告する。さらに、ウィチョール族にとって、現在の民芸品販売の「流行」がどのような意味をもつものであるのかを考察する。