著者
萩原 健一 山河 芳夫 花田 賢太郎
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.155-166, 2009-12-24 (Released:2010-07-03)
参考文献数
106
被引用文献数
2 3

プリオン病(伝達性海綿状脳症)は,生前の確定診断法・治療法が確立していない致死性神経変性疾患である.ヒトの場合,1)全体の8~9割を占める孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD),2)プリオン蛋白質の遺伝子変異による家族性プリオン病,3)病原体プリオンに汚染された医療用具,生物製剤あるいは食物を介した感染を原因とするプリオン病,が知られている.中枢神経系に蓄積する異常型プリオン蛋白質(PrPSc)は病原体と等価であると考えられており,感染型プリオン病患者に由来するPrPScのみならず,孤発性/家族性患者のPrPScも基本的に感染性をもつ.ウシ海綿状脳症(BSE)プリオンの経口摂取が原因の変異型CJD(vCJD)は1996年に英国で確認されて以来,世界で215名の患者が発生している(2009年9月現在,英国NCJDSUデータ).孤発性CJDと異なり,vCJDでは脾臓や扁桃にもPrPScが検出される.このことから,潜伏期のvCJD患者がドナーとなる輸血の安全性が以前から議論されていたが,輸血が原因と疑われる2次感染が英国で5例確認された.本稿では,感染症としてのプリオン病を再考察する.
著者
鈴木 和男 大川原 明子 佐々木 次雄 山河 芳夫
出版者
国立予防衛生研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、半月体形成腎炎(CRGN)などの自己免疫疾患において、最近、正常時はほとんど血中に認められない好中球の顆粒酵素のMPOが自己抗原となり抗MPO自己抗体(ANCA)が血中に増加することが問題となっている。これらの疾患において、血中MPO活性と抗MPO抗体との相関関係についてわれわれはすでに報告してしてきている。特に、病初期の血中MPO活性は高値を示し、急性炎症像に類似している。自己免疫疾患の発症機序を明らかにするために、自己抗原となるMPOの蛋白質、活性とその抗MPO自己抗体の3者の測定系を確率する必要があった。昨年度までに、ウエスタンブロットにより半月体形成腎炎の患者血清は、MPOの59 kDaの長鎖と反応し、Endoglycosidase-Hで糖を切断したところ抗MPO血清は強く反応したことから、抗MPO血清はMPOの59 kDaの長鎖の糖結合箇所付近が反応部位と推定した。そこで、本年度は、59kDaの長鎖をいくつかの部分のフラグメントに対応するリコンビナントMPOフラグメントを作成した。当初は、GSTとの融合蛋白質として作成したが、目的のサイズより小さく切断されたフラグメントのみが出来たので、Hisx6と結合したフラグメントとして作成することを試み、目的とするすサイズのリコンビナントMPOフラグメントを検出する。キレートカラムによりリコンビナントMPOフラグメントを精製し、抗ヒトMPO抗体および患者血清を用いウエスタンブロットにより反応することを確認した。