著者
花田 賢太郎 桶本 優子 齊藤 恭子 佐久間 智理
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

感染症対策に汎用されるVero細胞には複数の亜株が存在する。ゲノム比較解析から、同細胞亜株は二系統に大別できるが、内在性レトロウイルス挿入位置やI型インターフェロン遺伝子クラスターのホモ接合性欠失位置は亜株間で同一であることを明らかにした。黄熱ウイルス17Dレプリコンが持続複製するVero細胞を作製した他、WHOが主導するポリオ根絶計画に寄与すべく、ポリオウイルス増殖能のないVero細胞も作製した。ヒト肝がん由来 HuH-7細胞系統の亜株でC型肝炎ウイルス産生能が高いHuh7.5.1-8細胞についてウイルス学的な有用性を見出し、HuH-7細胞系統におけるRIG-I変異の実態も明らかにした。
著者
萩原 健一 山河 芳夫 花田 賢太郎
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.155-166, 2009-12-24 (Released:2010-07-03)
参考文献数
106
被引用文献数
2 3

プリオン病(伝達性海綿状脳症)は,生前の確定診断法・治療法が確立していない致死性神経変性疾患である.ヒトの場合,1)全体の8~9割を占める孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD),2)プリオン蛋白質の遺伝子変異による家族性プリオン病,3)病原体プリオンに汚染された医療用具,生物製剤あるいは食物を介した感染を原因とするプリオン病,が知られている.中枢神経系に蓄積する異常型プリオン蛋白質(PrPSc)は病原体と等価であると考えられており,感染型プリオン病患者に由来するPrPScのみならず,孤発性/家族性患者のPrPScも基本的に感染性をもつ.ウシ海綿状脳症(BSE)プリオンの経口摂取が原因の変異型CJD(vCJD)は1996年に英国で確認されて以来,世界で215名の患者が発生している(2009年9月現在,英国NCJDSUデータ).孤発性CJDと異なり,vCJDでは脾臓や扁桃にもPrPScが検出される.このことから,潜伏期のvCJD患者がドナーとなる輸血の安全性が以前から議論されていたが,輸血が原因と疑われる2次感染が英国で5例確認された.本稿では,感染症としてのプリオン病を再考察する.