著者
野崎 守英 桜井 進 山田 隆信 中村 春作 山泉 進 百川 敬仁 豊澤 一 清水 正之
出版者
中央大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1990

1)私たちが意を用いたのは、なるべく多く討論の機会をつくることだった。1990年と91年にかけて、都合6度の会合の機会をえたが、これは、互いに考えを深め合うのにきわめて有効だった。2)私たちは、参加者の間に3つのグループを作った。ナショナリズム・ティーム、ロマンティシズム・ティーム、フォークロア・ティームがそれである。この3つのあり方が、18・19世紀に日本及びヨーロッパ領域に生じた言説のあり方を分析するのに、恰好の視角である、と私たちは考えたのである。そこで、何人かの思想家の思想を取り上げ、次の点を解明するために分析を施した。詳細は、報告書によって見られたい。(1)、「国家」がわれわれの時代において、世界空間を分かつ中心的な枠になったのはなぜか。そして、そうなったことにどういう問題点があるか。ナショナリズムの問題ということになる。(2)、ロマンティシズムといわれる思想動向が、心の故郷を過去に見出だすというかたちで登場するのはなぜか。ロマン的な心性というものは、まさにこの時期を特徴づけるものにほかならないが、その心の向きがかたどられているのはどんなヴェクトルか。(3)、この時期、ある人びとは、自分らの原型になると見做しうる生活のかたちを過去に探る営みをすることになる。こうしたフォークロアに関心を示す心のあり方に潜んでいるのはどういう動向か。3)この探究のあとで、私たちは、現代の倫理問題をどう考えたらよいか、その下敷きとなる知見をうることができたと思っている。今後、探究をより深めて行きたい。
著者
山泉 進
出版者
明治大学大学史料委員会
雑誌
大学史紀要 (ISSN:13429965)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.8-81, 2009-03-30

山崎今朝弥が東京弁護士会に入会して弁護士活動を開始するのは、一九〇七(明治四〇)年五月である。ここでは、明治法律学校を卒業してから、アメリカへの留学、そして帰国、弁護士として活躍し始める時期を、山崎の「修行時代」として、その行動のあとをたどってみたい。西暦でいえば、一九〇一(明治三四)年から一九〇七(明治四〇)年までのほぼ七年間、年齢でいえば、満二四歳から三〇歳の時期である。おそらく、この時代に山崎の個性が確立した。いうまでもなく、山崎は優秀な成績で明治法律学校を卒業し、判検事登用試験と弁護士試験に合格し、短期間であれ司法官試補の経験があった。しかし、社会経験としては、いまだ十分なものがあったとは考えられない。