- 著者
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邨田 裕子
佐藤 浩
山田 一貴
今井 更衣子
川原村 加奈子
濱西 正三
廣瀬 雅哉
- 出版者
- 近畿産科婦人科学会
- 雑誌
- 産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
- 巻号頁・発行日
- vol.66, no.4, pp.367-375, 2014
重症母児間輸血症候群の3例について,転帰良好であった2例と,児が死亡した1例を報告し,予後に関与する要因等について検討した.症例1は29歳初産婦で,37週5日に2日前からの胎動消失,および胎児心拍モニタリングでサイナソイダルパターンと遅発一過性徐脈を認め,当院へ母体搬送された.緊急帝王切開術にて2962g,Apgar score 2点/5点(1分後/5分後)の男児を娩出した.児は血中ヘモグロビン(Hb)3.5g/dlで濃厚赤血球輸血などを行い,良好な転帰を得た.Kleihauer-Betke法(KB法)での母体血中胎児赤血球比率9%から推定出血量409ml,血液喪失率(失血量/胎児全血量)110.6%と算出した.症例2は,34歳の4回経産婦で,妊娠35週6日に前日からの胎動減少,および胎児心拍モニタリングで基線細変動の減少と遅発一過性徐脈を認め,当院へ母体搬送された.胎児超音波所見で中大脳動脈収縮期最大血流速度(MCA-PSV)120.7cm/sec(2.36MoM),心拡大,心嚢液貯留を認め,帝王切開術にて2245g,Apgar score 2点/6点の女児を娩出した.児はHb2.8g/dlで濃厚赤血球輸血などを行い,良好な転帰を得た.胎児赤血球比率3.2%から推定出血量90ml,血液喪失率32.1%と算出した.症例3は28歳の1回経産婦で,妊娠33週より軽度胎児発育不全があり,妊娠35週6日に2,3日前からの胎動減少,および胎児心拍モニタリングでサイナソイダルパターンと基線細変動の減少を認め,当院へ母体搬送された.胎児MCA-PSVは95.1cm/sec(1.86MoM)で,帝王切開術にて2196g,Apgar score 4点/6点の女児を娩出した.児はHb2.8g/dlで,輸血,アシドーシス補正などの治療が施されたが,多臓器不全のため生後8日目に死亡した.胎児赤血球比率4.7%から推定出血量172ml,血液喪失率62.8%と算出した.各症例の臨床所見・検査結果の比較では,出生直後の児の血中LDH,CPK,D-ダイマーが症例の予後と関連する可能性があると思われた.〔産婦の進歩66(4):367-375,2014(平成26年10月)〕