著者
水野 友香子 上林 翔大 安田 美樹 増田 望穂 安堂 有希子 佐藤 浩 田口 奈緒 廣瀬 雅哉
出版者
一般社団法人 日本周産期・新生児医学会
雑誌
日本周産期・新生児医学会雑誌 (ISSN:1348964X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.176-180, 2022 (Released:2022-05-10)
参考文献数
8

死戦期帝王切開術(PMCD)は心肺停止(CPA)妊婦の蘇生を助ける手段であり,CPA後速やかなPMCDの施行が母体予後を改善すると考えられている.計画的硬膜外麻酔下無痛分娩中にCPAとなり当院へ搬送されPMCDを施行し,母児とも救命し得たので報告する.症例は34歳の初産婦,妊娠経過は順調であった.既往歴,アレルギー歴に特記すべき事項はなかった.妊娠39週2日に計画無痛分娩のため硬膜外麻酔下で分娩中にCPAとなり,心拍再開と心停止を繰り返しながら当院へ搬送されPMCDを施行した.子宮筋層縫合後も創部からの出血が持続したためガーゼパッキングとVacuum packing closure法を行い集中治療室に入室したが出血が持続し子宮腟上部切断術を行った.母体は分娩後22カ月の時点で,高次脳機能障害として短期記憶障害を残すが,その他の知的運動機能は正常である.児は,重症新生児仮死で出生し低体温療法を施行されたが,重度低酸素性虚血性脳症による重症心身障害のため人工換気継続中である.今回の経験を今後に生かせるよう,診療チーム間で検討を繰り返し,プロトコールの作成を行ったので紹介する.
著者
上田 優輔 廣瀬 雅哉 伊藤 拓馬 安本 晃司 川口 浩実 宗重 彰 中島 正敬
出版者
一般社団法人 日本超音波医学会
雑誌
超音波医学
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.593-597, 2016

妊娠中のuterine synechiaは,一般的に子宮腔を横切る索状構造物を同定することにより診断に至る.今回,妊娠中期に内子宮口付近に現れた嚢胞性病変を契機としてuterine synechiaと診断した症例を経験した.26歳の初産婦が,妊娠26週0日に初めて,経腟超音波検査上,68×44 mmの嚢胞性病変を内子宮口付近に認めた.妊娠30週5日のmagnetic resonance imagingで頭尾側が丸く中央がくびれた,ひょうたん型の羊水腔を認めた.上部の羊水腔に横位となった胎児を認め,子宮体部正中を前後に交通する索状構造物を認めた.上部の羊水腔から11×10×10 cmの球状の羊水腔が内子宮口に向かって膨隆していた.妊娠36週6日に臍帯が下部の羊水腔に下垂しているのが観察されたため,妊娠37週3日に選択的帝王切開術を施行し,3,062 gの女児をアプガースコア9/9(1分/5分)で娩出し,索状構造物も同時に摘出した.経腟超音波で内子宮口付近の嚢胞性病変を同定することは,uterine synechiaの診断の契機になり,これを正確に診断することにより妊娠中の合併症を防止することにつながるものと考えられた.
著者
信正 智輝 池田 真規子 黄 彩実 別宮 史子 白神 碧 松井 克憲 高石 侑 増田 望穂 松尾 精記 安堂 有希子 佐藤 浩 田口 奈緒 廣瀬 雅哉
出版者
一般社団法人 日本周産期・新生児医学会
雑誌
日本周産期・新生児医学会雑誌 (ISSN:1348964X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.282-288, 2022 (Released:2022-09-09)
参考文献数
20

[目的]セプラフィルム®の帝王切開術における癒着防止効果を前方視的に検討した. [方法]初回帝王切開術を当科で施行し,今回2回目の帝王切開術を予定している症例を対象とした.臨床背景,癒着の程度,および母児の転帰をセプラフィルム®使用群と非使用群で比較検討した. [結果]初回,2回目とも当科で帝王切開術を施行した136例から,初回帝王切開術を妊娠32週未満に実施した14例と今回の帝王切開術で術中の癒着評価記録が行われなかった4例を除く118例を解析対象とした.解析対象の118例を初回帝王切開術時セプラフィルム®使用群(46例)と非使用群(72例)で比較検討した.セプラフィルム®使用群で大網-腹壁間,あるいは子宮-大網間に2度以上の癒着を有するものは有意に少なかった.執刀-児娩出時間,総手術時間,術中出血量,臍帯動脈血pHに差は認めなかった. [結論]セプラフィルム®による大網が関連する中等度以上の癒着を抑制する効果を認めたが,母児の臨床転帰に差は認めなかった.
著者
上田 優輔 廣瀬 雅哉 伊藤 拓馬 安本 晃司 川口 浩実 宗重 彰 中島 正敬
出版者
公益社団法人 日本超音波医学会
雑誌
超音波医学 (ISSN:13461176)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.593-597, 2016 (Released:2016-07-19)
参考文献数
24

妊娠中のuterine synechiaは,一般的に子宮腔を横切る索状構造物を同定することにより診断に至る.今回,妊娠中期に内子宮口付近に現れた嚢胞性病変を契機としてuterine synechiaと診断した症例を経験した.26歳の初産婦が,妊娠26週0日に初めて,経腟超音波検査上,68×44 mmの嚢胞性病変を内子宮口付近に認めた.妊娠30週5日のmagnetic resonance imagingで頭尾側が丸く中央がくびれた,ひょうたん型の羊水腔を認めた.上部の羊水腔に横位となった胎児を認め,子宮体部正中を前後に交通する索状構造物を認めた.上部の羊水腔から11×10×10 cmの球状の羊水腔が内子宮口に向かって膨隆していた.妊娠36週6日に臍帯が下部の羊水腔に下垂しているのが観察されたため,妊娠37週3日に選択的帝王切開術を施行し,3,062 gの女児をアプガースコア9/9(1分/5分)で娩出し,索状構造物も同時に摘出した.経腟超音波で内子宮口付近の嚢胞性病変を同定することは,uterine synechiaの診断の契機になり,これを正確に診断することにより妊娠中の合併症を防止することにつながるものと考えられた.
著者
大仲 恵 越山 雅文 上田 匡 山西 優紀夫 浮田 真吾 菱川 賢志 奈倉 道和 金 共子 廣瀬 雅哉 小笹 宏
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.88-93, 2011 (Released:2011-06-27)
参考文献数
9

taxane系薬剤2剤にてアナフィラキシー(薬剤有害事象grade3~4)が出た2例を報告する.症例1は63歳の卵巣癌IIIc期.卵巣癌の手術後,paclitaxel-carboplatin (TC) 療法としてpaclitaxelの2回目投与を行った際,開始4分で血圧低下・呼吸困難・意識消失(有害事象grade4) が出現したため,気道を確保しながら酸素投与を開始すると同時に,コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウムの急速点滴,エピネフリンの反復投与の治療を行った.48分後には意識は回復し,呼吸症状・血圧も平常値に戻った.TC療法は中止とし,後にcyclophosphamide-adriamycin-cisplatin (CAP)療法(4コース),cisplatin/irinotecan療法(2コース)を施行した.さらに,docetaxel-carboplatin (DC)療法としてdocetaxelを投与したが,投与開始5分後に呼吸困難(有害事象grade3) が出現したため中止となった.症例2は42歳の卵巣癌IIIc期.術後,初回のpaclitaxel投与開始3分後に呼吸症状(有害事象grade2) が発症し中止となった.その後docetaxelを投与したが,やはり投与開始後5分に重度の呼吸困難(有害事象grade3)が出現したが同様の応急処置で軽快した.paclitaxel投与にて薬剤過敏症状が出現した患者に対してdocetaxelを投与する場合には,同様の過敏症再発を念頭に慎重な管理が必要であると考えられた.〔産婦の進歩63(2):88-93,2011(平成23年5月)〕
著者
後藤 栄 横井 崇子 高倉 賢二 廣瀬 雅哉 木村 俊雄 竹林 浩一 秋山 稔 中西 桂子 布留川 浩之 野田 洋一
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1-5, 2000-01-01 (Released:2010-09-27)
参考文献数
10

正常排卵周期を有する不妊症患者に対する排卵誘発の有効性について検討した.1998年1月から12月の12ヵ月間に不妊治療あるいは指導を受けた185婦人のうち,排卵障害を伴わない131症例を対象とした.中枢性無月経,多嚢胞卵巣症候群,早発卵巣不全,高プロラクチン血症および稀発月経や頻発月経など月経異常を有するものは排卵障害を有する症例として本解析から除外した.両側卵管閉鎖,無精子症などの絶対不妊も除外症例とした.各不妊原因に対する治療を行うとともに,初診後3ヵ月間の待機期間を経ても妊娠に至らない症例に対して,1司意を得たうえでクロミフェン,シクロフェニル,hMG(FSH)+hCGを単独または併用した排卵誘発を行い,各種排卵誘発法の周期あたりの妊娠率を,自然排卵周期(自然周期)における妊娠率と後方視的に比較検討した.排卵障害を有さない131症例において,1998年1月から12月の間に妊娠が確認されたのは33周期であった.このうち排卵誘発により妊娠に至ったのは23周期であった.自然周期における妊娠は10周期で,このうち初診後3ヵ月以内に妊娠に至った周期は7周期であった.初診後3ヵ月間の待機期間を過ぎた症例では,IVF-ET周期を除く排卵誘発周期では周期あたりの'妊娠率は4.3%(16/374)であり,自然周期での妊娠率の1.1%(3/284)と比較して有意に高率であった.排卵誘発法別の妊娠率はhMGを含む周期,シクロフェニルを含む周期ではそれぞれ6.7%(4/60),4.4%(5/114)であり,自然周期より有意に高率であった,しかしクロミフェンを含む周期の妊娠率は3.3%(7/209)であり,自然周期と有意差を認めなかった.自然排卵周期を有する不妊症患者に対し,シクロフェニルまたはゴナドトロピンによる排卵誘発法は有効な方法と考えられたが,クロミフェンの有効性は認めなかった.〔産婦の進歩52(1);1~5,2000(平成12年1月)〕
著者
邨田 裕子 佐藤 浩 山田 一貴 今井 更衣子 川原村 加奈子 濱西 正三 廣瀬 雅哉
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.367-375, 2014

重症母児間輸血症候群の3例について,転帰良好であった2例と,児が死亡した1例を報告し,予後に関与する要因等について検討した.症例1は29歳初産婦で,37週5日に2日前からの胎動消失,および胎児心拍モニタリングでサイナソイダルパターンと遅発一過性徐脈を認め,当院へ母体搬送された.緊急帝王切開術にて2962g,Apgar score 2点/5点(1分後/5分後)の男児を娩出した.児は血中ヘモグロビン(Hb)3.5g/dlで濃厚赤血球輸血などを行い,良好な転帰を得た.Kleihauer-Betke法(KB法)での母体血中胎児赤血球比率9%から推定出血量409ml,血液喪失率(失血量/胎児全血量)110.6%と算出した.症例2は,34歳の4回経産婦で,妊娠35週6日に前日からの胎動減少,および胎児心拍モニタリングで基線細変動の減少と遅発一過性徐脈を認め,当院へ母体搬送された.胎児超音波所見で中大脳動脈収縮期最大血流速度(MCA-PSV)120.7cm/sec(2.36MoM),心拡大,心嚢液貯留を認め,帝王切開術にて2245g,Apgar score 2点/6点の女児を娩出した.児はHb2.8g/dlで濃厚赤血球輸血などを行い,良好な転帰を得た.胎児赤血球比率3.2%から推定出血量90ml,血液喪失率32.1%と算出した.症例3は28歳の1回経産婦で,妊娠33週より軽度胎児発育不全があり,妊娠35週6日に2,3日前からの胎動減少,および胎児心拍モニタリングでサイナソイダルパターンと基線細変動の減少を認め,当院へ母体搬送された.胎児MCA-PSVは95.1cm/sec(1.86MoM)で,帝王切開術にて2196g,Apgar score 4点/6点の女児を娩出した.児はHb2.8g/dlで,輸血,アシドーシス補正などの治療が施されたが,多臓器不全のため生後8日目に死亡した.胎児赤血球比率4.7%から推定出血量172ml,血液喪失率62.8%と算出した.各症例の臨床所見・検査結果の比較では,出生直後の児の血中LDH,CPK,D-ダイマーが症例の予後と関連する可能性があると思われた.〔産婦の進歩66(4):367-375,2014(平成26年10月)〕