著者
山田 偉雄 腰原 達雄
出版者
東京昆蟲學會
雑誌
昆蟲
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.104-110, 1980

コナガの合成性フェロモンZ11-16 : Ald, Z11-16 : OAcおよびその関連化合物Z11-16 : OHのネギコガ雄成虫に対する誘引活性について, ゴムキャップを保持体として, コナガのそれと比較検討し, 次の結果を得た.1.Z11-16 : AldおよびZ11-16 : OAcの混合物は, コナガ雄成虫に対するよりは弱いもののネギコガ雄成虫に対しても性誘引活性を現わした.比較的顕著な活性を示す混合比は, コナガ雄成虫に対するのとほぼ同じく, およそ5 : 5であった.2.コナガおよびネギコガに対する, Z11-16 : AldおよびZ11-16 : OAc混合物の性誘引活性は, Z11-16 : OHの添加によって高まり, 前者に対しては1%相当量を, 後者に対しては10%量を添加のときに最も強い活性が現われた.コナガよりもネギコガで, Z11-16 : OHの共力効果が著しく, しかもZ11-16 : OHの添加割合が多いときに共力効果の高い傾向のみられることが特徴的であった.3.混合比5 : 5のZ11-16 : Ald, Z11-16 : OAcに, その1%および10%量のZ11-16 : OHを添加した混合物の性誘引活性は, コナガでは, 季節によって変化し, 夏季にはZ11-16 : Ald, Z11-16 : OAcの総量で0.01-0.1mg, 冬季には0.1-1mgの低濃度域のときに最も強く現われた.一方, ネギコガでは, 夏, 冬とも1-10mgの高濃度域で安定して活性が最も強く, 対照的であった.4.コナガの合成性フェロモンZ11-16 : Ald, Z11-16 : OAcおよびその関連化合物Z11-16 : OHは, 混合比を5 : 5 : 1とし, その1mgをゴムキャップに含浸させてトラップの誘引源とすると, 四季を通じて, ネギコガの発生調査に使用できることがわかった.
著者
梅谷 献二 山田 偉雄
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.19-24, 1973-03-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
11
被引用文献数
27 28

コナガPlutella xylostella (L.)は日本全国に分布しているが,北日本における越冬の可否については確かめられていない。一方,本種は欧米においては長距離移動昆虫としてよく知られ,日本においても太平洋上の定点観測船上で採集された例がある。このことから,日本の個体群にも移動による他国との交流や,本州から北海道に及ぶような移動が行なわれている可能性を残す。これを確かめるひとつの手段として,札幌,平塚,鹿児島の各地およびインドネシア・ジャワ島Malang地方(Batu村)産の個体群を用い,温度と発育期間の関係について実験し,地理的な分化があるかどうかを調査した。温度と卵から羽化に至る発育速度の回帰から,発育零点を算出した結果,最も高かったのは平塚個体群の9.5°Cで,ジャワ島Malang(8.6°C)がこれにつぎ,鹿児島と札幌の個体群はそれぞれ7.5°C, 7.4°Cと低い値を示した。しかし,1世代の有効積算温量ではこれと全く逆に札幌個体群が313日度と最も多く,鹿児島(294日度),ジャワ島Malang(250日度)がこれにつぎ,平塚個体群の229日度が最も低い値であった。このような発育零点と有効積算温量の間には負の相関関係(r=-0.978**)が認められた。温度-発育速度の回帰について,2地点ずつ共分散分析法によって比較した結果,平塚個体群は札幌および鹿児島のそれに対して,回帰係数(b)が有意に大きいこと,および札幌-Malangの個体群間では回帰直線の高さ(a)において異なっていることがわかったが,その他の組み合わせではいずれも相互の回帰に有意差が認められなかった。したがってコナガの個体群のこれらの生理的特性にわずかながら地理的な分化があるように思われる。しかし,その変動の原因については推論することはできなかった。
著者
山田 偉雄
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.8-11, 1979-03-31 (Released:2012-10-29)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

ベニフキノメイガの発育と温度および日長との関係について調査を行なった.1. 幼虫は4令を経過し, 23℃恒温条件下においては約2週間で蠕化した.2. 卵, 幼虫および蜻期の発育零点は, それぞれ10.9, 12.7および12.9℃と推定された. 発育有効積算温量は, それぞれ51, 156および89日度となり, 産卵から成虫羽化に至るまでの発育零点はほぼ12℃で, 発育有効積算温量は約295日度と算出された. 成虫の産卵前期間における発育有効積算温量は約328日度と推定された.3. 幼虫は, 短日条件によって4令期に休眠した. 休眠誘起の臨界日長は13~14時間であった.4. 雌雄成虫の寿命は, 23℃条件下でともに10日前後, 産卵数は1雌当り約180卵で, 羽化の5日後に産卵のピークがみられた.5. 本種は, 東海地方では, 1年に3~4世代を経過していることが推定された.
著者
腰原 達雄 山田 偉雄
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.110-114, 1976-06-25
被引用文献数
4 13

1. 小型プラスチック容器を用い,ナタネの芽ばえを飼料とするコナガ幼虫の簡便な飼育法を考案確立した。この方法による継代飼育も可能である。<br>2. 幼虫は芽ばえの子葉,茎を摂食し発育を遂げた。発育は良好で,ナタネ芽ばえ(種子重7g)を収容した容器の幼虫飼育密度を100頭とした場合,蛹化率は高く90%以上にも達した。幼虫発育速度,蛹重,蛹から羽化した成虫の産卵数は,キャベツ葉で生育したものと同等であった。<br>3. 7gのナタネ種子を用い,発芽直後の芽ばえに成虫3対を2∼3日間放飼,産卵させ,幼虫を飼育すると,25°C恒温条件下で成虫放飼約15日後には蛹化がほぼ終了し,約100頭の蛹を得ることができた。<br>4. 飼料の芽ばえは更新することなく幼虫を飼育できた。蛹化は,幼虫発育終了間ぎわに容器内に挿入した,波形に折目をつけたろ紙片下面で大部分が行なわれ,蛹を容易に採集できた。