著者
山田 哲弘
出版者
Japan Thermosetting Plastics Industry Association
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.344-354, 2009

オリゴロイシン基を導入した両親媒性化合物を用い,その化合物が形成する超分子フィルムの物性を,加圧や熱処理によって向上させた事例を示した。この分子は,自己組織化してβ-シート構造を形成すると,隣り合うシートの間でロイシン側鎖の噛み合いが可能になる。そこで,気水界面に展開した分子を凝縮したり,油圧プレス機を用いてキセロゲルを力学的に加圧したりすると,β-シート同士を接着できることがわかった。この噛み合いは分子ジッパーの一種で,ここではロイシンファスナーと呼ぶことにする。ロイシンファスナーは,π-A 曲線に現れる一時的な表面圧の増加や,原子間力顕微鏡(AFM)による表面形態観察の結果から間接的に判断できるが,ロイシンファスナー形成が推測されるフィルムのMAIRS解析を行うと,メチル基の非対称伸縮振動に帰属される吸収帯(ν<sub>as</sub>CH<sub>3</sub>)の一部が 2955cm<sup>-1 </sup>付近から2985cm<sup>-1 </sup>にまでシフトすることがわかり,これが直接的な検出手段になることを明らかにした。また,ロイシンファスナーが形成されると引っ張り応力が増加し,ヘキサロイシン基を有する化合物で最大2.5MPaの応力が得られた。加圧によって向上する性質は引っ張り応力だけではなく,柔軟性の向上という点にもあらわれ,ロイシンファスナーが形成されたフィルムは折り曲げても割れることのない柔軟性を持つようになることもわかった。
著者
竹内 健 山田 哲弘 鈴木 康夫
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.7, pp.1244-1250, 2015-07-05 (Released:2015-07-05)
参考文献数
25

クローン病は慢性炎症性腸疾患であり,病変は肛門病変を含め消化管に非連続性に発生する.若年者に多く発症し,経過も長いことから反復して画像検査を行う必要がある.生物学的製剤などが導入され治療方法が多様化することにより,病態把握のためにより詳細な画像評価が求められているが,被検者の身体的負担もできる限り軽減する必要がある.CT enterographyは腹部~骨盤部を一度に俯瞰できるだけではなく,腸管壁や腸管外病変も評価でき,空間・時間分解能の高い横断的画像検査方法としてクローン病の診断に非常に有用である.一方,X線被曝の低減化のためには,低線量CT導入や厳密な適応判断が求められる.