著者
津田 祥平 中川 佳織 大山 俊幸 高橋 昭雄 岡部 義昭 香川 博之 山田 真治 岡部 洋治
出版者
Japan Thermosetting Plastics Industry Association
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.75-83, 2010
被引用文献数
1

相分離変換システム法により,天然リグニンから精密な分子設計の下に誘導されるリグニン系新素材であるバイオマス由来リグノフェノールのエポキシ樹脂硬化剤への適用可能性を検討した。エポキシ樹脂としてビスフェノールA ジグリシジルエーテル(DGEBA),硬化剤としてリグノフェノール(LP),硬化促進剤として1- シアノエチル-2- エチル-4- メチルイミダゾール(2E4MZ-CN)を用い,エポキシ基と水酸基の当量比を1:0.9 とした系において,硬化物のガラス転移温度が198℃を示し,石油由来のフェノールノボラック(PN)を硬化剤とした硬化物を約60℃上回った。さらに5% 熱重量減少温度も373℃と熱的に安定であった。FT IR 測定において,910cm<sup>-1 </sup>のエポキシ基由来の吸収帯が消失していることから,LP の水酸基がDGEBA のエポキシ基と十分に反応していることが観察された。また硬化物の動的粘弾性試験(DVA)から,PN 硬化物と比較して,室温での貯蔵弾性率の上昇,および架橋密度の上昇が観察された。以上の結果より,リグノフェノールはエポキシ樹脂の硬化剤として適用可能であり,最大で49% のリグノフェノールを含むエポキシ樹脂硬化物が作製できることが示された。
著者
山田 哲弘
出版者
Japan Thermosetting Plastics Industry Association
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.344-354, 2009

オリゴロイシン基を導入した両親媒性化合物を用い,その化合物が形成する超分子フィルムの物性を,加圧や熱処理によって向上させた事例を示した。この分子は,自己組織化してβ-シート構造を形成すると,隣り合うシートの間でロイシン側鎖の噛み合いが可能になる。そこで,気水界面に展開した分子を凝縮したり,油圧プレス機を用いてキセロゲルを力学的に加圧したりすると,β-シート同士を接着できることがわかった。この噛み合いは分子ジッパーの一種で,ここではロイシンファスナーと呼ぶことにする。ロイシンファスナーは,π-A 曲線に現れる一時的な表面圧の増加や,原子間力顕微鏡(AFM)による表面形態観察の結果から間接的に判断できるが,ロイシンファスナー形成が推測されるフィルムのMAIRS解析を行うと,メチル基の非対称伸縮振動に帰属される吸収帯(ν<sub>as</sub>CH<sub>3</sub>)の一部が 2955cm<sup>-1 </sup>付近から2985cm<sup>-1 </sup>にまでシフトすることがわかり,これが直接的な検出手段になることを明らかにした。また,ロイシンファスナーが形成されると引っ張り応力が増加し,ヘキサロイシン基を有する化合物で最大2.5MPaの応力が得られた。加圧によって向上する性質は引っ張り応力だけではなく,柔軟性の向上という点にもあらわれ,ロイシンファスナーが形成されたフィルムは折り曲げても割れることのない柔軟性を持つようになることもわかった。

2 0 0 0 BTレジン

著者
綾野 怜 岳 杜夫 永井 俊一
出版者
Japan Thermosetting Plastics Industry Association
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.23-36, 1984

BTレジンは1974年三菱瓦斯化学で発明された新しい耐熱性付加重合型熱硬化性樹脂であり, その成分は西独バイエル社が発明したトリアジン成分と, ビスマレイミド成分からなる。そして, 熱重合反応により合成されるBTレジンは, 分子内にイミド環を有するポリイミド樹脂の一種に分類される。このレジンは高耐熱で高摩耗性, 低誘電特性や耐マイグレーション性などの電気特性を有し, 且つすぐれた成形性, 作業性, 反応性及び低毒性などの特性を併せもつ極めてユニークな実用性の高い高性能材料である。このような諸特性が国内をはじめ海外に於いて高く評価され, 電子機器用プリント配線材料, 航空機用構造材料, 重電機器用絶縁材料, 粉体塗料, 成形材料, 電子部品用保護コーティング材など広範囲な分野で実用化が進められている。<BR>本稿では機能性材料の原料としてのシアネート基の反応性, BTレジンの製法, BTレジンの特性とその用途開発の現況について概説する。
著者
加門 隆
出版者
Japan Thermosetting Plastics Industry Association
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-9, 1989

高融点の粉体であるジアミノマレオニトリル (DAMN), そのN-アルキル誘導体およびその, schiff baseをエポキシ樹脂の潜在性硬化剤として検討した。<BR>これらの硬化剤をエポキシ樹脂に分散すると約2ケ月のポットライフがあり, 150℃以上に加熱すると円滑に硬化して, 良い硬化物が得られた。<BR>DAMNとそのN-アルキル誘導体では, エポキシ基1molに対して1/8molから1/3molまで配合量を変化させた硬化物のガラス転移温度 (Tg) と橋架け密度 (ρ<SUB> (E′) </SUB>) の最大は約1/6molのとき得られ, それぞれの硬化剤のアミン活性水素の数から予想される配合量とは異なるものであった。<BR>DAMNのSchiff baseによる硬化物は予想に反し, Tgが200℃と非常に高く, ρ<SUB> (E′) </SUB> も大きかった。しかし, ρ<SUB> (E′) </SUB> の最大値が得られる配合量は1/5molのときで, Tgの最高は1/4molの配合物で, 特異な結果であった。<BR>以上の結果のように, これらの硬化物の物性は一般のエポキシ樹脂の硬化物とは異なっているため, 硬化物の構造を解明することができなかった。