著者
山田 昌孝 片岡 佑作 田中 寧
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 社会科学系列 (ISSN:02879719)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.3-46, 2015-03

マーケティングにおける広告の重要性については言うまでもない。広告媒体には数多くのものがあるが、近年におけるweb 関連には特に注目してよい。そこで本論文では、動画CM の評価y を決定的にする考慮要素x(j) j=1,..., 6 は何か、という問題を視聴者へのアンケート結果(15 本のCM × 60 名の回答)をもとに、特に統計解析の立場から考える。具体的にy, x(j) は以下の形をとる。情緒的要素; x(1):演出 x(2):物語の分かり易さ x(3):キャラクターの適切さ認知的要素; x(4):商品適合度 x(5):購買意欲喚起度 x(6):ブランドへの好意 y=1 ... 動画CM に肯定的評価 0 ... 否定的評価 x(j)=1 ... y=1 を引き出す有効な考慮要素と考えられる 0 ... そうでない j=1,..., 6こうしたとき、(1)y, x(j) について2 × 2 等の分割表を作成すると、これらの変数y, x(j) の間には有意な関連があることが分かる。(2)分割表の結果を見ると、CM 評価肯定確率Pr(y=1) が考慮要素 x(j) j=1,..., 6 の部分和の増加関数になっている点が読み取れるので、これを説明する質的回帰モデル(従属変数の取りうる上下の範囲が限定される回帰)を導入し、そうした操作が極めて有効な点を示す。(3)対象の集団はy=1(肯定的評価)、y=0(否定的評価)を構成するものに区分されるが、それぞれの特性を決めるであろう考慮要素x(j) j=1,..., 6 の分布に違いはあるかをAnderson の判別関数によってつきとめる。(4)統計処理上のテクニカルな箇所について追加点を言えば、先行研究の広告評価、要素群は複数回のステップを経て合成される量的変数であり、導入された回帰モデルのフィットはあまり良くない。他方、ここで扱う考慮要素x(j) は0, 1 のみを取る簡単な質的変数であり、single index Σx(j) と評価肯定確率に関する分割表を注意深く点検したのち、Σx(j) によって広告評価を説明する質的回帰を見ると、その結果は評価−要素間の関係をうまく捉えているのが分かる(フィットは極めて良い)。 本稿の新規性と寄与はまさに以上のような点にある。特に(4)は考慮要素群を情緒的な成分x(j) j=1, 2, 3、認知的成分x(j) j=4, 5, 6 に分割した場合、それぞれの成分で、物語の分かり易さx(2)、商品適合度x(4) が動画CM 評価に最も貢献している点を示す。これらの結果は、企業のマーケティング部門に携わる広告担当者、あるいは広告の依頼を受ける動画CM 制作企業にとって有効な情報の1 つとなるであろう。
著者
山田 昌孝 長岡 敏彦
出版者
名古屋商科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

構成概念はその意味内容から傾性概念と理論的構成概念の二つに分類される。前者は観察された行動のラベルであり、後者は観察された行動の原因に関する情報(剰余意味)を含んだラベルである。消費者革新性もこの枠組みの範疇に入る。イノベーション採用行動の予測精度の向上を図るには、「理論‐傾性中間概念」を導入し、その測定スケールの開発の必要性を提唱した。本研究は、スケール開発に加えてイノベーション情報の乏しい状況にも対応できるよう「感度尺度」と「心の強い揺れ」という要因を加えてイノベーション採用意思決定過程の再構築を行った。共分散構造分析を用い、3つの採用事例を取り上げ、採用時期予測の向上に成功した。
著者
山田 昌孝
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では消費者の革新性とイノベーション採用行動の間に、「わっ、すごそう」などという採用行動の前に新しく「ポジティブな強い心の揺れ」という概念を導入し、「わくわく度」という尺度で測定する。採用に踏み切るためには、革新性がより高くさらに当該イノベーションにより強く心を動かされた消費者がより早く、高い確率で採用することを生存関数モデルを用いて実証し、理論的にも予測精度としても精緻化に成功している。