著者
關口 奈緒子 池永 雅一 池上 真理子 家出 清継 上田 正射 津田 雄二郎 中島 慎介 谷田 司 松山 仁 山田 晃正
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.830-835, 2020 (Released:2021-12-31)
参考文献数
21

症例は68歳,男性.自慰目的で肛門から瓜を挿入し,排出困難となり当院を受診した.腹部単純CTで16×7cm大の瓜を直腸RS付近に認め,腸管穿孔所見は認めなかった.摘出の際に腸管損傷の可能性を考え,全身麻酔下での摘出を試みた.全身麻酔下,砕石位で手術を開始した.肛門括約筋の弛緩は得られたが肛門内に異物は確認できず,下腹部圧排で瓜の頂部をわずかに確認できた.ミュゾー鉗子で把持を試みるも困難であり,子宮筋腫用のミオームボーラーを瓜に挿入し,下腹部の圧排と牽引で摘出を試みた.しかし,瓜は脆弱でミオームボーラー挿入部が砕けるため,別角度からもう1本挿入することで力を分散し脆弱性を補うことで腹部圧迫を併用し摘出に成功した.直腸異物は多種多様の異物が報告されており,摘出方法の工夫が必要である.今回直腸異物(瓜)に対して,異物の大きさと摘出器具の特徴を術前に綿密に確認することで安全に摘出しえた症例を経験した.
著者
板倉 弘明 山田 晃正 古妻 康之 松山 仁 遠藤 俊治 池永 雅一
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.81, no.8, pp.1445-1451, 2020 (Released:2021-02-26)
参考文献数
31

目的:われわれは,皮下埋没型中心静脈ポートをエコーガイド下に鎖骨下静脈または腋窩静脈を穿刺して留置してきたが,カテーテルの筋間断裂を経験し,小胸筋経由が一因と推察した.そこで,筋間断裂例の臨床的特徴を明らかにするために検討を行った.方法: 2013~2017年にCVポートを造設した269例(鎖骨下静脈または腋窩静脈穿刺)のうち,留置後にCTを撮像した199例を対象とした.筋間断裂群(4例)と非断裂群(195例)で患者背景因子と小胸筋経由の有無,刺入点,血管描出法などについて検討した.結果:単変量解析において,小胸筋経由例(P =0.002)と,穿刺部の皮下脂肪が厚い症例(P =0.002)が有意差をもって筋間断裂を多く認めた.考察:カテーテルの筋間断裂への小胸筋と皮下脂肪厚の関与が示唆された.小胸筋経由の回避には,橈側皮静脈の腋窩静脈への合流部より中枢側での穿刺が有用である.結論:カテーテル穿刺前の解剖把握が重要である.
著者
田口 大輔 上田 正射 池永 雅一 谷田 司 高 正浩 家出 清継 津田 雄二郎 中島 慎介 松山 仁 山田 晃正
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.133-137, 2021 (Released:2022-04-30)
参考文献数
21

症例は19歳,女性.右下腹部痛のため,近医を受診し,急性虫垂炎を疑われ当科へ紹介された.腹部単純X線像で右下腹部に高吸収陰影を認め,腹部単純CTで虫垂根部より1cm末梢側虫垂内の輪状の高吸収陰影と,その末梢側虫垂の腫大を認めた.虫垂結石を伴う急性虫垂炎を疑い,腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.切除標本内に14mm大の虫垂結石を認めた.術後経過は良好であり,術後2日目に退院した.虫垂結石を伴う急性虫垂炎は稀であり,穿孔や膿瘍形成のリスクが高く,重症化しやすいとされている.本症例は受診時の炎症は軽度であったが,虫垂結石を有すると考えられたことから早期に手術を行った.抗菌薬が発達した近年では保存的に軽快が得られる急性虫垂炎の症例も多いが,虫垂結石を伴う虫垂炎の場合は重症化のリスクが高く,積極的に手術を考慮する必要があると考えられる.
著者
武田 昂樹 中川 朋 山田 晃正 小西 健 奥山 正樹 西嶌 準一
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.1314-1319, 2015 (Released:2015-12-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1 3

症例は40歳台,男性.201X年2月,1週間来の腹痛と嘔吐の増悪を主訴に当院を受診.来院時,腹部全体の圧痛・反跳痛を認めた.腹部X線画像で上行結腸周囲に多数の点状石灰化像を認めた.小腸niveau像を認めたが,free airは認めなかった.腹部造影CT検査では,右結腸静脈の石灰化に加え,上行結腸の腸管壁の造影不良と壁肥厚を認めたため,腸管壊死と診断して,緊急開腹手術を行った.開腹時所見では,上行結腸から横行結腸の中央部に腸管壊死を認め,結腸部分切除を行った.病理検査では,粘膜面の潰瘍形成,静脈血管壁の石灰化と上行結腸粘膜下層の広範な線維化領域を認め,特発性腸間膜静脈硬化症による虚血性大腸炎と診断した.術後経過は良好で,術後16病日に退院となった.本症例は10年以上の漢方薬(梔子柏皮湯®)の服用歴があり,病因との関連性が示唆された.現在,漢方薬内服を中止して経過観察中である.
著者
佐藤 豪 池永 雅一 俊山 聖史 太田 勝也 上田 正射 板倉 弘明 津田 雄二郎 中島 慎介 遠藤 俊治 山田 晃正
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.38-42, 2019 (Released:2020-02-29)
参考文献数
20

症例は51歳,男性.開腹歴はなし.腹痛,嘔吐を主訴に当院救急外来を受診した.来院時,腹部は膨満し,臍下に間欠的自発痛と圧痛を認めた.前日の夕食にしゃぶしゃぶを食べていた.腹部単純X線検査では小腸ガスの貯留と鏡面像を認めた.腹部造影CTで絞扼所見を認めなかったため,胃管減圧チューブを留置して緊急入院した.翌朝,腸管拡張の改善がなかったためイレウス管を留置した.その後2日間経過観察したが,腹部症状の改善が乏しかったために緊急手術を施行した.拡張した腸管の先端で軟らかい腫瘤を触知し,腸を切開して摘出した.術後に再度問診を行い,入院前夜に大量に摂取した木耳(きくらげ)による食餌性イレウスと診断した.木耳による食餌性イレウスは本邦でこれまで報告がなく,若干の文献的考察を加えて報告する.