著者
池松 秀之 鍋島 篤子 角田 恭治 山路 浩三郎 林 純 後藤 修郎 岡 徹也 白井 洸 山家 滋 柏木 征三郎
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.1051-1058, 1997-10-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
18
被引用文献数
1

高齢者におけるインフルエンザワクチン接種時の, 前年度のワクチン接種の影響について検討した.福岡市内のH病院の65歳以上の入院患者163名に, 1993年12月にインフルエンザワクチン接種を行った. 163名中57名は, 1992年ワクチン未接種者 (未接種群) であった.106名は1992年ワクチン接種者で, 52名はCold-adapted vaccine接種者 (生ワク群), 54名は不活化ワクチン接種者 (不活化群) で, あった. 1993年ワクチン接種前後で, ワクチン株であるA/Yamagata (H1N1), A/Kitakyusyu (H3N2), B/Bangkok (B) に対する血清HI抗体価を測定した.1993年度ワクチン接種前の, H1N1, H3N2, Bに対するHI抗体価は, 前年度不活化群が, 生ワク群, 未接種群に比し高値であり, 前年度のワクチン接種のHI抗体価に対する残存は, 不活化群に顕著であった. 1993年度ワクチン接種後のHI抗体価は不活化群, 生ワク群が, 未接種群に比し高値であった. 1993年度接種前のHI抗体価は, 生ワク群では, 不活化群に比し低かったが, 接種後はそれと同等であり, インフルエンザ生ワクチンの細胞生免疫などに対する効果が示唆された. 不活化ワクチン接種後のHI抗体価が, 27以上の割合は, 不活化群, 生ワク群では, 未接種群に比し高率であった. 以上の成績より, 前年度インフルエンザワクチン接種は, 不活化ワクチン接種によるHI抗体価の上昇を抑制せず, むしろ促進することが期待され, 高齢者に対する継続的なインフルエンザワクチン接種の有用性が示唆された.
著者
池松 秀之 鍋島 篤子 山路 浩三郎 角田 恭治 李 文 林 純 後藤 修郎 岡 徹也 白井 洸 山家 滋 柏木 征三郎
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.72, no.9, pp.905-911, 1998-09-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

高齢者における不活化インフルエンザワクチンの連続接種の際の, ワクチン接種回数とワクチン効果との関連について, 血清HI抗体価より検討した.60歳以上の長期入院患者146名 (男性28名, 女性118名, 平均年齢82.4歳) に不活化インフルエンザワクチンを接種した.69名は前年度インフルエンザワクチンの接種を受けており, 77名は前年度未接種者であった.2年連続ワクチン接種者中, 35名が今回1回のみ, 34名が今回2回, ワクチン接種を受けた.接種前, 1回接種後, 2回接種後, 流行後のInfluenza A/H1N1, A/H3N2, 及びBに対する血清HI抗体価を測定した.各インフルエンザウイルスに対するワクチン接種前のHI抗体価は, 2年連続接種者が前年度未接種者より有意に高かった.ワクチン接種後のHI抗体価は, 2年連続接種者で今回2回接種を受けた群が最も高かったが, 3群間に統計学的な有意差は検出されなかった.ワクチン接種後に, HI抗体価の4倍以上の上昇が見られる率は, 2年連続接種者で低かったが, これはワクチン接種前のHI抗体価が高いためと考えられた.ワクチン接種後のHI抗体価128倍以上の割合は, 2年連続接種者で今回2回接種を受けた群が他の群より高かったが, 3群間に統計学的な有意差は認められなかった.2年連続接種者では, 2回目接種により, HI抗体価が128倍未満から128倍以上に上昇した者は認められなかった.以上の成績より, 高齢者では, 不活化インフルエンザワクチンに対する抗体反応は, 前年度接種の有無に係らず良好で, 連続接種の際には, 接種回数1回でも2回接種と同等の予防効果が期待できると考えられた.
著者
池松 秀之 鍋島 篤子 角田 恭治 山路 浩三郎 林 純 後藤 修郎 岡 徹也 白井 洸 山家 滋 柏木 征三郎
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.60-66, 1998-01-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
12
被引用文献数
4 4

高齢入院患者におけるインフルエンザ流行の影響とインフルエンザワクチンの予防効果について, 1995年インフルエンザ流行時について検討した.院内感染対策の一環として発熱患者の発生について継続調査を行っている対象病院において, 1994年と1995年の週間発熱患者発生数で, 1995年第3週と第8週の発熱件数が, 他の週に比し著しく上昇しており, インフルエンザ流行は発熱の原因として大きな因子であると考えられた.Aホンコン型, Aソ連型, B型のいずれか一つにでも罹患した患者は, 60歳以上のインフルエンザワクチン非接種者において, 48.7%と高率であった.インフルエンザウイルスに対する流行前のHI抗体価が, 32倍以下の入院患者には多数の罹患者が見られたが, 128倍以上の患者には, いずれの型のインフルエンザに関しても罹患者が見られなかった.発熱患者の発生頻度は, インフルエンザワクチン接種者86人では32.6%で, 非接種者123人における49.6%に比し表有意に低かった (p<0.05).9カ月間の調査で, インフルエンザワクチン接種者における死亡者は4例 (4.9%) で, 非接種者では12例 (9.8%) であった.以上の成績より, インフルエンザ流行は, 高齢者において重要な問題であり, インフルエンザワクチン接種は罹患予防に有効であると考えられた.インフルエンザワクチンには, 罹患予防効果と共に, 死亡予防効果も期待され, 高齢者には積極的に接種を行うべきであると思われた.
著者
池松 秀之 鍋島 篤子 山家 滋 山路 浩三郎 角田 恭治 上野 久美子 林 純 白井 洸 原 寛 柏木 征三郎
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.1259-1265, 1996-12-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
24
被引用文献数
5 4

高齢長期入院患者における発熱や死亡のハイリスクグループのマーカーを検索するために, 観察病院において1年以上入院した患者478名を対象として, 血清アルブミン値と発熱及び死亡との関連について検討を行なった.対象の平均血清アルブミン値は3.79g/dlで, 加齢と共に漸減傾向を示した.延べ504,189日の発熱の調査結果より得られた各患者の平均年間発熱回数と血清アルブミン値の関連は, 血清アルブミン値4.1g/dl以上の群の平均発熱回数が最も低く1.8回/年で, 血清アルブミン値の低下に従って段階的に上昇し, 3.0g/dl以下の血清アルブミン値著明低下患者では5.3回/年であった.年齢補正後の死亡率は, 血清アルブミン値3.0g/dl以下の群が40.4%で, 他の3群の13.0%~19.8%に比し著しく高率であった.血清アルブミン値3.0g/dl以下の群では死亡率はどの年齢層においても高率であったが, 他の3群においては, 80歳以上で死亡率が高かった.血清アルブミン値4.1g/dl以上の群をcontrol群として求めたrelativeriskは, 血清アルブミン値3.0g/dl以下の群では発熱で2.9, 死亡では2.0であった.以上の結果より, 血清アルブミン値は, 高齢期入院患者における, 発熱や, 1年後以降に生じる死亡の予測因子として有用であり, 特に血清アルブミン値3.0g/dl以下の患者は発熱, 死亡のハイリスクブループであると考えられた.