著者
澤田 聡子 苔口 進 宮本 学 澤田 弘一 藤本 千代 綿城 哲二 弘末 勝 清水 明美 周 幸華 栗原 英見 新井 英雄 高柴 正悟 村山 洋二
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.475-485, 1998-12-28
参考文献数
31
被引用文献数
4

DNAプローブを用いたコロニーハイブリグイゼーション法による細菌同定は,簡便性と定量性に優れ,病原性細菌の検出・同定法として用いられている。本研究では,歯周病細菌同定により特異性を持たせるために,この方法を応用して,近年,細菌の系統分類に用いられるようになった細菌16SリボソームRNA(rRNA)遺伝子をDNAプローブとして利用した。歯周病細菌のActinobacillus actinomycetemcomitans, Porphyromonas gingivalisおよびPrevotella intermediaの16S rRNA遺伝子塩基配列から菌種特異的な可変領域を検索し, DNAプローブを作成した。このDNAプローブの上記3菌種16S rRNAに対する特異性をノーザンハイブリダイゼーション法で確認した。また,これらのDNAプローブが他の口腔細菌種に対して交差反応性がないことをドットブロットハイブリダイゼーション法で確認した。そこで,これらのDNAプローブを,上記3菌種の標準菌株を用いたコロニーハイブリダイゼーション法による細菌同定に取り入れ,その同定手技を確立した。さらに,この同定法を,歯周ポケットプラークから上記3菌種を検出・同定する実用に供した。
著者
山部 こころ 苔口 進 前田 博史
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.463-470, 2010-07-01 (Released:2011-09-07)
参考文献数
18

口腔内に生息するメタン生成古細菌 (Methanobrevibacter) が歯周病(歯槽膿漏)の病態に関与していることが示唆されるようになった.古細菌には,膜脂質や抗原分子において,真正細菌にはない特徴がある.これまで,歯周病の病態はグラム陰性桿菌を主体とした,いわゆる歯周病原細菌の感染とそれらに対する免疫応答から説明されていた.メタン生成古細菌の参戦によって,歯周病の病態がこれまでにはない側面から解明される可能性がでてきた.
著者
西村 英紀 高柴 正悟 苔口 進 江草 正彦 高橋 慶壮
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

(1)ダウン症患者の末梢血好中球機能:ダウン症患者の好中球走化能を走化因子としてFMLP,IL-8,C5aを用い評価した。その結果,ダウン症患者由来好中球は用いたいずれの走化因子に対しても濃度依存性に走化性を示した。また至適走化因子濃度における遊走細胞数は同年代の健常対照と同程度であり,機能低下はなかった。すなわち従来報告されているような好中球の走化能に機能低下はなかった。(2)in vitroにおける組織修復機能:ダウン症患者の体細胞は,健常者に比べ,より急激な速度で老化(replicative senescence)することが知られている。これは,細胞の老化マーカーであるテロメアの短縮速度が正常細胞に比べ速いことに起因する。また,静止期に達した細胞では増殖因子による刺激に対して細胞増殖に必須の転写因子であるc-fosの発現が低下することが知られている.そこで,ダウン症患者の体細胞モデルとして老年者由来細胞を用い,塩基性線維芽細胞増殖因子に対する走化能を若年者由来細胞と比較した。細胞には歯周組織の再構築に最も重要であるとされる歯根膜線維芽細胞を用いた。生体の老化に伴って,歯根膜線維芽細胞の遊走能が低下した。また,走化したすべての細包がc-fosを発現しているのに対し,遊走しない細胞では。c-fosを発現した細胞とそうでない細胞が混在していたことから,c-fosが細胞の遊走に関与すること,また老化細胞における走化活性の低下にc-fosの発現低下が深く関与することが示唆された。以上の結果から,ダウン症患者に見られる重度歯周炎の成因には,従来報告のある好中球の機能低下よりも,生体の急激な老化現象がもたらす歯根膜組織の修復能力の低下が関与する可能件が示された。