- 著者
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川口 章
山野 眞利子
白井 幹康
藤里 俊哉
- 出版者
- 東海大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1995
肺移植に伴う除神経は咳反射や気管支収縮などの生体防衛反応を廃絶し、移植後の感染症の頻度と重症度を増加させている。移植肺はレシピエントと外界のはざまにあるため、レシピエントからは拒絶反応、外界からは病原微生物による感染の対象となっている。求心性神経の再生の有無、その時期や経路を明らかにすることは、肺移植後の感染症の抑制や免疫抑制療法の改善につながり、肺移植の成績の改善に寄与するものと考えられる。方法右肺移植をした後に左肺を切除し、移植肺に呼吸を依存したラット(移植群)において右肺門を郭清したラット(郭清群)と比較して経時的に、(1)Caspian(30mg/kg)を静注し迷走神経を介した除脈反射の回復を観察し、(2)Hering-Breuer反射の回復を検討した。(3)形態学的検査で神経ペプチド(CGRP,Substance-P)の有無と局在を検討し、(4)神経トレーサーを移植肺に注入し、動物を犠牲死させてその局在を検討した。結果(1)Capsaicin静注に対する除脈反射は73%±10%(減少拍数/前拍数)であった。移植後消失したこの反射が全例で53%(平均-2SD)まで回復するのに郭清群で3カ月、移植群で4カ月を要した。(2)Hering-Breuer反射は正常で5.0±2.6(20cm水柱での無呼吸/前呼吸間隔)であった。これが全例で2.4(平均-1SD)以上となるのに郭清群で3カ月、移植群で4カ月を要した。(3)神経ペプチドを持った神経線維が肺門全域を通して広範に移植肺に入り込んでいた。(4)神経トレーサーは同側の迷走神経下神経節に見られ、対側や後根神経節にはなかった。結論ラットにおいて、移植時に断絶された求心性神経路は術後4カ月までに同側の迷走神経内に再生され、物理・生化学的刺激に対して機能していた。