著者
鈴木 圭 山﨑 博司 今村 宰 古川 茂樹 小幡 義彦
出版者
一般社団法人 日本エネルギー学会
雑誌
日本エネルギー学会誌 (ISSN:09168753)
巻号頁・発行日
vol.96, no.6, pp.157-166, 2017-06-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
39

エマルジョン燃料の噴霧燃焼過程においては二次微粒化発生により混合促進効果が期待できる一方で,水の蒸発による潜熱吸収によって発生熱量の大幅な減少が見込まれる。これを抑制することを目的としてエマルジョンの添加水分の一部をアルコールに置き換えた。本研究ではエタノールを添加した燃料/ 水エマルジョンの液滴燃焼時の二次微粒化特性,特にミクロ爆発発生について検討を行った。実験ではn-ヘキサデカンをベース燃料とし,水およびエタノールを混入させ界面活性剤で安定化させたエマルジョンを用いた。n-ヘキサデカンおよび界面活性剤の体積割合はそれぞれ0.7および0.03で一定とし,添加水分の一部をエタノールに置き換えた試料を用いた。エタノールの体積割合は0.0,0.03,0.05,0.08と変化させた。初期液滴直径は1.1 mmおよび1.3 mmとし,通常重力下静止空気中で燃焼実験を行った。液滴燃焼過程は高速度ビデオカメラで撮影し,ミクロ爆発発生までの待ち時間を計測するとともに,懸垂線をプローブとしたAcoustic Emission(以後,AE)計測によりミクロ爆発発生の強度の測定を行った。併せて液滴温度測定を行うとともに,ガラス細管内に保持した供試燃料の相分離過程を調べた。ミクロ爆発発生待ち時間をミクロ爆発の初期発生までの待ち時間とそれ以降の待ち時間に分けて検討を行った。その結果,後者はワイブル分布で近似でき,その形状母数は2となること,ミクロ爆発発発生までの待ち時間はエタノール含有により長くなる傾向があるが,その主な要因は最小発生時間の遅れであることを示した。併せて待ち時間分布と温度計測結果を用いてミクロ爆発発生時の温度とAEピーク電圧の算術平均を検討した結果,液滴直径,エタノール含有に関わらず同じ温度領域で発生するミクロ爆発のAEピーク電圧は同じであること,また低い温度領域で発生するミクロ爆発のAEピーク電圧は低くなることを示した。