著者
平田 幸一 鈴木 圭輔 春山 康夫 小橋 元 佐伯 吉規 細井 昌子 福土 審 柳原 万理子 井上 雄一 西原 真理 西須 大徳 森岡 周 西上 智彦 團野 大介 竹島 多賀夫 端詰 勝敬 橋本 和明
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.166-179, 2020 (Released:2020-08-31)
参考文献数
51
被引用文献数
4

難治性の疾患における持続中枢神経感作と言われる病態の疫学,基礎・臨床的な位置付けさらには患者のケアにむけての研究をまとめた.本総説は厚生労働研究班の各員の研究結果を示したものなので,必ずしもまとまりがない点に限界があるが,今までは疾患縦断的に診断治療がおこなわれてきた難治性疾患における中枢神経感作の役割を横断的にみたという意味でもわれわれの研究の結果は一部ではあるが解明したものといえる.結果として,中枢神経感作は種々の疾患,特に難治性のもので明らかに何らかの役割を呈していることが示せた.さらにその治療法の解明には至らぬまでも,患者ケアに繋がる方略を示せたものと考えられ,今後の研究の基盤となることが望まれる.
著者
鈴木 圭輔 春山 康夫
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.14-20, 2023-02-28 (Released:2023-03-12)
参考文献数
27

近年,国内外では慢性疼痛および付随する原因不明の様々な症状は,中枢神経感作(以下,CS, central sensitization)に関する多くの研究が注目されている.CSとは身体から脊髄,脳幹部,視床,大脳(一次体性感覚野)に至る痛みの伝達経路の異常により,通常では痛くないはずの軽い刺激が疼痛として認識され,とても痛く感じたり,痛みが広がって感じたりする状態である.中枢神経感作に関連した痛みは,明るい光,触覚,騒音や温度(低・高い)に過敏性を示し,疲労,睡眠障害や集中力低下などを伴うことも少なくない.中枢神経感作には線維筋痛症,慢性疲労症候群,過敏性腸症候群,顎関節症のほか,レストレスレッグス症候群や頭痛などの疾患が関係している.一方,わが国においてはCSに関する知識はまだ普及されていないのは現状である.本稿では,1)慢性疼痛患者および神経疾患であるレストレスレッグス症候群や片頭痛とCSの関わりについて解説する.2)一般住民を対象にした疫学研究結果をもとにCSの保有率および影響因子を報告することを目的とする.
著者
鈴木 圭輔
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.250-253, 2019 (Released:2019-11-25)
参考文献数
18

Migraine is a common neurological disorder, negatively affecting activities of daily living. Patients with migraine frequently show daytime sleepiness and insomnia. Sleep disturbances worsen headache, while sleep ameliorates headache. We have previously reported increased prevalence of restless legs syndrome and dream enacting behavior in migraine patients. Hypersomnia disorders, including narcolepsy and idiopathic hypersomnia, are characterized by excessive daytime sleepiness not caused by disturbed nocturnal sleep or impaired circadian rhythms. Previous studies showed increased prevalence of migraine in patients with narcolepsy compared with healthy controls. In our multicenter study, migraine was more frequently observed in patients with narcolepsy or idiopathic hypersomnia compared with healthy controls. These findings may suggest pathophysiological similarities between migraine and hypersomnia disorders.
著者
鈴木 圭輔 宮本 雅之 平田 幸一 宮本 智之
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1-7, 2015 (Released:2016-12-06)
参考文献数
20

【要旨】レム睡眠行動異常症(RBD)はレム睡眠中の異常行動を特徴とする睡眠時随伴症で、悪夢を誘因とした激しい行動により、自分自身またはベッドパートナーに外傷をきたす。本症は通常、覚醒を促すと夢と行動の内容を想起できることが特徴である。特発性RBDは50歳以降の男性に多く、有病率は一般人口の約0.5%と報告されている。病態機序としてはREM睡眠を調節する脳幹神経核(青斑核、脚橋被蓋核、背外側被蓋核、下外側背側核、巨大細胞性網様核など)およびその関連部位、扁桃体、線条体、辺縁系、新皮質などの障害が推定されている。RBDの診断は睡眠ポリグラフ検査(PSG)にて筋緊張抑制の障害の検出が必須であるが、PSG前のスクリーニングにRBDスクリーニング問診票が有用である。RBDの治療はクロナゼパムの就寝前投与が有効である。RBDの追跡研究ではパーキンソン病(PD)、多系統萎縮症あるいはレビー小体型認知症(DLB)などのシヌクレイノパチーに移行する症例が多くみられる。さらにRBDは嗅覚障害、色覚識別能障害、高次脳機能障害、MIBG心筋シンチグラフィーの集積低下、経頭蓋超音波にて中脳の黒質高輝度所見などのレビー小体関連疾患(PD、DLB)と共通する所見がみられる。このように、特発性RBDは神経変性疾患とくにレビー小体関連疾患の前駆病態である可能性が高く、神経変性疾患に移行する前の治療介入の可能性に関して注目されている。本稿ではPD、RBDでみられる認知機能障害についても概説する。
著者
星山 栄成 鈴木 圭輔 平田 幸一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.8, pp.1358-1365, 2016-08-10 (Released:2017-08-10)
参考文献数
10

内科診療では,突然の意識消失で救急外来を訪れる患者において神経調節性失神と心因性非てんかん発作が40%と多く,てんかんは29%,次いで心原性失神が7%とされる.他に非てんかん性不随意運動や異常行動もてんかんとして診断され,治療される場合がある.てんかんの鑑別診断として,十分な病歴を聴取することが重要である.本稿では,内科医がてんかんを鑑別するうえで重要な鑑別疾患を提示しながらそのポイントについて解説する.
著者
木下 雄一朗 鈴木 圭佑 郷 健太郎
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.987-997, 2020

<p>本論文では,ペーパークラフトの一種であるシャドーボックスに着目し,ユーザの表現したい印象に適合したシャドーボックスの貼り重ね方を自動生成する感性ファブリケーション支援システムを実装した.このシステムは,デザイン生成ユニットによる複数の設計データの生成と,印象変化量評価モデルに基づく表現したい印象への適合度評価により実現した.システムの実装に先立ち,様々なシャドーボックスが鑑賞者に与える印象を調査する目的で,印象評価実験を行った.そして,この実験結果をニューラルネットワークに学習させることで,印象変化量評価モデルを構築した.デザイン生成ユニットは,進化的計算のアプローチで実現し,構築した印象変化量評価モデルを評価関数として用いた.最後に,実装したシステムの出力結果に基づいて作成されたシャドーボックスの印象評価実験により,このシステムの有効性を確認した.</p>
著者
鈴木 圭一 対馬 栄輝 石田 水里 小玉 裕治 新野 雅史
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2008-04-20

<B>【目的】</B>ボクシング競技において,非利き手を前方に構え打つ非利き手ストレートパンチ(非利き手パンチ)は,あらゆるパンチの基本であり,最初に習得するべき重要な位置を占める.この非利き手パンチ動作の技能は,経験者と未経験者で大きく異なると予想できる.そこで,非利き手パンチ動作において経験者と未経験者の上肢筋活動を計測し,筋活動の様式による違いがないか検討した. <BR><B>【方法】</B>経験群は国体,インターハイ出場レベルの現役高校ボクシング部員男子8名(年齢17.3±0.5歳,身長169±4.7 cm,体重57.4±8.7 kg,経験年数1.7±0.3年)とし,未経験群は男子大学生8名(年齢20.3±1歳,身長170±4.4cm,体重58.4±8.6 kg)とした.対象者には裸足,上半身裸となってもらい,構えをとらせた.経験群は各個人の構えを,未経験群は一般的な教則に従った構えとした.パンチ動作は,素手による非利き手パンチの素振りと,指定ボクシンググラブ(グラブ)を装着した非利き手パンチをトレーニングバッグ(バッグ)へ向けて打撃する2条件とした.さらにそれぞれの条件でスピード重視,強さ重視の条件で5回ずつ,計4条件20回の動作を行わせ,パンチ動作開始の合図は40回/分に設定したメトロノームとした.これらの動作において表面筋電計を用いて,非利き手の大胸筋,上腕二頭筋,上腕三頭筋長頭・外側頭,三角筋前・中・後部線維,僧帽筋上・中・下部線維,広背筋の筋活動を記録した.グラブがバッグに接触する際には筋電計と同期したスイッチを使用した.パンチ動作条件の順序は,疲労,学習効果による影響を相殺するために循環法を用いて配置した. <BR><B>【結果】</B>バッグ打撃・スピード重視の条件において,経験群の全対象でグラブがバッグに接触した直後に三角筋後部線維,僧帽筋上・中部線維に強い筋活動が確認されたが,未経験群(8名中5名)はグラブがバッグに接触する前から筋活動が認められた.また,同条件において,経験群の全てでグラブがバッグに接触する直前(平均28.8±15.7 msec)に上腕三頭筋外側頭の筋活動がみられなくなるのに対して,未経験群では8名中6名でグラブがバッグに接触した直後まで上腕三頭筋外側頭の筋放電が確認された.バッグ打撃・強さ重視の条件におけるグラブバッグ接触時間は経験群125.2±46.5 msec,未経験群168.2±75.2 msecで有意差が認められた.<BR><B>【考察】</B>非利き手ストレートパンチ動作において,一般的に,未経験者や初心者など,非利き手パンチ動作において肩や腕に無駄な力が入るとよくいわれる.今回の研究の結果から,未経験者は非利き手パンチ動作の打ち始めから接触後まで拮抗筋の余計な筋活動が起こるタイミングを確認することができた.こうした点をフィードバックするなど,パンチ動作の指導に活用することによって,より効率の良い習得方法を考案することが可能となるだろう.<BR>
著者
鈴木 圭輔 平田 幸一
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.545-552, 2018 (Released:2019-04-22)
参考文献数
50

Sleep disturbance has been recognized as an important non–motor symptom of Parkinson's disease, which can impair the quality of life of patients. However, adequate screening and management of sleep disturbances coexisting with Parkinson's disease are still challenging issues. The causes of sleep disturbances include disease–related pathological changes in the brainstem and hypothalamus, which modulate REM / non–REM sleep and sleep–wake cycle, the effects of nighttime motor / non–motor symptoms including restlessness of the limbs and REM sleep behavior disorder, and the co–occurrence of other sleep disorders, such as sleep apnea syndrome. We provide an updated review of sleep disturbances in patients with Parkinson's disease and related disorders.
著者
岩崎 晶夫 高嶋 良太郎 鈴木 圭輔 竹川 英宏 鈴木 綾乃 鈴木 紫布 平田 幸一
出版者
一般社団法人日本脳神経超音波学会
雑誌
Neurosonology:神経超音波医学 (ISSN:0917074X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.8-12, 2016 (Released:2016-06-24)
参考文献数
29
被引用文献数
1

Purpose: An increased prevalence of patent foramen ovale (PFO) has been reported in patients with migraine with aura compared with non-migraine subjects. This study aimed to investigate the prevalence of PFO in Japanese patients with migraine. Methods: Fifty-four consecutive patients with migraine were recruited from the headache outpatient clinic of our department. Migraine was diagnosed according to the International Classification of Headache Disorders, second edition. Patients were divided into migraine with aura (MWA) and migraine without aura (MWOA) groups. Transcranial ultrasound was performed, while contrast agent was injected intravenously with the Valsalva maneuver. PFO was diagnosed if micro-embolic signals in the right middle cerebral artery were identified soon after injection of contrast agent and Valsalva load release. Results: No significant differences in patient characteristics were observed between the MWOA group (n=22) and MWA group (n=32). The prevalence of PFO was 46.3% among all migraine patients, 56.3% in the MWA group, and 31.8% in the MWOA group. Patients with MWA thus tended to show a higher prevalence of PFO compared to those with MWOA (p = 0.077). Conclusion: The tendency toward an increased prevalence of PFO in the MWA group in this study suggests a possible association between MWA and PFO.
著者
鈴木 圭輔
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001490, (Released:2020-08-08)
参考文献数
59
被引用文献数
4

新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019; COVID-19)の大流行に伴い,その対策や感染拡大防止に加え我々の社会的状況も激変しつつある.近年COVID-19に伴う神経症状は稀ではなく,頭痛は主な神経症状として注目されつつある.COVID-19に伴う頭痛の頻度は21臨床研究,8メタアナリシスにより5.6%~70.3%に認めた.一方COVID-19に罹患していない医療従事者などにおける頭痛は11.1%~81.0%にみられた.頭痛の詳細を記載した報告は少なかったが,本稿ではCOVID-19と頭痛の関連においてその頻度,特徴や病態について議論したい.
著者
鈴木 圭 鳥居 春己
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.199-205, 2016 (Released:2017-02-07)
参考文献数
29

本報では静岡県浜松市における,2種の外来リス(クリハラリスCallosciurus erythraeusおよびフィンレイソンリスC. finlaysonii)の分布拡大状況を報告する.これまで浜松市では,これらの外来リスの分布域は東名高速道路の南側の緑地に接しており,東名高速道路が外来リスの分布拡大を遅らせる障壁となっていると考えられていた.しかし本調査の結果,外来リスの分布域はすでに東名高速道路を越えて北側まで広がっていることがわかった.その分布域は東名高速道路から北側に約2 km離れた緑地にまで拡大していた.本調査で明らかにされた分布の最前線から連続した山塊まではわずか7 kmしか離れておらず,それらの間に緑地や小さな林が点在していることから,外来リスの分布域は容易に拡大しそうであり,今後山塊に到達する可能性が高い.山塊における外来リスの根絶は困難になることが予測されるため,分布域がこれ以上広がる前に早急な対応が必要である.
著者
鈴木 圭 玉井 康将 浦出 伸治 伊野 和子 菅原 由美子 片山 直之 星野 有
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.9, pp.792-798, 2010-09-15 (Released:2010-11-09)
参考文献数
16

一般にアルコール性ケトアシドーシス(alcoholic ketoacidosis: AKA)はアルコール依存のため食事摂取が不十分な患者が,何らかの理由でアルコール摂取すらしなくなることで細胞内飢餓が生じ,遊離脂肪酸からβ酸化を経てケトン体が産生された結果発症し,消化器症状を主体として医療機関を受診することが多い。我々は,高脂肪食摂取翌朝に意識障害と脱力を来し脳卒中疑いで搬入された,発症様式,症状とも非典型的なAKAの症例を経験したため報告する。症例は61歳の男性。ビジネスホテルに単身滞在中,焼き肉とビールを摂食し就寝した翌朝に四肢脱力を自覚し当院に救急搬入された。来院時意識障害があり,詳細な病歴は不明であったが,原因不明の低血糖とアニオンギャップの開大した著しい代謝性アシドーシス,脂肪肝がみられ,他に代謝性アシドーシスを来す疾患を同定できなかったことからAKAを強く疑い,チアミンと糖質を含む急速輸液を行ったところ,意識障害,代謝性アシドーシスとも速やかに軽快した。後にアルコール依存の病歴と血中βヒドロキシ酪酸の著明高値が判明し,AKAと確定診断した。本例では慢性的な糖質不足状態にあるアルコール依存患者が,短期間に高脂肪食を摂食したことにより多量の遊離脂肪酸が血中に流入し,β酸化を経て産生されたアセチルCoAが過剰となり一気にケトン体が産生され発症したと推察される。即ち,本例からは高脂肪食はAKAのリスクとなることが示唆される。本来,AKAの初期診断は病歴に依存する部分が多いが,意識障害を有する患者では詳細な病歴を聴取できないことも多く,非典型的な発症様式,症状の場合にAKAを疑うことは容易ではない。しかし,本例のごとく原因不明の低血糖にアニオンギャップの開大した代謝性アシドーシス,脂肪肝の合併がみられた際にAKAを鑑別診断に加えることは,救急医にとってきわめて重要と考えられる。
著者
西平 崇人 鈴木 圭輔 竹川 英宏 中村 利生 岩崎 晶夫 平田 幸一
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.819-823, 2014-10-01 (Released:2014-10-24)
参考文献数
17

症例は45歳男性である.後頭部痛と吐き気の後,左方向への傾きが出現した.神経学的には左へのtruncal lateropulsion以外に異常はなかった.頭部MRIでは左延髄下部外側に急性期梗塞をみとめ,臨床・画像所見から左椎骨動脈解離による機序が考えられた.第6病日に右第10胸髄以下の温痛覚障害,左顔面発汗低下,左縮瞳が出現し,頭部MRIでは梗塞巣が拡大していた.脊髄小脳路の障害によりtruncal lateropulsionが,外側脊髄視床路の最外側部の障害により胸髄以下の温痛覚障害が出現したと推察された.本症例は延髄外側の臨床症状と障害部位との関連を理解する上において貴重な症例と考えられた.
著者
鈴木 圭 岩崎 仁史 渡辺 文亮 大森 教成 石倉 健 畑田 剛 鈴木 秀謙
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.11, pp.756-762, 2007-11-15 (Released:2009-02-27)
参考文献数
16
被引用文献数
1

症例は79歳の男性。受診数時間前からの増悪する嘔気, 腹痛, 左背部痛, 意識障害のために当院搬送となった。来院時ショックの状態で, 血液検査では急性腎不全, 肝機能障害, 血清アミラーゼ値の上昇がみられ, 出血傾向を伴う著しい代謝性アシドーシスが認められた。画像検査では軽度の肺炎像が認められたが, 下大静脈の虚脱がみられた他にはショックの原因となる疾患を指摘できなかった。ショックに対する初期治療の後, 集中治療室へ入室となった。腹痛の病歴と採血検査所見より, 急性膵炎に準じ治療を行った。補液及び人工呼吸管理により利尿がつき始め, 肺炎球菌尿中抗原検査 (NOW Streptococcus pneumoniae, Binax Inc., USA以下尿中抗原検査と略す) を施行したところ陽性を呈した。膵炎に準じ既に抗菌薬投与を行っていたことから同様の治療を継続したが, 多臓器不全が進行, 播種性血管内凝固症候群を併発し, 入院後8時間あまりの激烈な経過で死亡した。血液及び喀痰培養検査では有意細菌を検出できなかったが, 尿中抗原検査は偽陽性がきわめて少なく, 自験例の病態の根本は劇症型肺炎球菌感染症による敗血症性ショックとすることが妥当であると考えられる。劇症型肺炎球菌感染症は, 発症時に必ずしも肺炎像を呈するとは限らず, 原因不明の劇症型感染症の鑑別診断として重要である。このような症例の診断は血液培養の結果に依存せざるを得ないが, 迅速性に欠け, 感度も高いとはいえない。原因不明のショックの症例においては, 肺炎像が明らかでなくとも, 積極的に尿中抗原検査を用いた診断を行うことは, 自験例の如く血液培養が陽性とならない敗血症例ではとくに大きな意義があると考えられ, 今後の症例の蓄積が必要である。また, 尿中抗原検査で陽性を呈するショック症例は, 劇症型の経過をたどることが危惧され, いかに有効な治療手段を講じるかが今後の検討課題となると考えられる。
著者
鈴木 圭 柳川 久
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.315-319, 2011 (Released:2012-01-21)
参考文献数
30
被引用文献数
1

筆者らは2010年12月から2011年1月にかけて,東京都と神奈川県の県境である多摩川河川敷で,越冬する6個体のトラフズクAsio otusのペリットを14個採取したので,その内容物について報告する.本種が越冬したのは市街地の河川敷で,周囲は野球やラグビーなどのグラウンドになっていた.ペリットの内容物は,哺乳類ではハタネズミが2個体,ハツカネズミが21個体,ドブネズミが2個体およびアブラコウモリが6個体で,鳥類も確認されたが種および個体数は不明であった.本種は市街地や人工建造物に依存する小型哺乳類を中心に捕食していた.アブラコウモリについては,関東地方における越冬期のトラフズクの餌資源としては初記録であった.
著者
鈴木 圭輔
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.559-563, 2022 (Released:2022-12-27)
参考文献数
29

Sleep disturbance is one of the important non–motor symptoms in Parkinson disease (PD) and affects the quality of life of patients. Early morning off and nighttime motor symptoms can lead to nocturnal and early morning awakenings, and restless legs syndrome can cause difficulty falling asleep. It is also important to screen for sleep apnea, which reduces sleep quality, and rapid eye movement (REM) sleep behavior disorder (RBD), which causes dream–enacting behavior and fragmented nocturnal sleep. PD patients with RBD are associated with characteristic clinical subtypes of PD. In this article, I will discuss the screening of sleep disorders in patients with PD with a focus on RBD and its management.
著者
鈴木 圭輔
出版者
獨協医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

我々はパーキンソン病やアルツハイマー病を含む8つの神経変性疾患患者156例を対象に血清インスリン様成長因子(IGF-1)値と臨床症候との関連を調査した.結果,各疾患において血清IGF-1値に有意差はみられなかった.パーキンソン病患者では血清IGF-1値は年齢および日常生活動作の障害と負の相関を示し,線条体におけるドパミントランスポータースキャンの集積および前頭葉機能と正の相関を示した.またアルツハイマー病患者では血清IGF-1値は年齢,罹病期間,日常生活動作の障害と負の相関を示した.本研究により神経変性疾患における血清IGF-1値の測定が疾患進行の評価に有用である可能性が示唆された.