著者
高柳 広 新田 剛 岡本 一男
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2021-07-05

骨と免疫系の不可分な関係性に基づく生体制御システムを「骨免疫系」として捉え、その複雑な制御系が個体の生涯にわたる生命機能の要として機能する仕組みを解明する。骨免疫系の分子的な実態を明らかにするとともに、自己免疫疾患や炎症性骨関節疾患、骨転移など、骨免疫系の破綻による疾患の病態解明に取り組み、骨免疫系を軸とした全身制御「オステオイムノネットワーク」という、新たな生物学のフレームワークの構築に繋げる。脊椎動物の生命機能の理解を深めるとともに、新たな疾患制御の開発基盤の構築に繋げ、国民の健康維持と健康寿命の延伸に向けた先端医学研究を推進する。
著者
岡本 一男
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.361-366, 2017 (Released:2017-12-13)
参考文献数
19
被引用文献数
11

骨は運動器としてだけでなく,造血幹細胞や免疫前駆細胞の維持・分化増殖の場を提供する免疫組織としても重要な役割を果たす.また骨と免疫系はサイトカインや受容体などの多くの制御分子を共有しており,そのため様々な炎症疾患において骨組織に障害が波及する.その代表的な例が関節リウマチであり,Th17細胞による破骨細胞活性の亢進が関節リウマチにおける骨関節破壊の根幹を築いている.関節リウマチ研究の進展によりIL-17と骨の関係性がクローズアップされ,骨免疫学の推進力となった.さらに近年,IL-17による骨制御は予想以上に複雑であることが分かりつつある.強直性関節炎ではIL-17産生細胞が腱靭帯付着部の骨化誘導に関わり,また骨折治癒ではIL-17産生性γδT細胞が間葉系幹細胞に作用して骨再生を促す.免疫と骨の双方が絡む病態を理解するには,骨と免疫細胞の相互関係を包括して捉える視点が必要不可欠である.